技術2026.10.08·8 min read·Nortiq Labs

中小企業共通EDIの導入、取引先との進め方

最初にすることは、取引先の受発注の手段を数えることです

仕様の比較より先に、取引先ごとに受発注の手段と件数を数えます。中小企業共通EDIは1社だけが導入しても効果が得られない仕組みのため、相手の状況が出発点になります。中小企業庁のミラサポplusでも、EDIは1社だけが導入しても効果は得られないため、取引先の状況や環境を考慮して導入の要否を判断する必要があるとされています (中小企業庁「ミラサポplus 制度ナビ 中小企業共通EDI」)。

取引先を件数の多い順に並べる

まず、受発注のある取引先を一覧にし、月間の件数が多い順に並べます。上位の数社で全体の件数の大半を占めることが多く、その数社が電子化に動けるかどうかで、効果の出方が決まります。件数が少ない取引先は後回しにして構いません。

手段と月間件数を書き出す

次に、取引先ごとに受発注の手段と件数を書き出します。

列 書く内容
取引先名 相手の会社名
手段 FAX、電話、メール、Web発注画面など
月間件数 受注または発注の伝票の数
転記の工数 1件あたりの入力にかかる時間

この表があると、後の相談で「何件の打ち直しが消えるのか」を具体的に話せます。所要時間の目安は、直近3か月分の伝票を数える作業で2日です。

相手が標準に対応しているかを確認する

取引先が中小企業共通EDIの標準に対応した業務アプリやサービスを使っている場合、データ項目のすり合わせをせずに始められます。相手の担当者に、受発注で使っているシステムの名前を聞くところから始めます。

つまずきやすい点は、この確認を飛ばして自社だけでサービスを決めてしまうことです。先に契約してから相手が対応していないと分かると、結局FAXの受信と打ち直しが残ります。

なお、受発注の電子化はまだ普及の途上にあります。同じミラサポplusの資料では、受発注情報管理へのIT利用は18.5パーセントと示されています (同上)。相手が紙のままであることは例外ではなく、前提として進め方を考える必要があります。次の章では、そもそも中小企業共通EDIとは何なのかを整理します。

中小企業共通EDIとは何か (標準の中身)

中小企業共通EDIは、中小企業庁が策定に着手し、特定非営利活動法人ITコーディネータ協会が中心となって2018年4月に初版を策定・公開した受発注データの標準です (中小企業庁「ミラサポplus 制度ナビ 中小企業共通EDI」)。特定の会社のサービス名ではなく、受発注のデータをどう表すかを定めた決まりごとだと捉えると分かりやすくなります。

3つの文書で構成されている

標準は3つの文書で構成されています (同上)。

文書 役割
中小企業共通EDI標準仕様書 データ項目とやり取りの決まりを定める
中小企業共通EDIメッセージガイドライン 注文などのメッセージの書き方を示す
中小企業共通EDI実装ガイドライン 実際に作る側の実装の進め方を示す

発注する側の担当者がこれらを読み込む必要はありません。見積もりを依頼するときに「中小企業共通EDI標準に対応しているか」と尋ねられる程度に、名前を知っていれば足ります。

データ形式は国際標準に準拠している

データ形式は、国際標準である国連CEFACTの共通辞書に準拠しています (同上)。自社や相手の都合で項目名を決めるのではなく、共通の言葉を使うことで、相手のシステムが違っても同じデータが読める形にしています。

項目の数も公表されています。標準仕様書では、プロバイダに対応を求める注文メッセージを全135項目定めている一方、業務アプリケーションに対応を求める最低限必要な項目は13項目とされています (同上)。この差が、後の章で扱う「既存システムを作り替えずに済む場合がある」という話につながります。

誰が何に対応する標準なのか

対応の役割は2つに分かれます。項目を広く受け持つのはプロバイダ側で、自社が使う業務アプリは最低限の項目に対応していれば接続できるという構造です。つまり、自社で用意するものは少なく、つなぐ部分を担う事業者を選ぶ作業が中心になります。

効果についても公表された数値があります。実証プロジェクトにおける中小企業の業務時間削減率は平均51.4パーセントとされています (同上)。この数値は、前の章で作った件数の表と並べると、自社でどのくらいの時間が戻るのかを見積もる材料になります。

