技術2026.10.08·9 min read·Nortiq Labs

業務システム外注、稼働率と復旧要件の決め方

最初に決めるのは「何時間止まったら業務が止まるか」です

稼働率の数値から決めるのではなく、どの業務が何時間止まると実害が出るかを先に洗い出し、そこから稼働率と復旧時間を逆算します。先に「稼働率99.9パーセント」のような数字を置いてしまうと、その数字が自社の業務にとって過剰なのか不足なのかを誰も判断できなくなります。

止まると困る業務を3つに絞る

最初の作業は、対象のシステムで扱う業務を並べ、止まったときに外部へ影響が出るものを3つまで選ぶことです。受注の受付、出荷の指示、請求の締めのように、相手がいる業務から選ぶと絞りやすくなります。社内の集計や閲覧だけの業務は、この段階では後回しにして構いません。

「困る」を時間で書き出す

選んだ業務について、止まってから何時間で実害が出るかを書き出します。「午前中に復旧すれば当日の出荷に間に合う」「翌営業日の朝までに戻れば締めに影響しない」といった業務の言葉のままで十分です。この時間が、後で決めるRTO (目標復旧時間) の上限になります。

復旧目標は中核業務から逆算する

この順序は、国が示している事業継続の考え方と同じです。内閣府防災の中小企業向けBCPの資料では、BCPを緊急事態に備えて事前に取り決めておく計画と説明し、従来の防災計画と比べた特徴として、中核となる事業の継続に集中することと、復旧目標時間を設定することを挙げています (内閣府防災「中小企業BCP」)。システムの復旧時間は、この中核事業の復旧目標から逆算して決める位置づけになります。

つまずきやすい点は、この洗い出しを情報システムの担当者だけで行ってしまうことです。どの業務が何時間で困るかを知っているのは現場であり、担当者の想像で埋めると、後の水準の議論がそのままずれていきます。所要時間の目安は、3業務の聞き取りと表への整理で1日です。

なお、ここで対象にしているのは社内で使う業務システムです。ホームページのリニューアルにおけるバックアップの決め方は別の記事で扱います。次の章では、書き出した時間を発注書の項目に落とすために、決めるべき4つの項目を整理します。

決めるべき項目は4つです (稼働率・RTO・RPO・運用時間)

発注時に数値で指定する項目は、稼働率、RTO (目標復旧時間)、RPO (目標復旧時点)、運用時間の4つに整理できます。前の章で書き出した「何時間で困るか」を、この4つの欄に移していく作業だと考えると進めやすくなります。

項目 何を決めるか 書き方の例
稼働率 決めた利用条件のもとで使える割合 稼働率99パーセント
RTO 障害発生から復旧までの目標時間 12時間以内
RPO どの時点のデータまで戻せるか 障害発生時点
運用時間 利用できる時間帯と停止してよい時間帯 平日8時から20時、日曜深夜は保守枠

稼働率は何を分母にした割合か

稼働率は、利用条件を決めないと意味が定まりません。三条市が公開している非機能要件の資料では、稼働率を明示された利用条件の下でシステムが要求されたサービスを提供できる割合と定義し、例として稼働率99パーセントを挙げています (三条市「非機能要件」)。24時間を分母にするのか、営業時間だけを分母にするのかで、同じ99パーセントでも許される停止の長さが変わります。発注書には割合だけでなく、分母にする時間帯も併記します。

RTOとRPOの違い

RTOは「いつまでに動くようにするか」、RPOは「どこまでのデータを守るか」です。同じ資料では、業務停止を伴う障害時の目標として、RTOを12時間以内、RPOを障害発生時点とする記載例が示されています (三条市「非機能要件」)。RPOを障害発生時点にすると直前の入力まで守れますが、その分だけ構成と費用が増えます。1時間前までの復元で業務が回るなら、そう書いたほうが現実的です。

運用時間と保守の時間帯を分けて書く

運用時間は、使える時間帯と、更新や点検のために止めてよい時間帯の2つに分けて書きます。ここを分けずに「24時間利用」とだけ書くと、更新作業のたびに調整が必要になり、結果として更新が後回しになります。月に1回の保守枠をあらかじめ決めておくほうが、長く使うには向いています。

この4項目をどの水準に置くかは、次の章で公的な枠組みを使って決めます。

水準の目安は公的な枠組みから引けます

IPAの非機能要求グレードは非機能要求を6つの大項目に整理しており、グレード表は3つのモデルシステムごとに推奨レベルを示すため、自社がどのモデルに近いかを決めれば水準の議論が具体化します。自社だけで考えて数字を置くより、公開されている枠組みに当てはめたほうが、相手の見積もりと比べやすくなります。

