結論:RFPは「決まっていること」と「決まっていないこと」を分けて書く

RFP(提案依頼書)で最も重要なのは、要件を完璧に書き切ることではありません。決まっていない部分を「決まっていない」と明示することです。ここを曖昧にしたまま各社に渡すと、前提の異なる見積が並び、比較できなくなります。

RFPを作る意味

RFPがないと、各社が独自の想定で提案します。結果として次が起こります。

  • 見積額が2〜3倍ばらつき、比較できない
  • 発注後に「それは含まれていません」が発生する
  • 社内で「何を頼んだのか」が共有されない

RFPは制作会社のためではなく、発注側が自社の要求を整理するための道具です。書く過程で、社内の認識のズレが表面化します。

RFPに書く項目

① 背景と目的

なぜリニューアルするのかを、現状の課題として具体的に書きます。

悪い例 良い例
デザインが古くなったため 採用ページからのエントリーが月0件で、新卒採用に支障が出ている
スマホ対応していないため スマートフォンからの流入が7割だが直帰率が85%で、問い合わせにつながっていない

② ゴールと評価指標

公開後、何がどうなっていれば成功かを書きます。数値がなくても構いませんが、何を見て判断するかは書いてください。

  • 問い合わせ件数(現状:月◯件 → 目標:月◯件)
  • 採用エントリー数
  • 特定ページへの到達率

③ 対象範囲

項目 書くこと
対象サイト ドメイン、現在のページ数
含む作業 デザイン、コーディング、CMS構築、原稿、撮影、移行、公開作業
含まない作業 自社で行うもの(原稿作成、写真提供など)
対応デバイス PC / スマートフォン / タブレット
対応ブラウザ 主要ブラウザの最新版、など

「含まない作業」を書くことが特に重要です。原稿を自社で用意するのか制作会社が書くのかで、見積は大きく変わります。

④ 現状の情報

  • 現在のURL、ページ数、CMSの種類
  • 月間のアクセス数(分かる範囲で)
  • 現在のサーバー・ドメインの契約先
  • 使用中の外部サービス(予約、フォーム、解析など)

⑤ 機能要件

「決まっていること」と「相談したいこと」を分けて書きます。

決まっていること(必須)

  • お問い合わせフォーム(項目:氏名・会社名・メール・電話・内容)
  • お知らせの自社更新(CMS)

相談したいこと(提案を求める)

  • 多言語対応が必要か。必要なら手法の提案がほしい
  • 採用情報を独立サイトにすべきか、本体に含めるべきか

この分け方をすると、提案の質で会社を比較できます

⑥ 制約条件

  • 予算のレンジ(上限)
  • 公開希望時期と、その理由(展示会、期首など)
  • 社内の体制(担当者の人数、意思決定者)
  • 使えないもの(特定のサービス、外部サーバーの利用不可など)

予算を書かないほうが不利になります。 予算が分からないと各社が想定するグレードがばらつき、比較できない見積が並びます。

⑦ 提案してほしいこと

  • 全体スケジュール
  • 体制(誰が担当するか。再委託の有無)
  • 費用の内訳(工程別)
  • 公開後の保守・運用の内容と費用
  • 過去の類似実績

⑧ 選定の進め方

  • 提出期限
  • 提案内容の説明機会の有無
  • 選定基準(価格だけでないことを明示する)
  • 質問の受付方法と期限

よくある失敗

機能を並べただけのRFP

「CMS導入、レスポンシブ対応、SEO対策」と並べても、各社は同じ言葉を違う中身で見積ります。それぞれ何を期待しているかを1行添えてください。

「SEO対策」を要件に書く

SEOは施策の集合であり、これだけでは何も決まりません。「特定キーワードでの上位表示を保証」を要求すると、保証できないことを保証する会社を選んでしまうリスクがあります。書くなら「内部構造の最適化」「構造化データの実装」など、具体的な作業に落としてください。

質問を受け付けない

RFPに不明点があるのは当然です。質問期間を設けない進め方は、各社が推測で見積ることになり、精度が落ちます。

相見積もりの社数が多すぎる

5社以上に声をかけると、各社の提案が薄くなります。3社程度が、提案の質と比較のしやすさのバランスが取れます。

RFPの分量

A4で5〜10ページ程度が目安です。長ければいいものではありません。 上記の①〜⑧が押さえられていれば、簡潔なほうが読まれます。

よくある質問

Q. 社内にWebの担当者がいません。RFPは書けますか?

書けます。技術的な指定は不要で、**「今困っていること」と「どうなりたいか」**が書ければ十分です。技術的な手段は提案を求める側の項目に入れてください。

Q. RFPの作成を制作会社に手伝ってもらってもいいですか?

要件整理の相談は有効です。ただし、その会社が有利になる書き方になっていないかは意識してください。手伝ってもらった会社以外にも同じRFPを渡し、比較することをお勧めします。

Q. 提案を断るときはどうすれば?

理由を1つ添えて、早めに連絡してください。提案には各社の工数がかかっています。丁寧な断り方は、次の機会につながります。

当社の対応

Nortiq Labs では、RFPをいただいた際に**「ここは決まっていませんね」とお伝えします**。そのまま見積を出すことはできますが、後から認識違いが出るためです。

RFPがまだない段階でのご相談も承ります。現状のサイトと課題を伺って、要件を整理するところからご一緒できます。

関連記事

  • 失敗しないホームページリニューアルの進め方 — タイミングの見極めと発注チェックリスト
  • 制作会社の選び方 — 「安かろう悪かろう」の罠を避ける