まず確認すること: 自社が情報公表の対象かどうか
常時雇用する労働者が101人以上であれば、2026年4月1日以降は情報公表が義務となり、100人以下は努力義務です。最初にやるべきは、自社がこの線のどちら側にいるかを確定させることです。
改正法は2025年6月11日に公布され、2026年4月1日から施行されました (厚生労働省 栃木労働局「2026年4月1日 女性活躍推進法が改正されました」)。義務の対象となる規模は次のとおりです。
| 常時雇用する労働者の数 | 情報公表の扱い |
|---|---|
| 101人以上 | 義務 |
| 100人以下 | 努力義務 |
出典: 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」
常時雇用する労働者の数え方を先に決める
人数の線引きが変わったことで、これまで対象外だった会社が新たに対象になります。数え方が社内で定まっていないと、対象かどうかの判断そのものがぶれます。正社員だけを数えるのか、契約社員やパートタイムの労働者をどう扱うのかを、担当者の間で先に合わせてください。判断に迷う場合は、自社を管轄する労働局に確認するのが確実です。
つまずきやすい点として、人数は事業所単位ではなく企業単位で見る必要があります。複数の拠点がある会社では、拠点ごとの人数で判断してしまう誤りが起きやすいところです。所要時間の目安は、名簿が整っていれば半日程度です。
改正前の301人以上との違い
改正前、男女の賃金の差異の公表義務は常時雇用する労働者301人以上の事業主に課されていました (厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」)。今回の改正で、この線が101人以上に下がっています。
つまり、従業員が100人台から300人ほどの会社にとっては、今回はじめて公表が必要になる改正です。過去に「うちは対象外」と判断して以降、確認していない場合は、この機会に現在の人数で見直してください。
100人以下の会社が任意で公表する場合の考え方
100人以下であれば努力義務にとどまるため、公表しないこと自体が違反になるわけではありません。ただし、公表の方法や項目の考え方は義務の対象と同じものを参照できます。採用の場面で応募者に自社の状況を示したい場合は、任意で公表するという選択もあります。
なお、公表には期限があり、新たな事業年度の開始後おおむね3か月以内に直前の事業年度の実績を示すこととされています (厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について 資料2」)。任意で公表する場合も、この頻度に合わせておくと運用が揃います。期限と年間の段取りについては後述します。
公表する項目を確定する
男女の賃金の差異と女性管理職比率の2つが、2026年4月1日以降に常時雇用する労働者101人以上の事業主へ義務付けられた公表項目です (厚生労働省リーフレット「女性活躍推進法が改正されました」)。対象かどうかを確かめたら、次はこの2項目をそろえる作業に入ります。
改正前は、男女間賃金差異の公表義務の対象が301人以上の企業に限られていました (同リーフレット)。今回、対象が101人以上に広がると同時に、女性管理職比率が公表項目に加わっています。厚生労働省の特集ページによると、公表義務の対象となる企業数は約57,000社とされています。
男女の賃金の差異
男女の賃金の差異は、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を示すものです。数値の区分や説明欄の書き方には決まりがあり、そのまま社内の集計表を貼れば済むものではありません。この点は次のセクションで詳しく扱います。
先に押さえておくべきは、対象となる事業年度が「直前の事業年度」である点です。集計の前に、自社の決算月から対象期間を確定させてください。所要時間の目安は、給与データが1か所にまとまっていれば1日から2日程度です。
女性管理職比率
女性管理職比率は、今回の改正で新たに公表が義務付けられた項目です。つまずきやすいのは、自社における「管理職」の範囲が社内で定義されていない場合です。役職名で数えるのか、権限や職責で数えるのかが部門ごとにばらばらだと、比率そのものが年によってぶれてしまいます。
集計に入る前に、どの役職までを管理職として数えるかを文書で決めておくことをおすすめします。翌年以降も同じ定義で数えられることが、公表を続けるうえで効いてきます。
どちらか一方だけの公表では要件を満たさない点
義務付けられているのは2項目です。男女の賃金の差異だけを載せて女性管理職比率を落とす、あるいはその逆という状態では、要件を満たしません。
なお、101人から300人規模の企業が公表する項目は3項目以上とされています (厚生労働省「女性活躍推進法に関する制度改正のお知らせ 女性の活躍に関する情報公表が変わります」)。義務の2項目に加えて、自社で選ぶ項目が必要になるという整理です。自社がどの規模に当たるかで必要な項目数が変わるため、公表ページを作る前に、載せる項目の一覧を確定させてください。
数値の形式を整える: 3区分と説明欄
男女の賃金の差異は、男性の賃金に対する女性の賃金の割合をパーセントで示し、全労働者・正規雇用労働者・非正規雇用労働者の3区分に分けて公表します (厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について 資料2」)。差額そのものではなく割合で示す点と、1つの数値では足りない点が、最初につまずきやすいところです。
