結論:まずパッケージを3か月使う。それで足りない部分が見えてから開発を検討する

CRMの選定でいきなり自社開発を選ぶのは、ほとんどの中小企業にとって遠回りです。月額数万円のパッケージを実際に3か月使い、どうしても足りない部分が具体的に言える状態になってから開発を検討するのが、最も損の少ない順序です。

費用の比較

選択肢 初期費用 継続費用 導入期間
SaaS(kintone、Zoho、HubSpot 等) 0〜30万円(設定支援を頼む場合) 月1〜10万円(人数による) 2週間〜1か月
SaaS+カスタマイズ開発 50〜200万円 月1〜10万円+保守 1〜3か月
フルスクラッチ開発 200〜800万円 保守 月3〜15万円 4〜8か月

5年で見た総額では、SaaSが安いとは限りません。人数が増えるほど月額が積み上がるためです。ただし初期の判断ミスによる損失は、開発のほうが圧倒的に大きくなります。

パッケージで足りるケース/足りないケース

パッケージで足りることが多い

  • 顧客情報・商談・対応履歴を一箇所で共有したい
  • 誰がいつ何をしたかを記録したい
  • 案件の進捗をボードで見たい
  • 簡単な集計とレポートが欲しい

これらは各SaaSの標準機能で概ね実現できます。「自社は特殊だから」と考えている業務の8割は、設定で表現できます。

開発が必要になりやすい

状況 なぜパッケージで難しいか
業界固有の計算ロジックがある 標準機能に無く、拡張の範囲を超える
既存の基幹システムと双方向で連携したい APIの制約や、連携の頻度・量が合わない
現場が使う端末・環境が特殊(現場でオフライン等) SaaSは常時接続が前提のことが多い
データの保管場所に制約がある 契約や規程で外部保管が認められない
利用人数が多く、SaaSの月額が開発費を上回る 数十〜数百人規模で逆転することがある

選定の進め方

ステップ1:今の「困りごと」を3つに絞る

CRM導入の相談では、たいてい要望が20個以上出ます。それを全部満たそうとすると、どの選択肢も高くつきます。

「これが解決しなければ導入する意味がない」を3つに絞ってください。残りは「あれば嬉しい」に分類します。

ステップ2:無料期間でその3つを試す

主要なSaaSには無料試用期間があります。カタログの機能一覧を比べるのではなく、絞った3つが実際にできるかを触って確かめてください。

ステップ3:3か月の実運用で判断する

試用ではなく、実際の業務データを入れて3か月運用します。ここで初めて「本当に足りないもの」が分かります。

多くの場合、最初に「絶対必要」と思っていた機能が使われず、想定していなかった不便が出てきます。この経験がないまま開発すると、使われない機能を作ることになります。

ステップ4:足りない部分だけを開発する

3か月後に残った不便を、次の順で検討します。

  1. 設定・アプリ追加で解決できないか
  2. SaaSのAPIを使った小さな追加開発で解決できないか
  3. それでも無理なら、その業務だけを別システムとして作る

全部を作り直す判断は、ここまで来てからで遅くありません。

失敗しやすいパターン

現場が入力しない

CRMが失敗する理由の第1位です。入力する営業担当にとって、入力すると自分が楽になる要素が必要です。「上司が管理するために入力させる」設計は必ず形骸化します。

例えば、入力すれば見積書が自動で出る、次回の連絡時期が自動でリマインドされる、といった見返りを組み込みます。

移行データの整理を軽視する

既存のExcelや名刺データをそのまま入れると、同じ会社が「株式会社A」「(株)A」「A社」で3件登録される状態になります。名寄せの作業を移行計画に必ず入れてください。

全社一斉に始める

1部門・少人数から始め、うまくいってから広げてください。全社一斉導入は、問題が起きたときの影響が大きすぎます。

よくある質問

Q. Excelで管理していますが、CRMに移すべきですか?

同時に触る人が3人以上いる、他システムへ転記している、履歴が追えない — このいずれかに当てはまるなら検討時期です。1人で使っているなら、Excelのままで問題ありません。

Q. SFAとCRMは何が違いますか?

厳密には、SFAは営業活動の管理、CRMは顧客との関係管理が主眼です。ただし現在の主要製品はどちらの機能も持つため、製品選定の段階でこの区別を気にする必要はほとんどありません

Q. 開発した場合、他社に引き継げますか?

契約でソースコードと環境構築手順の引き渡しを定めておけば可能です。この確認をしないまま発注すると、その会社以外触れないシステムになります。

Q. 個人情報の扱いで注意することは?

保管する項目、アクセスできる人、保管期間を先に決めてください。「とりあえず全部入れる」と、後から範囲を狭めるのが難しくなります。

当社の考え方

Nortiq Labs では、まずパッケージで試すことをお勧めしています。それで足りるなら開発は不要ですし、足りなかったとしても「何が足りないか」が具体的に言える状態で開発に入れます。

ご相談時に「これはkintoneで足ります」とお伝えすることもあります。開発する前提で話を進めるほうが当社の売上にはなりますが、使われないシステムを納品しても意味がないためです。

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