6つの大項目のうち可用性と運用・保守性を見る

IPA (独立行政法人情報処理推進機構) の非機能要求グレードは、非機能要求を可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、セキュリティ、システム環境・エコロジーの6つの大項目に分けて整理する枠組みです (IPA「システム構築の上流工程強化 (非機能要求グレード)」)。稼働率やバックアップは、このうち可用性と運用・保守性に位置づけられます。この記事で扱うのはその2つで、表示や処理の速さについては性能・拡張性の話になるため、別の記事で扱います。

3つのモデルシステムから自社に近いものを選ぶ

グレード表は、社会的影響が殆どないシステム、社会的影響が限定されるシステム、社会的影響が極めて大きいシステムという3つのモデルシステムごとに、推奨される要求レベルを示す構成になっています (同上)。社内の数人が使う管理台帳であれば1つ目、取引先からの受注を受ける仕組みであれば2つ目が近くなります。どれに当てはめるかを先に決めておくと、稼働率や復旧時間の議論が具体的な数値に落ちやすくなります。

可用性のレベルは、冗長化の方式と復旧時間の組み合わせで段階化されています。非機能要求グレードを解説したNTTデータの技術記事では、社会的影響が限定されるシステムの例として、レベル0が非冗長化、レベル1がコールドスタンバイ、レベル2がホットスタンバイ、レベル3がデュアルシステムという段階が示され、レベル2は12時間以内の復旧、レベル3は6時間以内の復旧という目安が併記されています (NTT DATA TECH「非機能要求グレードの可用性レベルの解説」)。これは公式資料の解説であるため、実際の発注ではIPAのグレード表 (活用シート) の該当行を併せて確認することになります。

合意するのは小項目、確認するのはメトリクス

IPAの資料では、大項目が最も広い分類、中項目が検討すべき単位、小項目がユーザと開発ベンダの間で合意される項目、メトリクスが小項目を定量的に表す指標という位置づけが示されています (IPAセミナー資料)。発注側が合意の対象とすべき単位は小項目であり、見積もりや契約で数値として確認する対象がメトリクスです。打ち合わせで「可用性を上げたい」と大項目のまま話すと話が噛み合わないため、小項目まで降りてから数値を置きます。

公共調達の仕様書は、書き方の実例として使えます

自治体が公開している非機能要件の資料には、稼働率とRTO・RPOを数値で書き下した記載例があり、自社のRFPの文面の参考になります。ゼロから文章を考えるより、公開されている書き方を土台にして数値だけ差し替えるほうが早く、相手にも意図が伝わります。

稼働率の定義ごと書き写す

三条市が公開している非機能要件の資料では、稼働率を明示された利用条件の下でシステムが要求されたサービスを提供できる割合と定義し、例として稼働率99パーセントを挙げています (三条市「非機能要件」)。参考にするときは、割合の数字だけでなくこの定義の一文ごと書き写します。定義が書かれていないと、提案する側が自社に都合のよい分母で計算でき、後から「約束した稼働率は守っている」という説明が成り立ってしまいます。

障害時の目標を3点セットで書く

同じ資料には、業務停止を伴う障害時の目標として、RTO (目標復旧時間) を12時間以内、RLOを全業務、RPO (目標復旧時点) を障害発生時点とする記載例があります (同上)。RLOは、復旧した時点でどの範囲の業務が使える状態になっているかを指します。この3つを揃えて書くと、「12時間で復旧する」と言われたときに、全機能が戻るのか一部だけなのかが曖昧になりません。

  1. 稼働率とその定義の一文を書く
  2. RTO、RLO、RPOの3点を並べて書く
  3. 運用時間と保守の時間帯を併記する

つまずきやすい点は、公共調達の数値をそのまま自社に持ち込んでしまうことです。上の例は自治体の業務を前提にしたものであり、社内で数人が使う台帳に同じ水準を当てると、構成も費用も過剰になります。所要時間の目安は、前の章で選んだモデルシステムに合わせて数値を差し替える作業で半日です。

