納期が延びる原因は、発注者側のどこにあるのか
止まりやすいのは3か所です。原稿の確定、写真の手配、社内の確認。制作側の作業量より、この3か所の待ち時間のほうが長くなります。
制作の工程のうち、発注者が止める3か所
制作の流れを、誰の手番かで分けると次のようになります。
| 工程 | 手番 | 止まりやすさ |
|---|---|---|
| 要件のヒアリング | 双方 | 低い |
| 設計・ワイヤーフレーム | 制作側 | 低い |
| 原稿の作成と確定 | 発注者 | 高い |
| 写真と図版の手配 | 発注者 | 高い |
| デザイン制作 | 制作側 | 低い |
| 社内の確認と修正指示 | 発注者 | 高い |
| 実装・テスト | 制作側 | 低い |
| 公開 | 双方 | 低い |
制作側の工程は、作業量から日数を見積もれます。一方で発注者側の3つは、他の業務の合間に進むため日数が読めません。ここが納期の振れ幅を生みます。
待ち時間が積み上がる仕組み
止まるのは1か所ではありません。原稿が遅れるとデザインが始まらず、デザインが遅れると確認も後ろにずれます。前の遅れが後ろの工程に積み上がる形です。
さらに、待ち時間には別の副作用があります。
- 制作側の担当者が他の案件に入り、戻ってくるまでに間が空く
- 時間が経つことで当初の方針が曖昧になり、議論が蒸し返される
- 決裁者の関心が薄れ、確認がさらに遅くなる
つまずきやすい点は、「少し遅れるだけ」と考えてしまうことです。1週間の遅れが、次の工程の再調整で2週間になることは珍しくありません。
対策は単純です。3か所のうち、原稿と写真は着手の前に準備を始めてください。社内の確認は、着手前に確認者と回数を決めておきます。次章から、この3つを順に見ていきます。
着手前に、原稿はどこまで用意しておけばよいのか
用意するのは完成原稿ではありません。ページごとに何を伝えるかを書いた下書きです。文章の仕上げは制作側と進められますが、伝える内容は自社にしか決められません。
ページ単位で用意するものの一覧
1ページにつき、次の4つを箇条書きで書き出してください。
| 項目 | 書く内容 | 分量の目安 |
|---|---|---|
| このページで伝えたいこと | 読んだ人に何を知ってほしいか | 1行 |
| 伝える材料 | 数字、実績、特徴、他社との違い | 3行から5行 |
| 読んだ人にしてほしい行動 | 問い合わせ、資料請求、電話 | 1行 |
| 載せたくないこと | 表に出せない情報や、書き方に注意が要る点 | あれば |
この4つが揃っていれば、制作側は文章を組み立てられます。逆に、この4つが空欄のまま「良い感じに書いてください」と頼むと、出てきた文章に違和感が残り、修正が何度も往復します。
会社案内やパンフレットがある場合は、それを渡すだけでも材料になります。ただし、紙の資料をそのままWebに載せると読みにくくなるため、どの部分を使うかは指定してください。
完成原稿まで求められない理由
制作側が完成原稿を求めない理由は2つあります。
- Webの文章は、見出しと段落の長さがデザインに左右されるため、先に文章だけを固めると収まらない
- 検索されている語や、読み手が探している表現を踏まえて整える工程が別にある
つまり、文章の形に仕上げる作業は制作側の担当です。発注者が用意するのは、その材料になります。所要時間の目安は、1ページあたり20分から30分です。
つまずきやすい点: 全ページ分を一度に書こうとして止まる
最も多いのは、全ページ分を書き上げてから渡そうとして、途中で止まるパターンです。10ページなら10ページ分が揃うまで、制作側は待つことになります。
次の順序で、できたものから渡してください。
- トップページと、問い合わせにつながる主要な1ページ (所要時間の目安: 60分)。この2枚があれば、デザインの方向性を決められます。
- サービスや商品の紹介ページ (所要時間の目安: 1ページあたり30分)。書ける人が複数いるなら分担します。
- 会社概要や採用など、定型的なページ (所要時間の目安: 1ページあたり15分)。既存の資料から転記できる部分が多く、後回しでも間に合います。
分割して渡すことを、着手前に制作側と合意しておいてください。全部揃ってから、という前提のままだと、分割して渡しても作業が始まらないことがあります。
写真と図版は、いつまでに何枚必要なのか
撮影が必要な写真は、着手前に枚数と被写体を決めてください。撮影は日程の調整が要るため、最も後ろ倒しになりやすい項目です。原稿と違って、その場で書き足すことができません。
自社で用意するものと、制作側に任せるものの分け方