3区分それぞれの数値の並べ方
公表する数値は次の3つです。区分ごとに分母と分子が変わるため、集計表も3行で作っておくと転記の間違いが減ります。
| 区分 | 示す数値 |
|---|---|
| 全労働者 | 男性の賃金に対する女性の賃金の割合 (パーセント) |
| 正規雇用労働者 | 同上 |
| 非正規雇用労働者 | 同上 |
出典: 厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について 資料2」
正規雇用労働者と非正規雇用労働者のどちらに含めるか判断に迷う雇用形態がある場合は、その扱いを次の説明欄に書きます。数値を丸めるのではなく、前提を書いて示すのが基本の考え方です。
説明欄に書く前提 (対象期間・対象労働者の範囲・賃金の範囲)
説明欄 (付記事項) には、算出の前提として重要な事項を書きます。具体的には、対象期間、対象労働者の範囲、賃金の範囲の3つです (同資料)。
読み手はこの欄を見て数値の意味を判断します。たとえば賃金の範囲に賞与や手当を含めたかどうかで、同じ会社でも割合は変わります。前提を書かずに数値だけを載せると、比較のしようがない情報になってしまいます。所要時間の目安は、集計の条件が決まっていれば1時間程度です。
社内のどの数字を集めるか、集計の段取り
集計に入る前に、次の3つを先に決めます。この順番で進めると手戻りが起きにくくなります。
- 対象期間を決める。直前の事業年度が対象です。自社の決算月から具体的な開始日と終了日を書き出します。所要時間の目安は30分です。
- 対象労働者の範囲を決める。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の線引きと、期中の入退社をどう扱うかを決めます。つまずきやすいのは、出向者や休職者の扱いが部門ごとに異なっている場合です。
- 賃金の範囲を決める。どの手当や賞与を含めるかを決め、翌年以降も同じ条件で集計できるよう記録に残します。
3つを決めたうえで給与データを集計すれば、あとは区分ごとに割合を出すだけです。なお、公表には新たな事業年度の開始後おおむね3か月以内という期限があるため (同資料)、集計の段取りは事業年度の終わりに合わせて組んでおくと余裕が生まれます。期限と年間の流れについては後述します。
掲載先を選ぶ: 女性の活躍推進企業データベースと自社サイト
公表は、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」または自社のホームページなど、求職者等が容易に閲覧できる方法で行います (厚生労働省「女性活躍推進法に関する制度改正のお知らせ 女性の活躍に関する情報公表が変わります」)。どちらか一方でも要件を満たしますが、それぞれ性格が違うため、自社の使い方に合わせて選びます。
データベースと自社サイトの使い分け
2つの掲載先の違いを整理すると次のようになります。
| 掲載先 | 向いている場面 | 留意する点 |
|---|---|---|
| 女性の活躍推進企業データベース | 求職者に他社と並べて見てもらいたい場合 | 入力の様式が決まっており、自社の説明を自由には書けません |
| 自社のホームページ | 採用ページや会社情報と合わせて見てもらいたい場合 | 掲載する場所と更新の担当を自社で決める必要があります |
両方に載せておくという選び方もあります。2026年4月1日の施行で対象が101人以上に広がり (厚生労働省リーフレット「女性活躍推進法が改正されました」)、厚生労働省の特集ページによると対象となる企業数は約57,000社とされています。求職者が同業他社と見比べる場面は、今後増えていくと考えられます。
自社サイトに置く場合のページの位置 (会社情報・採用情報からの導線)
自社サイトに置く場合、つまずきやすいのは「公開したのに誰にも見つけられない」状態です。要件は求職者等が容易に閲覧できることなので、トップページから何度もたどらないと届かない場所に置くのは避けます。
実務としては、会社情報のページと採用情報のページの両方からリンクを張るのが確実です。ページのURLは年ごとに変えず、同じURLの中身を更新していく作りにしておくと、リンクの張り替えが不要になります。所要時間の目安は、既存サイトにページを1枚追加するだけであれば半日程度です。
PDFだけで済ませる場合に注意すること
社内で作った資料をそのままPDFにして置く方法もありますが、注意点があります。スマートフォンで開いたときに文字が小さく読みにくくなること、そしてPDFのファイル名や掲載場所が年ごとに変わると、古いファイルが検索結果に残り続けることです。
実装上の注意として、PDFを差し替える場合は同じファイル名とURLで上書きするか、古いPDFから新しいページへ転送する設定を入れてください。ページ本文にも数値を書いたうえで、詳細をPDFで補うという形にしておくと、読み手にも検索エンジンにも内容が伝わります。
なお、公表内容はおおむね1年に1回以上の更新が必要とされています (厚生労働省 静岡労働局「女性の活躍に関する情報公表について」)。毎年触るページになるという前提で、更新しやすい作りを選んでください。年間の段取りについては後述します。