Web制作2026.09.28·8 min read·Nortiq Labs

卸売業の在庫と棚卸|外注前に決める要件

在庫のシステム化は、何から決めますか?

最初に決めるのは、在庫を数える単位と、在庫が増減する時点です。この2つが決まらないと、画面も帳票も設計できません。

外注の相談をする前に決めておくことは、次の3点です。

  1. 在庫を数える単位(所要時間の目安: 商品マスタを見ながら2時間程度)
  2. 在庫が増減する時点(同: 倉庫と営業の担当者を含めて2時間程度)
  3. 置き場所をどこまで細かく持つか(同: 倉庫の確認を含めて半日程度)

この3点は仕様の前提になります。決まっていないまま見積もりを取ると、後から設計のやり直しが発生します。

在庫を数える単位を決める

同じ商品を、ばら、ケース、パレットのどの単位で数えるかを決めます。複数の単位を使う場合は、1ケースが何個かという入数をマスタに持たせ、内部ではばらの数で持つ形が扱いやすくなります。

つまずきやすい点は、入数が途中で変わる商品です。仕入先の仕様変更で1ケースの入数が変わると、過去の在庫数と換算が合わなくなります。入数はマスタに履歴を持たせるか、入荷の時点の入数を伝票側に記録する形にしてください。

増減が起きる時点を決める

在庫が減るのは、受注した時点か、出荷指示を出した時点か、実際に出荷した時点かを決めます。3つのうちどれを選ぶかで、画面に表示される在庫の意味が変わります。

実務では、実際に出荷した時点で在庫を減らし、受注済みで未出荷の数量を別に持つ形が多く使われます。こうすると、手元にある数量と、引き当て済みで動かせない数量の両方が見えます。

同じ考え方は入荷側にも当てはまります。発注済みで未入荷の数量を持つかどうかを決めてください。

置き場所をどこまで細かく持つか決める

倉庫が1つで棚の指定も無いなら、置き場所を持たない設計で足ります。複数の倉庫があるか、棚の番号で探している運用があるなら、置き場所を項目として持ちます。

つまずきやすい点は、最初から細かく持ちすぎることです。棚の番号まで持たせると、入出庫のたびに場所の入力が必要になり、現場の手間が増えます。いま紙の上で管理していない粒度は、システムでも持たない判断から始めてください。

なぜ表計算ソフトの在庫表は合わなくなるのですか?

入力の時点と実際の出入りの時点がずれ、そのずれを誰も検証できないからです。記録が残っていても、どこで合わなくなったかを追えません。

この状態が長く続く背景もあります。IPAの「DX動向2025」では、DXに取り組んでいると回答した中小企業の割合は大企業と比較して依然として低い水準にあり、人材不足、予算不足、経営層の理解不足が主な障壁として挙げられています。

出典: IPA「DX動向2025」

在庫表が合わないことは分かっていても、直す担い手がいないまま運用が続きます。

入力の時点がずれる仕組み

倉庫で商品が出た時刻と、事務所で在庫表を更新した時刻は一致しません。その間に別の受注が入れば、担当者は古い数量を見て回答します。

1日の終わりにまとめて入力する運用では、日中の在庫表は実態と違う数字を表示していることになります。在庫表の数字を信じて回答できないため、結果として倉庫に電話で確認する作業が残ります。

複数人で同時に触れない

表計算ソフトのファイルは、1人が開いている間は他の人が編集できません。営業が在庫を確認したいときに事務所が更新中だと、読み取り専用で開くか、待つことになります。

この制約を避けるために、担当者ごとにファイルを分ける運用が生まれます。分かれたファイルはいずれ突き合わせが必要になり、突き合わせの作業自体が新しい工数になります。

差異の原因を追えない

最も重い問題はここです。棚卸で数量が合わなかったとき、表計算ソフトの在庫表には現在の数量しか残っていません。いつ、どの伝票で、誰が変更したかが残らないためです。

セルの数字を直接書き換える運用では、書き換えた履歴も残りません。差異が出るたびに実地の数量で上書きし、原因の追究をあきらめることになります。次のセクションで、履歴を持つ設計を整理します。

つまずきやすい点は、この問題を入力の精度の問題だと考えることです。原因は担当者の不注意ではなく、履歴を持たないデータの持ち方にあります。

在庫の記録に持たせる項目は何ですか?

