リニューアル前に何を記録すればよい?
検索の実績、アクセスの実績、表示速度、そしてページの一覧の4つを記録します。着手の前に取っておかないと、後から同じ数値を再現できません。
リニューアルの成否は、公開前と公開後を同じ物差しで比べて初めて判断できます。比べる相手がなければ、順位が下がったのか、もともと低かったのかも分かりません。
記録する4種類の数値
記録するのは次の4つです。どれも無料のツールで取得できます。
| 記録するもの | 取得元 | 残す形式 |
|---|---|---|
| 検索の実績(表示回数、クリック数、掲載順位) | Google Search Console | CSV |
| アクセスの実績(セッション、ページ別の閲覧数、流入元) | Googleアナリティクス4 | CSV |
| 表示速度(Core Web Vitalsの3指標) | Google Search Consoleのレポート、PageSpeed Insights | CSVまたは数値の書き出し |
| ページの一覧(URL、タイトル、公開日) | サイトマップ、CMSの管理画面 | CSV |
4つ目のページの一覧は見落とされがちですが、URLが変わるリニューアルでは最も重要です。旧URLの一覧が無いと、リダイレクトの設定漏れを後から検証できません。
記録の作業手順
作業は次の順に進めます。着手の決定から1週間以内に終えてください。
- 対象の期間を決めます。直近12か月と、前年の同じ期間の2本を基本にします。所要時間の目安は30分です。つまずきやすい点は、ツールによって取得できる期間の上限が違うことです。
- Search Consoleから、ページ別とクエリ別のデータをCSVで書き出します。つまずきやすい点は、画面上の表示が1,000行までに制限される場合があることです。
- Googleアナリティクス4から、ページ別の閲覧数と流入元をCSVで書き出します。
- Core Web Vitalsの3指標を記録します。所要時間の目安は30分です。
- ページの一覧を書き出します。つまずきやすい点は、サイトマップに載っていないページの存在です。CMSの管理画面と突き合わせてください。
実装者としての注意点を1つ挙げます。書き出したCSVは、必ずファイル名に取得日を入れて保存してください。日付が分からない書き出しは、後から比較の基準として使えません。
「2026-09-22_search-console-pages.csv」のように、日付を先頭に置く名前が扱いやすくなります。
なお、なぜ着手前でなければならないのか、その期限の根拠は次で説明します。
なぜ着手前に記録が必要なのですか?
計測ツールのデータには保持期間があり、期限を過ぎた分は遡れなくなるためです。Google Search Consoleは最長16か月、Googleアナリティクス4は既定で2か月です。
つまり、記録は「やっておくと便利な作業」ではありません。期限を過ぎると、いくら費用をかけても取り戻せない情報です。
データ保持期間の上限
主な計測ツールの保持期間は次のとおりです。
| ツール | 保持期間 | 備考 |
|---|---|---|
| Google Search Console(検索パフォーマンス) | 最長16か月 | 画面上の操作にもAPIにも適用されます |
| Googleアナリティクス4(無料版) | 既定2か月、上限14か月 | 設定で変更できます |
| Googleアナリティクス360 | 最長50か月 | 有償版の場合です |
Search Consoleで遡れる期間は最長16か月です。比較したい期間がこの範囲から外れると、後から当時の表示回数やクリック数を確認する手立てがありません。
Googleアナリティクス4は、公式ヘルプによるとイベントデータの保持期間を2か月または14か月から選択する形になっています。既定の設定のままでは、2か月より前のデータが残りません。
出典: Google Search Console ヘルプ「検索パフォーマンス レポート(検索結果)」、Google アナリティクス ヘルプ「データ保持期間」
前年同期と比べたい場合、Search Consoleの16か月という上限は余裕があるように見えます。ところが、リニューアルの検討から公開まで半年かかると、公開の1年後に比べる時点では、着手前の1年分がすでに範囲の外に出ていることがあります。
設定を確認する手順
まず、いまの設定を確認してください。作業は10分ほどで終わります。
- Googleアナリティクス4の管理画面を開き、データ設定からデータ保持の項目を確認します。つまずきやすい点は、この設定の変更に管理者の権限が必要なことです。
- 2か月になっている場合は、14か月に変更します。つまずきやすい点は、変更しても過去に遡って復元はされないことです。変更後に蓄積される分から適用されます。
- Search Consoleで、遡れる最も古い日付を確認します。ここが記録できる範囲の限界になります。
実装者としての注意点です。保持期間を14か月にしても、14か月を超えた比較はできません。年に1回、決まった月にCSVを書き出して保管する運用にしておくと、この上限に縛られなくなります。
リニューアルの予定が無い時期でも、この書き出しは続けてください。次にサイトを触るときの基準値になります。
表示速度については、Googleが公式に基準を示しています。その見方は後述します。
検索とアクセスの実績は何を残しますか?