写真は、出どころで3つに分かれます。
| 種類 | 用意する側 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自社の施設、商品、スタッフ | 自社または撮影の依頼 | 現場の都合で日程が決まる |
| 有料のストック写真 | 制作側が選定することが多い | 契約の名義をどちらにするか決める |
| 図やグラフ | 元データは自社、作図は制作側 | 数字の正確さは自社が確認する |
上の行ほど、日程に影響します。スタッフの写真は、本人の了承と当日の出勤が前提になるためです。
撮影を伴う場合の逆算のしかた
撮影日を後から決めると、公開日が動きます。次の順序で逆算してください。
- 必要な写真の一覧を作る (所要時間の目安: 60分)。「工場の外観」「作業風景」「代表の顔写真」というように、被写体と用途をページごとに書き出します。
- 撮影が必要なものと、既存で足りるものに分ける (所要時間の目安: 30分)。既存の写真は、次の項で述べる解像度の確認を行います。
- 撮影日を仮で押さえる (所要時間の目安: 30分)。デザインの確定を待つ必要はありません。被写体が決まっていれば撮れます。
- 撮影から納品までの日数を確認する (所要時間の目安: 15分)。撮影当日に写真が届くわけではありません。選定と補正の期間を見込みます。
つまずきやすい点は、デザインが固まってから撮影しようと考えることです。デザインに合わせた構図が必要な場合を除けば、先に撮っておくほうが全体は早く進みます。
つまずきやすい点: 解像度が足りない写真しかない
既存の写真を使う場合、Webに載せられる大きさがあるかを確認してください。次のような写真は、大きく使うと粗くなります。
- 過去にWebサイトへ掲載するために縮小したもの
- チャットやメールで送信する際に圧縮されたもの
- 印刷物から取り込んだもの
元データが見つからない場合は、撮り直すか、小さく使う前提でデザインしてもらうかの選択になります。どちらにしても、着手前に判明しているほど選択肢が残ります。写真の一覧を作った時点で、元データの所在もあわせて確認してください。
社内の確認は、どう設計すれば止まらないのか
確認の回数と、確認する人を着手前に決めてください。誰が最終判断するかが決まっていないことが、確認が長引く最大の理由です。意見が集まること自体は問題になりません。
確認者と回数を先に決める
決めるのは次の3つです。
| 決めること | 具体的に | 決めておかないと |
|---|---|---|
| 確認者 | 意見を出す人の氏名 | 後から人が増え、方針が振り出しに戻る |
| 決裁者 | 最終的に「これで進める」と言う人 | 意見が並んだまま結論が出ない |
| 回数と期限 | 何回確認し、各回で何日以内に返すか | 返答がないまま日数だけ過ぎる |
制作の一般的な流れでは、確認の機会は3回程度です。ワイヤーフレーム (画面の骨組み)、デザイン案、公開前の最終確認です。各回で何を見るかを決めておくと、後の回で前の話に戻らずに済みます。
決裁者は1人に決めてください。複数いる場合は、意見が割れたときに誰の判断を採るかを先に決めておきます。
確認の依頼文に入れる3つの項目
社内に確認を回すときは、次の3点を書いてください。
- 何を見てほしいか (所要時間の目安: 文面の作成に15分)。「全体の印象」ではなく、「この画面で問い合わせボタンが見つけやすいか」のように具体的に書きます。
- 今回は決めない項目 (つまずきやすい点: 文章の細かい表現に意見が集中し、構成の議論が進まない)。文章の最終調整は後の回で行う、と明記します。
- 返答の期限と、返答がない場合の扱い (所要時間の目安: 5分)。期限までに返答がなければ異議なしとみなす、と先に伝えておきます。
3点目は強く感じられるかもしれませんが、これを書かないと確認の締め切りが機能しません。着手前の打ち合わせで、社内のルールとして合意しておいてください。
つまずきやすい点: 後から決裁者が増える
公開の直前に、それまで関わっていなかった役員や部門長が意見を出す、という事態は珍しくありません。ここで方針が変わると、デザインからやり直しになります。
防ぐ方法は、着手前の段階で一度見てもらうことです。ワイヤーフレームの回に、決裁の可能性がある人全員を入れてください。その時点なら、方針が変わっても手戻りは小さく済みます。
確認の設計は、原稿や写真と違って費用がかかりません。それでいて、納期への影響は最も大きい項目です。次章では、ここまでの分担を提案依頼の段階でどう書いておくかを扱います。