点呼記録簿の電子化は、何から決めますか?
最初に決めるのは、法定の記載事項をすべて満たす入力項目と、記録の保存期間です。この2つが要件の土台になります。
保存期間は法令で決まっているため、社内の都合で短くできません。国土交通省の公式ページによると、点呼の内容は日々点呼記録簿に記録したうえで1年間保存しなければなりません。同ページでは点呼記録簿の記載例がダウンロードできる形で示され、その利用が推奨されています。
出典: 国土交通省「貨物軽自動車運送事業者の皆様へ(点呼記録簿の例)」
御社が外注の相談をする前に決めておくことは、次の3点です。
- 法定の記載事項を満たす入力項目(所要時間の目安: 現行の記録簿との突き合わせで2時間程度)
- 保存期間と、保存期間内の記録を取り出す検索の条件(同: 1時間程度)
- 誰がどの端末で入力するか(同: 営業所の確認を含めて半日程度)
法定の記載事項を入力項目に落とす
いま使っている点呼記録簿の欄を、そのまま入力項目の一覧にします。国土交通省が示す記載例と突き合わせ、欄の抜けが無いかを確認します。
つまずきやすい点は、御社が独自に追加している欄です。法定の記載事項に含まれない欄も、運用上必要であれば残します。逆に、使っていない欄は入力項目から外し、入力の手間を減らします。
保存期間と検索の条件を決める
保存期間は1年が下限です。それより長く保存するかどうかは御社の判断になります。監査や労務の確認で過去を遡ることがあるため、実務では数年分を残す設計が扱いやすくなります。
あわせて、保存した記録をどの条件で取り出すかを決めます。検索の条件は後のセクションで整理します。
誰がどの端末で入力するかを決める
点呼を実施する運行管理者が、その場で入力する前提にします。事務所で後からまとめて入力する運用にすると、転記の手間が残ります。
つまずきやすい点は、早朝や深夜の点呼です。営業所に据え置きの端末を置くか、運行管理者が持つ端末で入力するかによって、画面の作り方が変わります。
なぜ手書きの点呼記録簿では集計と検索ができないのですか?
手書きの記録はデータとして取り出せないため、拘束時間の集計にも監査時の検索にも使えないからです。記録が存在することと、記録を使えることは別の問題です。
運送業に限った話ではなく、業界全体でデジタル化が進んでいない実態があります。国土交通省の資料によると、車両手配、見積書作成、配車、検収業務等の荷主と物流事業者間のやり取りは、電話、FAX、メールでのやり取りが大宗を占め、デジタル化が進んでいないのが実態とされています。同省は、荷主と物流事業者が連携した取組を行っている物流事業者の割合を5割とすることを目標に掲げています。
出典: 国土交通省「中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き」
記録はあるのに集計に使えない状態
点呼記録簿には始業と終業の時刻が書かれています。しかし紙の上の時刻は、足し算をするために人が読み取って別の紙に書き写す必要があります。
拘束時間の上限は1日、1か月、1年の三段階に分かれています。三段階すべての残りを日々把握するには、記録が数値のデータとして入っていることが前提になります。手書きのままでは、月末にまとめて計算する運用しか取れません。
事務所での転記が二重作業になる
運行管理者が点呼の場で紙に書き、事務所で誰かが表計算ソフトに打ち直す流れが一般的です。同じ情報を2回書くため、工数が2倍になるだけでなく、読み取り違いによる誤りも入ります。
つまずきやすい点は、転記のタイミングです。月末にまとめて転記する運用では、上限を超えていたことが月末に判明します。その時点では乗務の割り当てをやり直せません。
監査時に該当日を探せない
監査では、特定の日の特定の乗務員の記録を求められます。紙の綴りから該当日を探す作業は、保管の仕方と担当者の記憶に依存します。
保存期間が1年と決まっているため、綴りの量も1年分あります。担当者が不在のときに同じ手順で探せるかどうかも、実務上の問題になります。検索の設計は後のセクションで整理します。
拘束時間の集計には何を持たせる必要がありますか?