既存の基幹システムは作り替えずに済む場合があります

受注側と発注側の双方が標準に対応するプロバイダと契約すれば、既存の自社システムを継続して利用できるとされています (中小企業庁「ミラサポplus 制度ナビ 中小企業共通EDI」)。導入の相談で最も不安が大きいのはここですが、基幹システムの入れ替えが前提になるわけではありません。

業務アプリに求められる項目は限られる

前の章で触れたとおり、標準仕様書ではプロバイダに対応を求める注文メッセージを全135項目定めている一方、業務アプリケーションに対応を求める最低限必要な項目は13項目とされています (同上)。自社の業務アプリが受け持つ範囲は、この13項目に相当する部分です。品番、数量、納期、届け先のように、普段から伝票に書いている情報が中心になります。

プロバイダが受け持つ範囲

残りの項目や、相手の形式との差を埋める処理は、つなぐ部分を担う事業者の側に寄せられます。発注側の作業は、自社の業務アプリからデータを出す、または取り込む部分を用意することに絞られます。既存の仕組みに手を入れる範囲が小さければ、費用も期間も抑えられます。

自社システムに手を入れる判断になる場合

一方で、次のような場合は自社側の作業が発生します。

  • 業務アプリにデータを出し入れする仕組みが無い (画面からの手入力しかできない)
  • 品番や単位の表記が社内で統一されておらず、同じ商品が複数の書き方で登録されている
  • 受注の履歴が表計算ファイルに分かれていて、1か所に集まっていない

つまずきやすい点は2つ目です。表記がそろっていないと、データで受け取っても自社側で突き合わせが必要になり、打ち直しが別の作業に置き換わるだけで終わります。導入の前に、品番の一覧を整える作業を見積もりに含めるかどうかを決めておきます。所要時間の目安は、扱う品目数によりますが、一覧の重複を洗い出す作業で数日です。

既存システムとのデータ連携そのものの設計は、受発注に限らない論点になるため別の記事で扱います。次の章では、取引先をどう巻き込んで進めるかという手順に入ります。

取引先を巻き込む進め方

件数の多い取引先から順に、相手の手間が増えないことを示して相談するのが基本の流れです。相手に負担を求める提案は進みません。中小企業庁のミラサポplusでも、取引先と共通認識を持ち、連携して導入に取り組むことが望ましいとされています (中小企業庁「ミラサポplus 制度ナビ 中小企業共通EDI」)。

  1. 自社の受発注の件数と工数を整理する (所要2日) 第1章で作った表に、1件あたりの入力時間と月間の合計時間を加えます。実証プロジェクトにおける中小企業の業務時間削減率は平均51.4パーセントとされているため (同上)、自社の合計時間と並べると、どのくらいの時間が戻る見込みなのかを相手にも説明できます。
  2. 件数の多い取引先に相談する (つまずきやすい点) 最初の相談で「EDIを導入したい」と仕組みの名前から入ると、相手には新しい作業の依頼に聞こえます。伝えるのは、相手の送り方を変えずに済むのか、変わる場合は何がどう変わるのかです。つまずきやすい点は、自社の効率化を理由にしてしまうことです。相手にとっての利点、つまり注文内容の確認の手戻りが減ることから説明します。
  3. 1社で試してから広げる 最初から全取引先に広げず、1社と試します。試す範囲は、注文の受け取りと受注データの取り込みまでに絞ります。この段階で、品番の対応や数量の単位の違いといった、机上では見えない差が出てきます。
  4. 紙とFAXの経路を残したまま並行運用する 切り替えの期間は、紙とFAXの経路を止めません。止めると、相手の社内で承認が降りていない注文が宙に浮きます。並行運用の期間をあらかじめ決め、相手にも伝えておきます。

実装の側から見ると、最も手間がかかるのは品番の対応表の管理です。自社の品番と取引先の品番が違う場合、その対応をどちらが持つのかを決めないと、注文ごとに人が判断する運用に戻ります。対応表をシステム側で持ち、新しい品番が出たときに誰が登録するのかまで決めておきます。

相手が対応していない場合の進め方

相談した取引先が標準に対応していない場合もあります。その場合は、相手にシステムの変更を求めるのではなく、メールでの受け取りなど、相手の手間が増えない経路を先に整えます。相手が将来対応したときに、その経路から切り替えられる形にしておけば、やり直しになりません。