商品、置き場所、数量、単位、入出庫の区分、発生日時、伝票の番号、担当者を持たせます。現在の数量そのものではなく、入出庫の履歴を持つのが要点です。

項目 持たせ方
商品 商品マスタから選択。商品コードで持つ
置き場所 倉庫マスタから選択。棚まで持つかは前述の判断による
数量 数値。増加と減少を符号で持つか区分で持つかを決める
単位 商品マスタ側に持ち、内部は最小単位に換算する
入出庫の区分 選択式。入荷、出荷、返品、廃棄、棚卸調整など
発生日時 実際に出入りした日時。入力した日時とは別に持つ
伝票の番号 発注書や出荷指示書の番号。外部の伝票と突き合わせる鍵になる
担当者 作業者マスタから選択

この表をそのまま開発会社に渡せば、データ設計の出発点になります。

現在庫は履歴から計算する

在庫の数量を1つの欄に持ち、入出庫のたびに上書きする設計は避けてください。上書きすると、その数字がどう作られたかが失われます。

入出庫を1件ずつ記録し、現在庫はその合計として計算します。こうすると、棚卸で差異が出たときに、どの入出庫まで遡れば辻褄が合うかを追えます。

つまずきやすい点は、件数が増えたときの表示の速さです。毎回すべての履歴を合計すると、数年分が溜まった時点で画面が遅くなります。対策として、一定の時点の数量を確定させて保持し、それ以降の履歴だけを足す設計にします。この仕組みは後から入れると影響が広いため、最初の要件に含めてください。

入出庫の区分を確定させる

区分は選択式にし、選択肢を最初に確定させます。入荷、出荷、返品、廃棄、棚卸調整、倉庫間の移動が基本の候補です。

区分を自由記述にすると、同じ意味の言葉が複数現れ、後から集計できません。廃棄と返品を区別しておくと、原価の把握にもそのまま使えます。

単位と入数の扱いを決める

単位は商品マスタ側に持ち、入出庫の記録は最小単位に換算した数で持ちます。画面ではケース単位で入力し、内部ではばらの数で保存する形です。

換算は必ず記録の時点で行い、換算前の入力値も残してください。入数が後から変わった場合に、当時の入力が何ケースだったかを確認できます。

棚卸の差異はどう扱いますか?

差異を消すのではなく、差異として記録します。実地の数量と帳簿の数量、その差、原因の区分を残す設計にします。

差異をそのまま上書きすると、翌期も同じ差異が同じ商品で発生していることに気づけません。記録として残せば、差異が特定の商品や担当者、特定の工程に偏っているかを確認できます。

差異を記録として残す

棚卸の記録には、次の4つを持たせます。

  1. 実地で数えた数量
  2. その時点の帳簿上の数量
  3. 差(実地の数量から帳簿の数量を引いた値)
  4. 原因の区分

在庫を実地の数量に合わせる調整は、前述の入出庫の履歴に「棚卸調整」の区分で1件追加する形にします。こうすれば、在庫が動いた理由が履歴の中に残ります。

つまずきやすい点は、調整を帳簿側の数字の書き換えで行う設計です。書き換えにすると、なぜその数量になったのかが履歴から消えます。

実地棚卸の入力を分けて持つ

実地で数えた数量は、通常の入出庫とは別の入力として持ちます。棚卸の作業は、対象を決めて一斉に数える性質があるためです。

棚卸の単位は、棚卸の回(実施日と対象範囲)で持ちます。1回の棚卸に複数の担当者が関わる場合は、誰がどの範囲を数えたかも残してください。差異の原因を追うときに、数え間違いの可能性を切り分けられます。

全商品を一度に数える方法と、区分を分けて順に数える方法があります。どちらの運用かで画面の作りが変わるため、要件として明記してください。

原因の区分を決めておく

原因の区分は選択式にし、選択肢を最初に決めます。数え間違い、入力漏れ、破損、紛失、原因不明が基本の候補です。

「原因不明」を必ず選択肢に入れてください。無理に原因を当てはめさせると、集計が実態と離れます。原因不明の件数が多い商品が見つかれば、そこに運用上の問題があると判断できます。

区分ごとの件数と数量を集計できるようにしておくと、翌期の棚卸の前に対策を打つ材料になります。

既存の仕組みと情報源をどう切り分けますか?

