技術2026.09.28·8 min read·Nortiq Labs

システム開発の再委託|契約で確認する4項目

再委託があるかどうかは、どう確認しますか?

提案書の体制図と見積書の内訳で、作業を担当する会社名と人数を確認します。自社名以外が出てこない場合は、口頭で再委託の有無を質問します。

確認の手順は次の3つです。

  1. 体制図で担当会社を確認する(所要時間の目安: 10分程度)
  2. 見積書の内訳から人員の所属を読む(同: 20分程度)
  3. 書面で答えが出ない点を質問する(同: 打ち合わせ内で5分)

体制図で担当会社を確認する

体制図に会社名が入っているかを見ます。役割名と氏名だけが並び、所属が書かれていない図は、再委託の有無が読み取れません。

つまずきやすい点は、体制図に元請の社名だけが書かれている場合です。社名が1つでも、常駐や派遣の形で他社の人員が入っていることがあります。図の記載だけで判断せず、次の見積書と合わせて読みます。

見積書の内訳から人員の所属を読む

見積書が一式の金額だけで出ている場合は、工程別と役割別の内訳を依頼します。内訳に単価の異なる区分が並んでいれば、複数の調達元がある可能性があります。

単価の違いは経験年数の違いでも生じるため、これも確定の材料にはなりません。判断材料が揃わない点は、そのまま質問に回します。

質問の仕方を決めておく

「再委託はありますか」と聞くと、予定が無いという答えで終わることがあります。次の3点を分けて聞くと、曖昧さが残りません。

  • 現時点で再委託の予定があるか
  • 開発の途中で再委託する可能性があるか
  • 再委託する場合、事前に当社へ知らせるか

3つ目の答えが要件そのものになります。契約に書く内容は後のセクションで整理します。

なぜシステム開発では再委託が起きるのですか?

情報サービス産業が多重下請構造を特徴とする産業構造であり、取引慣行の適正化が長く課題とされてきたためです。個別の会社の事情ではなく、業界の成り立ちに由来します。

産業構造としての背景

情報サービスおよびソフトウェア産業は、多重下請構造を特徴とする産業構造であり、下請取引を含む取引慣行の適正化が課題とされてきました。平成19年6月に「情報サービス・ソフトウェア産業における下請ガイドライン」が策定され、その後も見直しや改訂が実施されています。経済産業省は平成28年度に「情報サービス・ソフトウェア産業における下請取引等に関する実態調査」を実施しています。

出典: 経済産業省委託事業「平成28年度取引条件改善事業(情報サービス・ソフトウェア産業における下請取引等に関する実態調査)調査報告書」

10年以上にわたって国が実態調査とガイドラインの見直しを続けている領域です。御社の発注先だけを疑う話ではなく、確認そのものを手順に組み込む前提で考えます。

再委託そのものは違法ではない

再委託は、契約で禁じられていなければ違法ではありません。特定の技術を持つ会社に一部を任せることで、品質と納期の両方が良くなる場合もあります。

問題になるのは、発注側が知らないまま体制が変わり、次の3つが曖昧になることです。

  • 仕様の決定を誰に伝えれば全体に反映されるのか
  • 不具合が出たときに誰が直す責任を持つのか
  • 秘密保持や納品物の権利が再委託先にも及んでいるのか

つまり、禁止すべきかどうかではなく、この3点が契約で押さえられているかが判断の軸になります。契約に書く項目は次のセクションで整理します。

再委託について契約に書くことは何ですか?

事前承諾の要否、再委託できる範囲、再委託先の行為に対する責任、秘密保持の承継の4点です。この4点が揃っていれば、体制が変わっても確認の手がかりが残ります。

項目 契約に書く内容
事前承諾 再委託する場合は事前に書面で承諾を得ること
範囲 再委託してよい工程と、認めない工程
責任 再委託先の行為について元請が責任を負うこと
秘密保持 再委託先にも同等の義務を負わせること

ひな型は公的機関が公開しています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、情報システム開発委託契約のひな型として「情報システム・モデル取引・契約書」第二版を2020年12月22日に公開しました。第二版の改訂論点には、プロジェクトマネジメント義務と協力義務、およびシステム開発における複数契約の関係が含まれます。開発が複数社に分かれる場合の責任の所在に関わる論点です。

出典: IPA「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(2020年12月22日公開)

事前承諾を要するかを決める

事前承諾を必須にするか、事後の通知で足りるとするかを決めます。必須にすると体制変更のたびに手続きが発生するため、工程によって分ける方法が現実的です。

つまずきやすい点は、承諾の求め方を書かないまま「事前承諾を要する」と書く場合です。誰に、いつまでに、何を伝えるかを書かないと、口頭の報告で済まされます。

責任の所在を元請に集める

再委託先の作業に起因する不具合も、元請が責任を負うと明記します。発注側が再委託先へ直接請求できる契約にはならないため、責任は元請に集めるのが基本です。

この整理をしておくと、不具合が出たときの窓口が1つに保たれます。体制の確認方法は後のセクションで述べます。

秘密保持と個人情報の扱いを承継させる

秘密保持の義務を再委託先にも同等に負わせる条項を入れます。元請との契約だけで秘密保持を結んでいても、再委託先に同じ内容が承継されていなければ実質的に守られません。

個人情報を扱う場合の委託先の監督については、別途整理が必要な論点です。詳しくは個人情報の委託に関する記事を参照してください。

2026年1月施行の取適法で何が変わりましたか?