電子化した後も残る保存の義務

受発注をメールやWebに切り替えると、やり取りしたデータは電子取引データとして保存する義務の対象になります。国税庁の資料では、電子取引についてプリントアウトによる保存が差し支えないとされていた期限は令和5年12月31日で、令和6年1月以降は原則どおり電子のまま保存する必要が生じたとされています (国税庁「電子取引関係」、国税庁「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」)。

保存要件は可視性と真実性に分かれる

保存の要件は、大きく2つの系統に分かれます。

系統 求められること
可視性 モニタや操作説明書等の備付けと、検索要件の充足の2項目
真実性 タイムスタンプや訂正削除の記録など、認められる4つの措置のいずれかを満たすこと

国税庁の資料では、可視性の確保として求められる項目は2項目とされています (国税庁「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」)。真実性については、認められる措置が4つあると整理されています (クラウドサイン「電子帳簿保存法の要件とは」)。どの措置を取るかは、使うサービスの機能によって決まるため、プロバイダの選定時に確認する項目になります。

検索要件が不要になる売上高の基準

検索の要件には、規模による例外があります。国税庁の資料では、2課税年度前の売上高が5000万円以下の場合、検索要件が不要となるとされています (同上)。検索要件の対象項目は、取引年月日その他の日付、取引金額、取引先の3項目です (クラウドサイン)。自社がこの基準に当てはまるかどうかで、プロバイダに求める機能の範囲が変わります。

準備が間に合わない場合の扱い

令和4年度税制改正で措置された宥恕措置の適用期限は令和5年12月31日でしたが、準備が間に合わない場合の猶予措置が別に設けられています。国税庁の資料では、猶予措置の適用には2つの条件が必要で、事前申請等は不要とされています (国税庁「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」)。

つまずきやすい点は、EDIの導入を保存の対応と別の話として進めてしまうことです。受発注の経路を変えた時点で保存の対象になるため、プロバイダの選定と同じ場で、保存の方法まで決めておきます。保存要件そのものの詳細は別の記事で扱います。

費用の支援と、使える制度

ミラサポplusでは、ITツールの導入費用を補助する制度や、無料の導入相談が支援の枠組みとして挙げられています (中小企業庁「ミラサポplus 制度ナビ 中小企業共通EDI」)。補助の対象や金額は年度ごとに変わるため、制度の名前を覚えるより、確認する順序を決めておくほうが実務的です。

補助金の枠組みと確認の順序

同ページでは、ITツールの導入費用の一部を補助する補助金、受発注システムの改修費用の一部を補助する補助金 (新規に受発注システムを導入する場合は対象外)、日本政策金融公庫のIT活用促進資金、つなぐITコンソーシアムによる無料の導入相談が挙げられています (同上)。確認は次の順序で進めます。

  1. 自社が入れたいものが「新規の導入」か「既存システムの改修」かを決める
  2. その区分が対象になる制度を探す
  3. 申請の受付期間と、交付決定の前に発注してよいかを確認する

つまずきやすい点は3番目です。多くの補助制度では、交付決定の前に発注した費用は対象になりません。相見積もりを取る段階と、実際に契約する段階を分けて計画します。所要時間の目安は、制度の確認と社内への説明資料の作成で2日です。

公募要領で確認すること

補助率や上限額は、ミラサポplusの同ページには記載がありません (同上)。したがって、金額に関する判断は申請する時点の公募要領で確認する前提になります。確認する項目は、補助率、上限額、対象経費の区分、申請に必要な事前の登録、受付の締切です。

ここで注意したいのは、受発注システムの改修費用を補助する制度のように、新規の導入が対象外とされる枠があることです (同上)。自社の案件がどちらに当たるかを先に決めておかないと、申請の直前に枠を選び直すことになります。

相談窓口の使い方

つなぐITコンソーシアムによる導入相談は無料とされています (同上)。相談に行くときは、第1章で作った取引先と件数の表、第2章で確認した相手の対応状況、自社の業務アプリの名前を持って行きます。この3つがあると、相談の場で具体的な進め方の話に入れます。資料が無いまま相談すると、制度の一般的な説明を聞いて終わることになります。

