技術2026.09.24·8 min read·Nortiq Labs

システム開発の外注|ソースコード著作権の決め方

ソースコードの権利は何から決めますか

最初に決めるのは二択です。納品されるソースコードの著作権を譲り受けるのか、使用の許諾を受けるのかです。この選択で契約書の条文が変わります。

どちらが正解かは決まっていません。判断の材料は、将来その仕組みを自社で改修したいかどうかです。

譲渡と許諾のどちらを選ぶか

2つの違いを整理します。

項目 著作権の譲渡 使用の許諾
改修する自由 自社の判断で改修できます 許諾の範囲内に限られます
他社への引き継ぎ 制約が少なくなります 許諾の条件によっては難しくなります
費用 上がる場合があります 抑えやすくなります
外注先の再利用 外注先は同じコードを使えません 外注先は他案件にも使えます

外注先が汎用の部品を持っている場合、全部の譲渡は現実的ではありません。譲渡の対象を新規に書いた部分に限る形もあります。

放っておくと権利はどこにあるか

契約で何も決めない場合、著作権は外注先に残ります。根拠は著作権法の規定です。

著作権法第15条第2項は、プログラムの著作物について定めています。法人等の発意に基づき、その業務に従事する者が職務上作成した場合の規定です。作成時の契約や勤務規則に別段の定めがない限り、その法人等が著作者となります。

出典: 著作権法 (e-Gov法令検索)

つまり、外注先が雇用する技術者が書いたコードの著作権は、まず外注先の法人に生じます。発注者が費用を負担していても、自動的には移りません。

当社の実装経験では、ここを確認せずに数年が過ぎる例があります。別の会社へ改修を頼む段になって、権利の所在が問題になります。契約の時点で決めておけば済む話です。

つまずきやすい点は、見積書や提案書に「納品物一式」とだけ書かれている場合です。何を納品するかは書かれていても、権利がどう動くかは書かれていません。この2つは別の取り決めです。

なお、本記事は条文と公開資料の整理です。個別の契約については、弁護士に確認してください。

契約書にどう書けば権利が移りますか

著作権を譲り受ける場合は、著作権法第27条および第28条の権利を含むと明記します。この特掲がないと、改変にあたる権利が移らないと解される可能性があります。

条文の名前が並ぶと身構えますが、書き方は定型です。理由を知っておけば、外注先との確認も短く済みます。

特掲が必要な理由

根拠は著作権法第61条第2項です。著作権を譲渡する契約が対象になります。第27条または第28条の権利が譲渡の目的として特掲されていない場合の規定です。これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定されます。

出典: 著作権法 (e-Gov法令検索)

第27条は翻訳権や翻案権などです。第28条は二次的著作物の利用に関する原著作者の権利です。ソフトウェアでいえば、改変して使う場面に関わります。

つまり「著作権を譲渡する」とだけ書いた契約では足りない場合があります。実務では次のように書きます。

  1. 譲渡の対象を特定します。納品物のうちどの部分かを明記します。
  2. 「著作権法第27条及び第28条の権利を含む」と特掲します。
  3. 権利が移る時期を決めます。検収の完了時か、代金の支払い時かを選びます。
  4. 対象から外れるものを列挙します。外注先の既存資産などです。詳しくは後述します。

つまずきやすい点は3です。代金の支払い時と定めた場合、支払いが済むまで権利は移りません。分割払いのときは、どの時点かを明確にしてください。

著作者人格権の扱い

著作者人格権は、著作者の一身に専属します。譲渡できないとされています。

出典: 著作権情報センター (CRIC)「著作者にはどんな権利がある?」

そのため、著作権を譲り受けても著作者人格権は移りません。実務では、行使しない旨を取り決めるかどうかが論点になります。

取り決めの内容は、案件によって変わります。公開の方法や表示の扱いに関わるためです。外注先が個人の技術者の場合は、とくに丁寧な説明が必要になります。

当社の実装経験では、この条項で止まる交渉があります。理由を説明せずに不行使だけを求めると、警戒されやすいためです。改修や再構築の可能性を伝えると、合意しやすくなります。