ページ単位とクエリ単位の表示回数、クリック数、平均掲載順位を、期間を揃えて書き出します。期間が揃っていない数値は、公開後の比較に使えません。
どちらも、集計し直せるCSVの形で残してください。画面の写真は、後から期間を変えて見直すことができません。
Search Consoleから出すもの
Google Search Consoleの検索パフォーマンスレポートで確認できるのは、クリック数、表示回数、CTR、平均掲載順位の4つの指標です。CTRはクリック数を表示回数で割った値、平均掲載順位は検索結果における掲載順位の平均です。
出典: Google Search Console ヘルプ「検索パフォーマンス レポート」
書き出すのは次の2種類です。
| 種類 | 何が分かるか | 使いどころ |
|---|---|---|
| ページ別 | どのページが表示されクリックされているか | URLが変わるページの前後比較 |
| クエリ別 | どの検索語で表示されているか | リニューアル後に失った検索語の特定 |
特にクエリ別は、公開後に順位が落ちた原因を絞り込む唯一の手がかりになります。ページ別だけでは、どの検索語を失ったのかが分かりません。
Googleアナリティクスから出すもの
Googleアナリティクス4からは、次を書き出します。
- ページ別のセッション数と閲覧数を、期間を指定して書き出します。所要時間の目安は20分です。
- 流入元の内訳(検索、直接、参照、SNS)を書き出します。つまずきやすい点は、参照元の分類の定義がツールごとに違うことです。同じツールで前後を比べてください。
- 問い合わせや資料請求のページへの到達数を書き出します。つまずきやすい点は、計測の設定自体が入っていない場合があることです。
実装者としての注意点です。リニューアルでは計測タグの入れ替えが発生します。旧サイトの最終日と新サイトの初日の間で、タグの設定が変わっていないかを必ず確認してください。設定が変われば、数値の増減はサイトの良し悪しではなく計測の違いになります。
比較のための期間の決め方
期間は、次の2本を基本にします。
- 直近12か月: 季節の変動を含んだ全体像
- 前年の同じ期間: 同じ季節どうしの比較
リニューアルの公開月をまたぐ比較は避けてください。移行の前後は順位が一時的に動くため、公開の翌月からを比較の対象にするほうが実態に近くなります。
表示速度についても同じ考え方で記録します。その基準は次で説明します。
表示速度はどの基準で記録しますか?
Core Web Vitalsの3指標を、公式のしきい値と同じ見方で記録します。平均値ではなく75パーセンタイルで残してください。
見方を揃えないと、公開後に「速くなった」と言えるかどうかの判断ができません。基準はGoogleが公式に示しています。
3指標の合格基準
良好と判定される基準は次のとおりです。
| 指標 | 内容 | 良好の基準 |
|---|---|---|
| LCP(Largest Contentful Paint) | 最も大きな要素が表示されるまでの時間 | 2.5秒以内 |
| INP(Interaction to Next Paint) | 操作してから画面が反応するまでの時間 | 200ミリ秒以下 |
| CLS(Cumulative Layout Shift) | 表示中にレイアウトがずれる量 | 0.1以下 |
判定は、実際の利用者のデータの75パーセンタイルで行われます。平均値ではありません。利用者の4分の3が良好の基準を満たして初めて、そのページは良好と判定されます。
出典: Google「Web Vitals」および「How the Core Web Vitals metrics thresholds were defined」(web.dev)
記録するときも、この75パーセンタイルの値をそのまま残してください。平均値で残すと、公開後の数値と比べられなくなります。
記録の粒度と対象ページ
全ページを記録する必要はありません。次の手順で対象を絞ります。
- Search Consoleの検索パフォーマンスから、表示回数の多い順に上位20ページを選びます。所要時間の目安は20分です。
- そこに、問い合わせページと料金ページを加えます。つまずきやすい点は、表示回数が少なくても事業上は重要なページがあることです。
- 選んだページごとに、3指標の75パーセンタイル値を記録します。つまずきやすい点は、データが不足しているページでは実利用者の値が表示されないことです。その場合は、測定ツールの試験値を、試験値と明記したうえで残してください。
- パソコンと携帯端末で値が違うため、両方を分けて記録します。
実装者としての注意点です。リニューアルでは画像の扱いとフォントの読み込み方が変わるため、LCPとCLSは大きく動きます。着手前の値を残していないと、変わった原因が新しい設計なのか個別の実装なのかを切り分けられません。
なお、社内でリニューアルの必要性を説明する場面では、公的統計も根拠になります。総務省「令和6年 通信利用動向調査報告書(企業編)」によると、日本企業全体のホームページ開設率は9割前後で推移し、大企業ではほぼ100%に達する一方、従業者数が少ない企業ほど開設率が低い傾向が続いています。
出典: 総務省「令和6年 通信利用動向調査報告書(企業編)」
開設していることが当たり前になった以上、差が付くのは内容の鮮度と機能です。現状の数値を記録することは、その差を自社で把握する最初の作業にあたります。