導入前に決めておく項目の一覧

対象の取引先、対象の伝票の種類、既存システムとのつなぎ方、保存の方法、連絡の窓口の5点を決めておけば、相談と見積もりが進みます。逆に、この5点が曖昧なまま相談に行くと、提案の前提が社ごとに違い、見積もりを比べられなくなります。

決めておく5点

項目 決めておく内容
対象の取引先 最初に試す1社と、次に広げる数社
対象の伝票 注文、注文請け、出荷、請求のどこまでを対象にするか
つなぎ方 業務アプリからデータを出し入れする方法と、誰が作るか
保存の方法 電子取引データをどこに保存し、検索をどう行うか
連絡の窓口 自社の担当者と、取引先側の担当者

伝票の範囲は広げすぎないことが大切です。注文と注文請けだけに絞っても、打ち直しの大半は減ります。請求や出荷まで一度に含めると、関係する部署が増えて進まなくなります。

つまずきやすい点 (品番の表記が社ごとに違う)

実務で最も手が止まるのは、品番や品名の表記が自社と取引先で違う場合です。データで受け取っても、どの商品を指すのかを人が判断していては、打ち直しが別の作業に置き換わるだけになります。対応表を作り、システム側で持ち、新しい品番が出たときに誰が登録するかまで決めておきます。この作業は、第3章で触れた1社での試行の段階で必ず出てきます。

社内の体制をどうするか

担当は、受発注の事務を実際に回している人を中心に置きます。導入後に対応表の更新や相手からの問い合わせを受けるのはその人であり、仕組みを決める場にいないと、運用で無理が出ます。情報システムの担当者が兼任の場合は、つなぎ方の判断だけを担ってもらい、日々の運用は事務側に残す分け方が現実的です。

ここまでの5点を決め、第1章の表を添えて相談すれば、提案の比較ができる状態になります。どの取引先から始めるかという最初の判断に迷う場合は、月間の件数が最も多い1社を選べば、効果の確認が最も早くできます。

よくあるご質問

この記事に関して多い質問と回答をまとめます。

取引先が紙とFAXのままでも、自社だけ中小企業共通EDIを始められますか

仕組みとしては契約できますが、効果は限られます。中小企業庁のミラサポplusでも、EDIは1社だけが導入しても効果は得られないため、取引先の状況や環境を考慮して導入の要否を判断する必要があるとされています。相手が紙のままの間は、受け取りの経路を整えることと、品番の対応表を用意することを先に進めます。

既存の基幹システムを入れ替える必要がありますか

必要とは限りません。受注側と発注側の双方が標準に対応するプロバイダと契約すれば、既存の自社システムを継続して利用できるとされています。自社の業務アプリに求められるのは最低限13項目への対応とされているため、データを出し入れする仕組みがあるかどうかが判断の分かれ目になります。

中小企業共通EDIと一般的なEDIサービスは何が違いますか

中小企業共通EDIは特定の会社のサービスではなく、受発注データの表し方を定めた標準です。中小企業庁が策定に着手し、ITコーディネータ協会が中心となって2018年4月に初版が公開されました。データ形式は国連CEFACTの共通辞書に準拠しているため、標準に対応した事業者同士であれば、相手が使う製品が違っても接続できる形になっています。

導入にどのくらいの期間がかかりますか

公表された標準の期間はありません。この記事の手順で言えば、取引先と件数の整理に2日、制度の確認と社内説明に2日が目安で、そこから1社での試行に入ります。試行で品番の対応や単位の違いが出てくるため、その整理にかかる時間が全体の長さを決めます。

電子化した受発注データはどのように保存すればよいですか

電子取引データとして保存する義務の対象になります。国税庁の資料では、令和6年1月以降は原則どおり電子のまま保存する必要が生じたとされ、可視性の確保として求められる項目は2項目とされています。2課税年度前の売上高が5000万円以下の場合は検索要件が不要とされているため、自社の規模によって求める機能が変わります。

何から相談すればよいか分からない場合はどうすればよいですか

取引先と件数の表を作るところまでは、システムの知識がなくても進められます。当社では、この整理と、相手の対応状況の確認、見積もりを比較できる形に整えるところから伴走する形でご相談をお受けしています。

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監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

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