在庫の数量を持つ場所を1つに決めます。販売管理や会計、店舗の販売時点情報管理の仕組みが別にある場合、どちらを正とするかを先に決めます。

2か所で在庫の数量を持つと、必ず片方がずれます。ずれたときにどちらを信じるかが決まっていなければ、現場は両方を見て人手で突き合わせます。

情報源を1つに決める

決め方は単純です。在庫の増減が最も多く発生する場所を、正にします。卸売業では出荷と入荷が在庫の増減の大半を占めるため、それを記録する仕組みを正にするのが自然です。

会計側は、期末の在庫金額を出すために数量を必要とします。ただし会計側が日々の在庫を持つ必要はありません。正とした側から期末の数量を渡す形で足ります。

外部サービスから取り出せる範囲を確認する

既存の外部サービスを情報源にしたい場合は、そのサービスから何が取り出せるかを先に調べてください。取り出せる範囲が、そのまま設計の制約になります。

当社で、小規模店舗に広く使われている販売時点情報管理サービスを在庫や売上の情報源の正として扱う設計を検討し、公式情報で仕様を裏取りした際の結果をお伝えします。外部から参照できるAPIは読み取り専用で、取得できるのは限られたカテゴリの日次集計にとどまり、商品単品の粒度では取れず、書き込みのAPIも提供されていませんでした。

この場合、そのサービス側へ在庫数を書き戻す運用は成立しません。CSVの受け渡しを前提に設計するほかない、という結論になります。

実装者としてつまずきやすい点

上のような制約が分かった後に問題になるのが、在庫更新の並行性です。CSVを全件上書きする方式にすると、ファイルを書き出してから取り込むまでの間に発生した売上が、警告もなく消えます。

当社ではこの設計を差分のみを反映する方式に変更し、取り込みは営業時間外のバッチに寄せ、送信済みかどうかのフラグを持たせて二重反映を防ぐ形にしました。

外部サービスの仕様の制約は設計を縛りますが、縛られ方を先に調べておけば、後から気づく整合性の事故は避けられます。要件を決める段階で、連携したい相手の仕様を確認してください。連携の設計そのものは論点が多いため、詳しくは情報源の一元化を扱った記事を参照してください。

外注前に用意する資料と、要件として書くことは?

現在の在庫表と棚卸表の実物、商品マスタ、月次で作っている帳票の3点を用意します。この3点があれば見積もりの前提が揃います。

この3点が無い状態で見積もりを依頼すると、開発会社は標準的な構成で概算を出すことになります。後から実際の運用が分かって設計が変わり、追加費用の話になります。

現行の在庫表と棚卸表を集める

在庫表と棚卸表は、記入済みの実物で集めます。空の様式では、実際に使っている欄と空のまま運用されている欄の区別がつきません。

商品マスタも、実際のファイルをそのまま渡します。商品コードの桁数、同じ商品に複数のコードが付いていないか、廃番の商品がどう扱われているかは、実物を見ないと分かりません。

つまずきやすい点は、マスタが複数あることです。営業が使う商品一覧と倉庫が使う商品一覧が別のファイルになっている場合、統合するかどうかが要件の論点になります。

出したい帳票を実物で渡す

在庫の仕組みが最終的に何を出すのかを、帳票の実物で示します。月次の在庫一覧、棚卸の集計表、会計へ渡す期末の在庫金額の資料などです。

要件の書き方には注意点があります。機能要件は「何を実現したいか」を中心に記述し、実現手段はベンダの提案に委ねる形式が推奨されています。要件を詳細に書きすぎると特定のベンダの仕様に引き寄せられ、抽象的すぎると見積もりが会社ごとに大きくばらつく、というトレードオフがあるためです。

出典: customedia「0から分かる!RFP(提案依頼書)の書き方解説」

あわせて、必須の機能と希望の機能を分けて書いてください。IPAの学習教材でもRFPは調達の段階で交付する公式文書として位置づけられており、実務解説では機能要件を必須と希望に分けて記述することが挙げられています。予算に合わせて希望の側から削れる形にしておくと、提案の比較がしやすくなります。

出典: IPA学習教材「調達計画・実施 RFI、RFPなど」

移行する在庫データの範囲を決める

移行するのは、原則として現在の在庫数量だけで足ります。過去の入出庫の履歴をすべて移す必要はありません。

実務では、直近の棚卸で確定した数量を開始残高として登録し、そこから新しい入出庫を積む形が扱いやすくなります。過去の履歴が必要な場合は、現行の在庫表をそのまま保管して参照する運用を残してください。

つまずきやすい点は、移行の時点を決めずに始めることです。いつの時点の数量を開始残高にするかを決め、その日以降は新しい仕組みだけに入力するという切り替えの線を引いてください。

在庫の記録を整えると何が変わりますか?