自社の事情に合わせて数値だけ差し替える

差し替えの判断材料は、第1章で書き出した「何時間で実害が出るか」です。翌営業日の朝までに戻れば足りる業務なら、RTOを12時間以内より緩く書いても構いません。逆に当日の出荷に間に合わせる必要があるなら、RTOを短くし、その分の構成と費用を見積もりに出してもらいます。次の章では、この文面を実際の見積もり依頼に載せる手順をまとめます。

要件を見積もりに載せる手順

洗い出した業務の停止許容時間を表にし、4つの項目を数値で書き、構成案と運用の手間まで提案に含めるよう依頼するのが基本の流れです。ここまでに決めた内容を、相手が見積もれる形に並べ替える作業になります。

  1. 業務ごとの停止許容時間を表にする (所要1日) 第1章で選んだ3業務について、業務名、止まると困る相手、何時間で実害が出るか、その理由の4列で表にします。つまずきやすい点は、理由の列を空欄にしてしまうことです。理由が書かれていないと、後で水準を下げる相談が出たときに、譲れる業務なのか判断できなくなります。
  2. 4項目を数値で書く (所要半日) 稼働率とその定義、RTO、RPO、運用時間と保守の時間帯を、依頼書の1つの節にまとめて書きます。表と並べて置き、「この表の業務を守るためにこの水準にしている」という対応関係が読めるようにします。
  3. 構成案と費用の内訳を分けて出してもらう 同じ水準でも、構成の選び方で費用は変わります。提案には、どの構成でその水準を満たすのか、初期費用と月額の内訳、水準を1段下げた場合の金額を併記するよう依頼します。1段下げた金額が分かると、社内で費用の線を引く議論ができます。
  4. 復旧の訓練と手順書の有無まで確認する 復旧時間は、手順書があり、試した経験がある場合にだけ守れます。復旧手順書の納品、復元の確認を納品前に1回行うこと、その結果を記録として残すことを、見積もりの範囲に含めるかどうかを明示して尋ねます。

実装の側から見ると、ここで最も崩れやすいのはバックアップの保存先です。同じサーバの別の場所に置いているだけの構成では、そのサーバが使えなくなった時点で復元できなくなり、RPOを障害発生時点と書いていても守れません。保存先を別の環境にするかどうかは費用に直結するため、提案書のどこに書かれているかを確認します。

水準を決める作業はここで一度終わりますが、確定の前にもう1つ見るべき制約があります。次の章では、水準を上げたときに増える運用の手間を、誰が担うのかという論点を扱います。

水準を上げるほど、運用を担う人の手間も増えます

冗長化や短い復旧時間は構成の費用だけでなく運用の手間も増やすため、納品後にそれを誰が担うのかを決めてから水準を確定します。手間を引き受ける人がいない水準は、書面の上だけのものになります。

バックアップは取るだけでは終わらない

バックアップを設定すれば、日々の作業として、取得が成功したかの確認、保存先の空き容量の管理、世代の整理が発生します。復旧時間を短く約束するなら、復元の手順を定期的に試す作業も必要です。これらは月に数時間の作業ですが、誰の担当かを決めていないと、気づいたときには数か月分の失敗が溜まっていることがあります。

担当者が兼任の場合に何が現実的か

中小企業では、この手間を引き受ける担当者そのものが置かれていない場合があります。株式会社kubellの調査 (2025年12月公表) では、システム担当者がいない中小企業は全体で3割弱、従業員10人から29人の層では5割弱とされています。日常的な取引や情報管理にデジタルを利用していない中小企業も5割弱とされています。

専任かどうかの実態も報告されています。ノークリサーチの調査では、年商5億円から50億円の層でIT担当が専任である割合は16.7パーセント、兼任である割合は61.1パーセントです (TechTargetジャパンの報道)。同社の調査では、年商500億円未満の中堅・中小企業における「ひとり情シス」の割合は24.5パーセントで、2023年時点の21.3パーセントから増えています (IT Leadersの報道)。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」では、2030年に見込まれるIT人材の不足数は最大で79万人とされています。

兼任の担当者が月に数時間しか割けない前提なら、現実的な選択は次の2つです。

  • 水準を1段下げ、復旧に半日かかる構成を受け入れる
  • 水準は維持し、運用の作業を外注先の保守契約に含める

運用を外注先に残す場合の契約の書き方

保守契約に含める場合は、作業の名前と頻度、報告の形を書きます。「バックアップの取得確認を月1回行い、結果を書面で報告する」「復元の確認を年1回行う」のように、行為と頻度と記録をそろえて書くと、やったかどうかが後から確認できます。運用体制そのものの作り方は別の記事で扱います。

