何が問題になるのか
問題になるのは、事業者が関与した表示を、第三者の自発的な声のように見せることです。お客様の声を載せること自体が禁じられているわけではありません。
規制が対象にしているもの
景品表示法に基づくステルスマーケティングの告示 (令和5年内閣府告示第19号) は、令和5年10月1日に施行されています (消費者庁「ステルスマーケティング規制」)。
対象になるのは、事業者の表示であるにもかかわらず、一般の消費者が事業者の表示であると分からないものです。つまり、判断の軸は内容の良し悪しではなく、誰の表示なのかが読み手に伝わるかどうかにあります。
この軸で考えると、自社サイトの扱いは整理しやすくなります。自社サイトに載っている情報は、通常、その会社が出している情報だと読み手に伝わります。そのため、自社サイトにお客様の声を載せること自体が直ちに問題になるわけではありません。
自社サイトのお客様の声が対象になる場面
注意が必要になるのは、第三者の立場を装う形になっている場合です。次のような場面が考えられます。
- 社内の人が書いた文章を、利用者の声として載せている
- 実在しない利用者の声を作って載せている
- 事業者が依頼して書いてもらった声を、自発的に寄せられた声のように見せている
- 自社サイトとは別に、第三者が運営しているように見えるサイトを作り、そこに自社の評価を載せている
つまずきやすいのは、4つ目です。自社サイトであれば誰の表示か伝わりますが、運営者が誰か分からない形のサイトやアカウントで自社を推す形にすると、事業者の表示であることが伝わらなくなります。
判断に迷ったときの考え方
迷ったときは、その表示を見た人が「これはこの会社が出している情報だ」と分かるかどうかを確認してください。分かる形になっていれば、問題になりにくいと考えられます。
また、事業者が関与しているのに、その関与が読み手に伝わらない場合は、関与の事実が分かる表示を添えます。どこに何を書くかは後のセクションで扱います。
なお、本記事は一般的な考え方を整理したものです。個別の表示が規制に当たるかどうかの判断が必要な場合は、消費者庁の公表資料を確認するか、弁護士など専門家に相談してください。
掲載してよい声と、注意が必要な声
利用者が自発的に書いた声をそのまま載せるのは問題になりにくく、事業者が依頼や対価を伴って集めた声は表示のしかたに注意が必要です。判断の軸は、事業者の関与があるかどうかと、その関与が読み手に伝わるかどうかです。
整理すると次のようになります。
| 声の集め方 | 自社サイトでの扱い |
|---|---|
| 利用者が自発的に寄せた声 | そのまま載せられます |
| 事業者が依頼して書いてもらった声 | 依頼した事実が伝わる形で載せます |
| 謝礼や割引と引き換えに書いてもらった声 | 対価があった事実が伝わる形で載せます |
| 社内の人が書いた文章を利用者の声として載せる | 載せません |
自発的に寄せられた声
問い合わせフォームやアンケートに利用者が自分の判断で書いた内容は、自発的な声にあたります。これを自社サイトに載せる場合、その表示が自社のものであることは読み手に伝わるため、問題になりにくいと考えられます。
ただし、掲載には本人の同意が必要です。アンケートに答えてもらった時点では公開の想定がなかった場合、そのまま載せると別の問題が生じます。同意の取り方は後のセクションで扱います。
依頼して書いてもらった声
事業者から「よろしければ感想をいただけませんか」と依頼して書いてもらった声も、載せること自体は可能です。注意が必要なのは、それを自発的に寄せられた声のように見せる場合です。
つまずきやすいのは、依頼の有無を書かないまま「お客様の声」とだけ見出しを付けることです。自社サイト上であれば事業者の表示であること自体は伝わりますが、集め方に関与がある場合はその事実も添えておくほうが、読み手の受け取り方と実態が一致します。
謝礼や割引と引き換えの声
謝礼や割引、景品などの対価と引き換えに書いてもらった声は、より注意が必要です。対価があると、書く側の内容が影響を受ける可能性があるためです。
この場合は、対価があった事実が分かる表示を添えてください。ステルスマーケティングの告示 (令和5年内閣府告示第19号) は令和5年10月1日に施行されており (消費者庁「ステルスマーケティング規制」)、対価の有無を伏せたまま第三者の感想のように見せる形は避けるべきものとされています。