在庫の問い合わせに即答できるようになり、棚卸の差異の原因を後から追えるようになります。数字が正確になるだけでなく、確認の電話が減ります。

問い合わせへの即答ができる

取引先から在庫の有無を聞かれたとき、いまは倉庫に確認してから折り返すことがあります。在庫の増減が発生の時点で記録されていれば、その場で答えられます。

前述のとおり、手元にある数量と受注済みで動かせない数量を分けて持てば、「いま何個出せるか」を画面の数字で答えられます。折り返しの電話が減る分だけ、営業と倉庫の両方の工数が減ります。

御社での削減時間は、問い合わせの件数によって変わります。導入前に、1週間分の在庫確認の電話の件数を数えておくと、投資の判断材料になります。

差異の原因が追えるようになる

棚卸で差異が出たときに、その商品の入出庫の履歴を並べて確認できます。入荷の記録が抜けているのか、出荷の数量が違っているのか、原因の切り分けができます。

差異の記録が溜まると、翌期の対策が具体的になります。特定の商品だけで差異が続くなら、その商品の入数や置き場所に問題がある可能性があります。特定の工程で差異が集中するなら、その工程の記録の取り方を見直します。

差異をゼロにすることが目的ではありません。原因が説明できる状態にすることが目的です。

御社の在庫の要件整理を一緒に進めます

在庫を数える単位と増減の時点を自社だけで決めるのは、日々の出荷を回しながらでは進みにくい作業です。現行の在庫表と倉庫の運用を見ながら決めていくほうが早く、抜けも見つかります。

株式会社ノーティックラボは、業務システムの開発とDXの伴走支援を承っており、代表がAIエンジニアとして自ら実装しています。外部サービスの仕様の確認から要件の整理までを、実装の側から見て現実的な範囲で進めます。

まず現状を整理したい段階であれば、無料診断で御社の在庫の記録の状態と進め方をお伝えします。外注の進め方はDXガイドブックでもまとめています。

よくあるご質問

この記事に関して多い質問と回答をまとめます。

在庫管理は既製のサービスで足りますか、それとも作るべきですか?

まず既製のサービスを検討してください。在庫の単位、増減の時点、置き場所の粒度が一般的な形に収まるなら、既製のサービスで足ります。

作る判断になるのは、既存の販売管理や外部サービスとの連携に固有の制約がある場合や、御社の商習慣に合わない部分が業務の中心にある場合です。この記事で整理した要件は、既製のサービスを選ぶときの比較表にもそのまま使えます。

ロット管理や賞味期限の管理まで最初から入れるべきですか?

いま紙や表計算ソフトで管理していないなら、最初は入れない判断から始めてください。ロットや期限を持たせると、入出庫のたびにその入力が必要になり、現場の手間が増えます。

すでに紙の上で管理している場合は、最初から要件に含めてください。後から追加すると、在庫の持ち方そのものを変えることになり、影響が広がります。

実地棚卸をハンディ端末で行う必要はありますか?

必須ではありません。紙の棚卸表に数えた数量を書き、後から画面に入力する運用でも、差異の記録と原因の追跡はできます。

端末を使うかどうかは、商品の点数と棚卸にかかっている時間で判断してください。点数が多く、転記の時間が長い場合に効果が出ます。まず記録の仕組みを整え、端末は次の段階にする進め方も取れます。

在庫の数量を会計の在庫金額と一致させる必要はありますか?

期末の時点で一致していれば足ります。日々の在庫数量と会計側の在庫金額を常に一致させる必要はありません。

前述のとおり、在庫の数量を持つ場所を1つに決め、期末にその数量を会計側へ渡す形にします。単価をどちらで持つかは、御社の評価方法に合わせて決めてください。

過去の在庫データはどこまで移行すべきですか?

現在の在庫数量だけで足ります。直近の棚卸で確定した数量を開始残高として登録し、そこから新しい入出庫を積む形が扱いやすくなります。

過去の入出庫の履歴が必要な場合は、現行の在庫表をそのまま保管して参照する運用を残してください。移行の件数に比例して費用がかかるため、必要な範囲を先に見極めることをおすすめします。

関連リンク

監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

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