始業と終業の時刻、休息期間、運転時間を、日付と乗務員で紐づけて持たせます。集計の単位が1日、1か月、1年の三段階あるためです。
改善基準告示の上限を集計の基準にする
トラック運転者の改善基準告示は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件」(令和4年厚生労働省告示第367号)により2022年12月23日に改正され、2024年4月1日から適用されています。集計の基準になる上限は次のとおりです。
| 単位 | 上限 |
|---|---|
| 1年の拘束時間 | 原則3,300時間以内 |
| 1か月の拘束時間 | 284時間 |
| 1日の拘束時間 | 原則13時間、延長する場合も最大15時間 |
| 1日の拘束時間の例外 | 宿泊を伴う長距離貨物運送は1週につき2回まで16時間 |
| 1日の運転時間 | 2日を平均して9時間以内 |
| 休息期間 | 勤務終了から次の勤務開始まで11時間以上が基本 |
1年の上限は、改正前の3,516時間から216時間短くなった計算です。
出典: 国土交通省近畿運輸局「トラック運転者の改善基準告示 ー2024年4月適用ー 解説」
この表がそのまま判定のルールになります。システムに持たせるのは記録だけではなく、この上限と比べる仕組みです。
1日・1か月・1年の三段階で持つ
集計は、日々の記録を積み上げて三段階で出せる形にします。1日分の拘束時間を確定させたうえで、月の累計と年の累計を同じデータから計算します。
つまずきやすい点は、日をまたぐ運行です。深夜に始業して翌日に終業する乗務は、どちらの日の拘束時間に含めるかを決めておかないと、日ごとの数字が合いません。改善基準告示の考え方に沿った起算のルールを、要件として明記してください。
上限に近づいた時点で知らせる
月末に超過が判明しても、乗務の割り当てをやり直せません。月の累計が上限に近づいた時点で運行管理者に知らせる仕組みを、要件に入れることをおすすめします。
知らせる基準は御社で決めます。たとえば月の拘束時間が260時間を超えた時点で一覧に表示する、といった形です。この基準は法令ではなく運用の設定なので、後から変更できるようにしておきます。
点呼記録簿に持たせる項目は何ですか?
点呼の種別、実施日時、実施者、対象の乗務員、車両、酒気帯びと疾病疲労の確認結果、指示事項が必要です。項目の並びは、国土交通省が示す点呼記録簿の記載例と突き合わせて確定させてください。
| 項目 | 持たせ方 |
|---|---|
| 点呼の種別 | 選択式(乗務前、乗務後、中間) |
| 実施日時 | 日時。入力時刻の自動記録と手入力のどちらにするか決める |
| 実施者 | 運行管理者マスタから選択 |
| 乗務員 | 乗務員マスタから選択 |
| 車両 | 車両マスタから選択 |
| 酒気帯びの確認結果 | 選択式。測定値を持たせるかは運用で決める |
| 疾病、疲労等の確認結果 | 選択式 |
| 指示事項 | 選択式と自由記述を分ける |
法定の記載事項は制度の改正で変わることがあります。要件を確定させる前に、国土交通省の公表資料で現行の記載事項を確認してください。
確認結果は選択式にする
酒気帯びや疾病、疲労等の確認結果は選択式にします。自由記述にすると「なし」「無」「異常なし」が混ざり、後から該当する記録だけを絞り込めません。
つまずきやすい点は、測定機器の値をどう持つかです。数値を記録する運用にする場合は、数値型の項目を別に用意します。確認結果の選択肢と測定値を1つの欄に混ぜると、どちらの用途にも使えなくなります。
指示事項の記録の持ち方
指示事項は、よく使う内容を選択肢にして、それ以外を自由記述に回します。入力の手間が減るだけでなく、どの指示を何件出したかを後から数えられます。
選択肢は運用しながら増やせる形にしておきます。自由記述に同じ内容が繰り返し現れたら、選択肢に加えます。
点呼の種別で入力項目を分ける
乗務前、乗務後、中間の点呼では、確認する内容が異なります。種別を選んだ時点で、必要な項目だけが表示される画面にします。
すべての項目を1つの画面に並べると、その点呼では不要な欄が残り、入力漏れなのか対象外なのか区別できません。種別ごとに必須の項目を決め、未入力のまま登録できないようにしておくと、記録の抜けを防げます。