発注前に確認する項目の一覧

稼働率とRTO・RPO、運用時間、バックアップの取得と復元の確認方法、障害時の連絡経路の5点が書面に残っていれば、発注時の確認としては足ります。口頭で合意した内容は、担当者が変わった時点で消えてしまいます。

書面に残す5点

項目 書面に残す内容
稼働率 割合と、分母にする時間帯の定義
RTO・RPO 復旧までの目標時間と、どの時点のデータまで戻すか
運用時間 利用できる時間帯と、停止してよい保守の時間帯
バックアップ 取得の頻度と保存先、復元の確認を誰がいつ行うか
障害時の連絡経路 一次連絡先、受付の時間帯、時間外の扱い

連絡経路は見落とされやすい項目です。復旧時間を12時間以内と書いていても、夜間や休日の受付がない契約であれば、金曜の夜に止まったものは月曜に動き始めます。受付の時間帯は、稼働率と同じ重さで確認します。

つまずきやすい点 (復元テストの有無)

最も確認が漏れるのは、復元を実際に試したかどうかです。バックアップの取得は自動化しやすい一方、復元は手順が長く、試していない手順は本番で止まります。納品前に1回、復元の確認を行って結果を記録として残すことを、検収の条件に入れておくと確実です。所要時間の目安は、確認の立ち会いと記録の受け取りで半日です。

見積もりが比較できない場合の対処

複数社の見積もりが比べられないときは、水準の書き方が社ごとに違っていることが原因である場合が多いです。その場合は、自社で決めた5点の表を各社に渡し直し、同じ表の形で回答してもらいます。表の欄を埋めない項目があれば、対応できないのか、費用の都合で外しているのかを尋ねます。

ここまでの手順で、稼働率と復旧の要件を自社の言葉から数値へ落とし、書面に残すところまで進められます。水準は一度決めたら固定するものではなく、業務が増えたり取引先からの要求が変わったりした時点で見直す対象です。契約の更新のタイミングで、第1章の表をもう一度開くことをおすすめします。

よくあるご質問

この記事に関して多い質問と回答をまとめます。

稼働率は99パーセントと99.9パーセントで何が変わりますか

許される停止の長さが変わります。同じ割合でも分母にする時間帯によって実際の停止時間は変わるため、割合だけで比べることはできません。発注書には、割合と分母の定義を必ず一緒に書きます。三条市の非機能要件では、稼働率を明示された利用条件の下でサービスを提供できる割合と定義し、例として稼働率99パーセントを挙げています (三条市「非機能要件」)。

RTOとRPOはどちらを先に決めればよいですか

RTOを先に決めます。RTOは業務が何時間止まると実害が出るかという業務側の事情から決まるため、現場への聞き取りで答えが出ます。RPOは、どこまでのデータを守るかという話で、短くするほど構成と費用が増えます。RTOを置いたうえで、直前の入力まで守る必要があるのかを業務ごとに判断する順序が現実的です。

バックアップは毎日取っていれば十分ですか

取得の頻度だけでは足りません。確認したいのは、保存先が本体と別の環境にあるか、取得が成功しているかを誰が確認しているか、復元を実際に試したことがあるかの3点です。取得は自動化しやすい一方、復元は手順が長く、試していない手順は本番で止まります。

小規模な業務システムでも冗長化は必要ですか

必要かどうかは、止まったときの実害で決まります。IPAの非機能要求グレードのグレード表は、社会的影響が殆どないシステム、社会的影響が限定されるシステム、社会的影響が極めて大きいシステムという3つのモデルシステムごとに推奨レベルを示す構成になっています (IPA「システム構築の上流工程強化 (非機能要求グレード)」)。社内の数人が使う台帳であれば、冗長化せず復旧に半日かかる構成でも業務が回る場合があります。

復旧の手順書やテストは発注の範囲に入れられますか

入れられます。復旧手順書の納品、納品前の復元確認を1回行うこと、その結果を記録として残すことを、見積もりの依頼時に明示して尋ねます。検収の条件に含めておくと、後から別費用になることを避けられます。

要件を決めたいが、社内に判断できる人がいない場合はどうすればよいですか

業務側の停止許容時間の洗い出しは、システムの知識がなくても進められます。当社では、この洗い出しと発注書への落とし込みから伴走する形でご相談をお受けしています。すでに見積もりが手元にある段階でも、水準の書き方が比較できる形になっているかという観点でお手伝いできます。

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監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

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