適用対象の判断基準に従業員数が加わり、一方的な代金決定や手形払い等が禁止されました。委託の一部を別会社へ出す取引も、従来と同じ基準では判断できません。

下請代金支払遅延等防止法および下請中小企業振興法の一部を改正する法律は、令和7年5月16日に成立し、同月23日に公布されました。法律名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称: 中小受託取引適正化法、通称: 取適法)に変わり、施行日は令和8年(2026年)1月1日です。

出典: 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」

適用対象の判断基準の変更

従来の下請法は、発注者と受注者の資本金規模で適用対象が限定されていました。取適法では、従来の資本金基準に加えて従業員数による基準が新たに追加されます。

公正取引委員会は、適用の対象かどうかを「資本金の額、従業員数及び委託内容」で判断するとしており、該当性を確認する診断ツールを用意しています。御社が委託する取引が対象になるかは、この診断で確認してください。

禁止される行為

取適法で禁止される主な行為は次のとおりです。

禁止される行為 内容
一方的な代金決定 協議に応じない、必要な説明を行わないなどして価格を一方的に決めること
手形払い等 手形払い、および電子記録債権やファクタリングのうち支払期日までに代金に相当する金銭を得ることが困難なもの
振込手数料の負担 振込手数料を中小受託事業者に負担させること

出典: 中小企業庁 ミラサポplus「【2026年1月1日施行】受注者を守る法!手形払い禁止など『取適法』がもたらす変化」

自社が委託事業者になる場合

再委託の話は、御社自身が委託する側の立場でも関係します。開発会社に業務を委託する取引が対象に該当すれば、御社が委託事業者として上記の義務を負います。

つまずきやすい点は、資本金だけで対象外と判断してしまうことです。従業員数が基準に加わったため、以前の判断をそのまま使えません。違反行為への指導や助言の権限は、公正取引委員会と中小企業庁に加えて事業所管省庁の主務大臣にも付与されます。

なお、書面による明示の具体的な記載事項と支払期日の日数基準については、公正取引委員会の規則本文で確認してください。

納品物の権利は再委託先が作った部分でも自社に帰属しますか?

契約で権利の帰属を定めていれば帰属させられますが、元請と再委託先の間の契約にも同じ内容が承継されている必要があります。御社と元請の契約だけでは、再委託先が書いたコードの権利は届きません。

権利帰属の条項が連鎖しているかを確認する

確認するのは、条項があるかどうかではなく、条項が連鎖しているかどうかです。御社と元請の契約に権利帰属を書いても、元請と再委託先の契約に同じ定めが無ければ、そこで連鎖が切れます。

元請に対して、再委託先との契約に権利帰属と秘密保持の条項を承継させることを求めます。再委託先との契約書そのものの開示は難しい場合が多いため、承継させる義務を御社との契約に書いておく方法が現実的です。

つまずきやすい点は、納品後に気づくことです。改修を別の会社に頼む段階で、コードの利用に元の再委託先の同意が必要だと判明すると、選択肢が狭まります。権利の帰属そのものの決め方は、ソースコードの著作権に関する記事で扱っています。

公開されているモデル契約書を土台にする

契約の条文を一から考える必要はありません。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している「情報システム・モデル取引・契約書」を土台にできます。

第二版は2020年12月22日に公開されており、第一版が2007年に公表されてからの状況変化を反映したものです。改訂論点にはシステム開発における複数契約の関係が含まれ、開発が複数社に分かれる場合の責任の所在に関わります。

出典: IPA「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(2020年12月22日公開)

御社の取引に合うように条項を調整する作業は必要ですが、論点の抜けを防ぐ確認表として使えます。公的機関が公開しているひな型を土台にすることで、こちらの提示する条項が特異なものではないという説明もしやすくなります。

再委託が入る場合の体制はどう確認しますか?

窓口を1社に固定し、誰が仕様の決定に責任を持つかを書面で確認します。窓口が複数になると、決めたことが伝わらない箇所が生じます。

窓口と決定権者を1社に固定する

御社からの連絡先は元請の1名に固定します。再委託先の担当者と直接やり取りを始めると、元請が把握していない決定が生まれ、後から仕様の食い違いが出ます。

書面で確認するのは次の3点です。

  1. 御社からの連絡を受ける窓口の氏名と所属
  2. 仕様の変更を承認する権限を持つ人
  3. 窓口が不在のときの代理の担当者

3つ目を決めておかないと、休暇や退職のタイミングで確認が止まります。

進捗の報告経路を決める

進捗の報告は、再委託先の作業分も元請がまとめて報告する形にします。報告の粒度と頻度を先に決めておくと、遅れの兆候が早く見えます。

再委託先の作業分が「進行中」のまま何週も動かない場合は、元請が内容を把握できていない可能性があります。工程ごとの完了の定義を決めておくと、この状態を見つけやすくなります。

