「ブログを始めたのに、3か月で更新が止まった」。これは担当者の意志の問題ではなく、ほぼ構造の問題です。本記事では、日本企業のオウンドメディアが止まる理由を公開データで分解し、兼任担当・ひとり広報でも続けられる運用の組み立て方を整理します。
結論
- 日本企業のオウンドメディアの約27%はすでに更新が止まっており、そのうち65.5%は立ち上げから半年以内に止まっています(Zenken株式会社「2022年オウンドメディアに関する調査」運用担当者 n=300)。
- 停止理由の1位は「自社の運営担当者がいなくなったから(運用するリソースがなくなったから)」で54.3%。SEOがうまくいかなかった(35.8%)より先に、人が続かないことが来ます。
- Googleは公式ドキュメントで「SEOの効果は通常4か月から1年かかる」と説明しています。半年以内に65.5%が脱落するということは、多くの企業が成果が出はじめる手前でやめていることになります。
- したがって、施策の巧拙より先に「続く仕組み」を設計することが優先されます。工程を分解し、担当者が背負う量を減らすことが唯一の現実解です。
日本企業の約3割は、すでにブログが止まっている
Zenken株式会社が2022年に実施したオウンドメディア運用担当者への調査(n=300)では、次の実態が報告されています。
| 指標 | 数字 |
|---|---|
| オウンドメディアが「運営停止」または「運営されていない」割合 | 約27%(運営停止 7.7% + 運営されていない 19.3%) |
| 停止メディアのうち半年以内に更新が止まった割合 | 65.5%(1か月以内 5.2% + 3か月以内 31.0% + 半年以内 29.3%) |
| 停止理由1位 | 運営担当者がいなくなった/運用リソースがなくなった 54.3% |
| 停止理由2位 | SEO対策がうまくいかなかった 35.8% |
| 停止理由3位 | リード(問い合わせ)獲得数が少なかった 33.3% |
注目すべきは、停止理由の1位が「成果が出なかったから」ではなく「人がいなくなったから」である点です。つまり多くの企業は、施策の良し悪しを判断できる段階に到達する前に運用が止まっています。
つまずきやすい点: 「更新が止まった=担当者の頑張りが足りなかった」と社内で総括してしまうと、担当者を替えても同じ結果になります。止まった原因は個人ではなく、次章の4つの構造要因にあります。
なぜ止まるのか — 4つの構造要因
1. 記事1本に平均3時間48分かかる
Orbit Media の「11th Annual Blogger Survey」(2024年、回答者1,000名超)によると、ブログ記事1本あたりの平均執筆時間は3時間48分でした。2014年の2時間24分から約57%増えています。平均文字数は1,394語(日本語ではおおむね2,500〜3,500字相当)です。
これは「書く」工程だけの時間です。実際にはリサーチ、構成、執筆、校正、画像作成、CMSへの入稿、SEO設定、公開後のリライトと6〜8工程が必要になります。兼任担当が月4本を目指すと、執筆だけで月16時間。通常業務との両立は、意志ではなく時間の問題として困難になります。
2. 書く人が「ひとり」しかいない
| 指標 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 広報部立ち上げ5年未満の企業で広報が「1人」体制 | 24.0%(「2〜5人」を含めると54.0%) | IDEATECH「広報部立ち上げに関する実態調査」n=100、2022年11月 |
| 広報業務歴5年未満の割合 | 50.3% | 日本パブリックリレーションズ協会「"ひとり広報"実態調査」n=138、2023年 |
| 中堅企業でIT専任担当が1人以下 | 約38%(ひとり情シス 18.8% + ゼロ情シス 18.8%) | Dell EMC IT投資動向調査(中堅企業約800社、2018-2019年) |
| 中小企業で人手不足を感じている割合 | 約7割 | 日本商工会議所・東京商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」2024年 |
| BtoBコンテンツマーケティングの運用課題1位 | 社内のスキル不足 55.4%、社内のリソース不足 28.7% | IDEATECH「BtoB企業のコンテンツマーケティングに関する実態調査」n=101、2023年 |
書く人がひとりであれば、その人が繁忙期に入った日・休んだ日・退職した日に更新は止まります。バックアップのいない体制で「継続」を期待すること自体に無理があります。
3. 成果が出るまで4か月〜1年、脱落は半年以内
Google検索セントラルの公式ドキュメント「SEO業者(代理店、コンサルタント)とは」には、施策の効果について「変更に着手してからメリットが得られるようになるまで、通常は4か月から1年かかります」と明記されています。
一方、前掲のZenken調査では停止メディアの36.2%が3か月以内に、65.5%が半年以内に更新を止めています。成果が出はじめる時期と、脱落が集中する時期が重なっていることになります。
BtoB企業を対象にしたイノーバ/IDEATECHの調査(n=105、2023年)では、コンテンツマーケティングで「壁を感じた」と答えた企業が**91.4%**に達しました。リンクアンドパートナーズの調査(n=1,002、2023年5月)では、課題の1位が「発信するコンテンツ・ネタがない」42.1%、2位が「スキル・人材不足」33.8%です。ネタ切れは書く能力の不足というより、キーワード設計と読者像の設定が済んでいないことの結果として現れます。
4. WordPress は「書く前」の保守負担が重い
WordPressは公式イベント「State of the Word 2024」で、CMS市場シェア83%(全Webサイトでは58.5%)と発表されています。普及している一方、運用負担も無視できません。
Patchstack『State of WordPress Security 2025』によると、2024年に発見されたWordPressエコシステムの新規脆弱性は7,966件(前年比+34%、1日あたり約22件)で、うち96%がプラグイン由来でした(テーマ4%、コア由来は7件)。
非技術者にとっての具体的な負担は、脆弱性の件数そのものではなく、次のような日常の摩擦です。
- プラグイン更新後に画面が真っ白になる、管理画面に入れなくなる
- メンテナンスモードから戻らない
- テーマとプラグインの組み合わせでレイアウトが崩れる
- PHPバージョンの非互換で特定機能が停止する
「更新通知は来ているが、壊れるのが怖くて押せない」という状態は、担当者の技術力の問題ではなく、壊れたときに戻せる体制が用意されていないことの問題です。
止めた企業と続けた企業の差
継続した場合の効果については、以下のようなデータが引用されます。いずれも出典と年次を確認したうえで参照してください(数字の扱いは後述します)。
| 指標 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| ブログ運営企業のサイト訪問者数 | 非運営企業の +55% | HubSpot「Blogging Statistics」2015年 |
| ブログ運営企業の月間リード獲得 | 非運営企業の +67% | DemandMetric |
| ブログを優先投資した企業のROI | 非運営企業の 13倍 | HubSpot 2015年 |
| ブログを持つ企業のインデックスページ数 | 非運営企業の +434% | DemandMetric |
さらにHubSpotは自社ブログについて、月間トラフィックの約75%、リードの約90%が「その月に公開していない過去記事」から生じていると公表しています。記事は公開直後ではなく、蓄積されてから効き始めるということです。
裏を返すと、半年でやめた企業には、この蓄積がまったく残りません。止めることの損失は「書かなかった記事の数」ではなく「積み上がらなかった資産」です。