自社サイト以外の場所、たとえば利用者に依頼して外部のレビューサイトやSNSへ投稿してもらう場合は、扱いがさらに慎重になります。投稿する側にも表示の判断が必要になるためです。本記事は自社サイトへの掲載を対象としており、外部への投稿依頼については消費者庁の公表資料を確認してください。
掲載時の表示のしかた
事業者の関与がある場合は、その事実が読み手に分かる形で表示します。表示を添えるだけで解決する場面は多く、載せるのをやめる必要はありません。
どこに書くか
書く場所は、その声のすぐ近くです。ページの一番下にまとめて小さく書くと、声を読んだ人がその表示に気づきません。
配置の目安は次のとおりです。
- 個々の声に関与の有無が異なる場合は、声ごとに添えます
- ページ内のすべての声が同じ集め方であれば、見出しの直下にまとめて書けます
- 別のページへのリンクだけで済ませるのは避けます
つまずきやすいのは、装飾を優先して表示を薄い色や小さな文字にしてしまう場合です。読み手が気づける大きさと色で書いてください。
どう書くか
書き方に決まった様式はありません。事実を短く書けば足ります。次のような書き方が考えられます。
- 「アンケートにご協力いただいた方の回答を掲載しています」
- 「掲載にあたり、ご協力のお礼として割引を提供しています」
- 「当社からご依頼して執筆いただいた内容です」
表現を曖昧にしないことが要点です。「一部に協力をいただいています」のような書き方では、何があったのかが伝わりません。
あわせて、掲載している内容が個人の感想であることも添えておくと、読み手の受け取り方と実態が一致しやすくなります。効果や結果には個人差があるためです。
書き方でつまずきやすい点
3つ挙げます。
- 表示を入れる場所が決まっていないため、担当者ごとに書き方が変わる。声を追加するたびに判断が必要になり、いずれ抜けます。ページに載せる形をあらかじめ決め、追加時に迷わないようにしてください。
- 過去に載せた声の集め方が分からない。記録が残っていないと、表示を添えるべきかどうかを判断できません。この点は後のセクションで扱います。
- 表示を入れると印象が悪くなると考えて省いてしまう。事実を書くことで信頼を損なうことは通常なく、伏せていたことが後から分かるほうが影響は大きくなります。
実装の視点で注意点を1つ挙げると、お客様の声を管理画面から追加できる作りにしている場合、入力欄に「集め方」と「表示する注記」の項目を設けておくと、担当者が変わっても表示が揃います。ページを作る段階で制作会社に伝えておくと、後からの改修が不要になります。
文章を編集するときの線引き
誤字の修正や長さの調整は許容されますが、評価の方向を変える編集は避けます。いただいた文章をそのまま載せると読みにくい場合があり、どこまで手を入れてよいかは実務でよく迷うところです。
編集してよい範囲
読み手にとって分かりやすくするための調整は、通常問題になりません。
- 明らかな誤字や脱字の修正
- 掲載する幅に収めるための抜粋 (前後の文脈を変えない範囲)
- 個人が特定される情報の伏せ字化
- 自社の担当者名や社名の伏せ字化
抜粋する場合は、全体の趣旨が変わらないことを確認してください。長い文章から一部を切り出すと、書いた人の意図と違う印象になることがあります。
避けるべき編集
次のような編集は、書いた人の評価を事業者側が作り替えることになります。
- 否定的な記述だけを削って肯定的な部分だけを残す
- 「まあまあ良かった」を「とても良かった」に書き換える
- 複数の人の文章をつなぎ合わせて1人の声にする
- 書かれていない効果や成果を追記する
つまずきやすいのは、1つ目です。悪意なく「読みやすくするため」に短くした結果、否定的な部分だけが落ちることがあります。抜粋した後に、元の文章と読み比べて印象が変わっていないかを確認してください。
判断に迷う編集をする場合は、その旨を表示に書くという方法もあります。「読みやすさのため一部を編集しています」と添えておけば、読み手も前提を理解できます。
元の文面を保管しておく
編集した場合は、元の文面を必ず保管してください。後から「この声はどういう内容だったのか」を確認できる状態にしておくことが、社内の説明にも外部への説明にも効きます。
保管するのは次の3点です。
- いただいた元の文面 (メールやアンケートの回答そのまま)
- 掲載時に編集した内容
- 掲載の同意を得た記録
つまずきやすいのは、担当者の個人のメールボックスにだけ残っている場合です。異動や退職で参照できなくなります。共有の保管場所を決めてください。所要時間の目安は、保管の場所と決まりを作るだけであれば1時間程度です。
保管の手順については、後のセクションで全体の流れとあわせて扱います。