実装者として見てきたつまずき

実装の側から見て、再委託が入る案件で最も多いのは、仕様の質問が戻ってこない状態です。実装中の細かい判断は、設計書に書かれていない箇所で必ず発生します。

その質問が元請を経由するたびに時間がかかると、実装側は自分の判断で進めます。その判断が御社の想定と違っていた場合、気づくのは検収の段階です。質問への回答期限を決め、回答が必要な事項を一覧で管理する運用にしておくと、この後戻りを減らせます。

もう1点は、開発環境とテストデータの扱いです。再委託先が御社のデータをどこに置いて作業するかは、契約の秘密保持とは別に確認が必要です。作業する環境の場所と、作業終了後のデータの消去について、書面で確認してください。

再委託の確認は、いつ何を聞けばよいですか?

提案を受けた時点、契約を結ぶ前、開発が始まった後の3回に分けて確認します。1回で全部を聞こうとすると、まだ決まっていない事項への回答を求めることになります。

時点 確認すること
提案時 体制図の会社名、再委託の予定の有無
契約前 事前承諾の要否、範囲、責任、秘密保持と権利の承継
開発中 体制の変更、窓口の交代、作業環境の場所

提案時に聞くこと

提案の段階では、体制図に書かれた会社名と、再委託の予定があるかを聞きます。この時点で明確に答えられる会社は、体制の管理ができていると判断できます。

逆に、予定が決まっていないという回答も自然です。重要なのは、決まったときに知らせる意思があるかどうかです。

契約前に文書で残すこと

契約前に、前述の4項目(事前承諾、範囲、責任、秘密保持の承継)を契約書の条項として確定させます。口頭での合意は残らないため、必ず文書にします。

つまずきやすい点は、契約書の雛形が元請から提示され、そこに再委託の条項が無い場合です。条項が無いことは再委託を禁止する意味にはならないため、追記を依頼してください。追記の根拠として、公的機関が公開しているモデル契約書を示す方法が使えます。

開発中に変わった場合の扱い

開発中に体制が変わることはあります。そのときに事前承諾の手続きが実際に機能するかが、契約の書き方の答え合わせになります。

変更の連絡が事後になった場合は、その時点で経緯を記録に残し、以降の手続きを確認します。契約違反を追及するかどうかとは別に、記録が残っていることが次の取引の判断材料になります。

再委託の確認を含めた発注の準備を支援します

再委託の確認は、契約書の条項と体制の確認を同時に見る作業です。社内に判断できる人がいない状態で条項を読むのは負担が大きく、抜けが出やすい部分でもあります。

株式会社ノーティックラボは、代表がAIエンジニアとして自ら実装しており、発注側の立場で確認すべき点を実装の経験から具体的にお伝えできます。発注の準備段階から相談していただけます。

まず御社の状況を整理したい場合は、無料診断をご利用ください。発注の進め方はDXガイドブックでもまとめています。

よくあるご質問

この記事に関して多い質問と回答をまとめます。

再委託を一律で禁止したほうが安全ですか?

安全ではありますが、選べる会社が狭まります。特定の技術を持つ会社に一部を任せることで品質と納期が良くなる場合もあるため、工程で分ける方法をおすすめします。

たとえば、設計と全体のとりまとめは元請が行い、定型的な実装や試験は再委託を認めるという分け方です。認めない工程を明示するほうが、一律の禁止より運用しやすくなります。

再委託先の会社名を教えてもらえない場合はどうすればよいですか?

守秘義務を理由に会社名を出せないことはあります。その場合は、会社名の代わりに次の3点を書面で確認してください。

  • 再委託する工程の範囲
  • 秘密保持と権利帰属の条項を承継させていること
  • 再委託先の作業について元請が責任を負うこと

この3点が押さえられていれば、会社名が分からなくても確認の目的は果たせます。

契約後に再委託が決まった場合、契約を結び直す必要はありますか?

契約に事前承諾の条項があれば、結び直しは不要です。承諾の手続きに沿って、承諾の依頼と回答を書面で残します。

条項が無い場合は、覚書として再委託に関する取り決めを追加する方法があります。契約本体を作り直すより手続きが軽く済みます。

自社が発注側でも取適法の委託事業者にあたることはありますか?

あります。御社が開発会社に業務を委託する取引が適用対象に該当すれば、御社が委託事業者として義務を負います。

適用の対象かどうかは資本金の額、従業員数及び委託内容で判断されます。従業員数が基準に加わったため、資本金だけで対象外と判断することはできません。公正取引委員会が該当性を確認する診断ツールを用意しています。

オフショア開発に出される場合、追加で確認することはありますか?

作業する国と、データが置かれる場所を確認してください。個人情報を含むデータを国外で扱う場合は、国内の再委託とは別の検討が必要になります。

あわせて、時差による質問への回答の遅れも見込んでください。前述のとおり、回答が滞ると実装側の判断で進むため、回答期限を決めておく必要があります。

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監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

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