既存の部品やオープンソースはどう扱いますか

外注先が持つ既存の部品と、第三者のオープンソースは、譲渡の対象から外れるのが通常です。対象外の範囲を一覧で明示してもらいます。

すべてを譲渡させる形は、現実には成立しにくくなります。外注先は過去の蓄積を使って費用を抑えているためです。

外注先の既存資産の切り分け

契約では、次の3つに分けて考えます。

  1. 本件のために新しく書いた部分。譲渡の対象にしやすい範囲です。
  2. 外注先が以前から持っている部品。譲渡ではなく、使用の許諾を受ける形が一般的です。
  3. 第三者が提供するライブラリやサービス。提供元の条件に従います。

2については、許諾の条件を確認してください。確認する項目は次の3つです。

確認する項目 内容
範囲 本件のシステムでのみ使えるのか、他の用途でも使えるのか
期間 期限があるのか、永続なのか
再委託 別の開発会社が改修する際にも使えるのか

つまずきやすい点は再委託です。将来ほかの会社へ保守を移す可能性があるなら、この点を先に確かめてください。使用の許諾が外注先との取引を前提にしている場合、乗り換えが難しくなります。

オープンソースの条件の確認

オープンソースは、利用の条件がライセンスとして定められています。条件は種類によって異なります。表示が必要なもの、改変した部分の公開が必要なものなどがあります。

発注者として確認するのは次の2点です。

  1. 使われているオープンソースの一覧を出してもらう。所要時間の目安は、外注先の作業として数日です。
  2. 自社の使い方が条件に反しないかを確認する。社外に配布する予定がある場合は、とくに確認が必要です。

実装者の視点で補足します。オープンソースは直接指定したものだけではありません。ライブラリが内部で別のライブラリを使っている場合があります。一覧を出すときは、そこまで含めるよう依頼してください。

自社の中だけで使うシステムと、顧客へ配布するシステムでは、条件の重さが変わります。配布の予定がある場合は、設計の段階で伝えておくと手戻りが減ります。

契約書のひな形は何を参照できますか

IPAと経済産業省が公開するモデル取引・契約書を参照できます。通常の開発向けとアジャイル開発向けの版があります。

ゼロから条文を書く必要はありません。公開されたひな形を土台にすれば、論点の抜けを防げます。

モデル契約書の位置づけ

IPAは「情報システム・モデル取引・契約書」を公開しています。ユーザ企業とITベンダの取引の枠組みを示したものです。各工程で双方が負う責任と、契約書のひな形が含まれます。

出典: IPA「情報システム・モデル取引・契約書」

経済産業省も、受託開発と保守運用を対象としたモデル取引・契約書の第一版を公開しています。納品物の著作権をベンダからユーザへ譲渡する場合の考え方が整理されています。挙げられている理由は次のとおりです。

  1. ユーザが開発の費用を負担していること。
  2. ベンダが破綻した際に、利用の許諾が終了する事態を避けること。

出典: 経済産業省「情報システム・モデル取引・契約書 (受託開発 (一部企画を含む)、保守運用) 第一版」

この整理は、交渉の場面で使えます。譲渡を求める理由を自社の都合としてではなく、公開された考え方として示せるためです。

アジャイル開発の場合の違い

IPAは、アジャイル開発版のモデル契約書も公開しています。通常の請負契約とは前提が異なります。

項目 通常の請負を前提とした契約 アジャイル開発版
開発の進め方 要件を固めてから完成を目指します 短い周期で作り、優先順位を見直します
成果物の考え方 完成物を定義して納品します 周期ごとに動くものを確認します
権利の条文 納品の時点を基準に定めやすい 成果が段階的なため、対象と時期の書き方を工夫します

アジャイルの形で進める場合も、権利の条文は必要です。周期ごとに生じる成果物のうち、何がいつ譲渡の対象になるかを決めます。

つまずきやすい点は、開発の方式を途中で変えたときです。契約書が最初の方式のままだと、成果物の定義と実態がずれます。方式を変える場合は、権利と検収の条文も見直してください。

アジャイル契約そのものの注意点は、別の記事で扱っています。

引き渡しの範囲はどこまで決めますか

ソースコードだけでなく、ビルドの手順、設定ファイル、外部サービスの接続情報、設計資料までを納品物として列挙します。権利が移っても、動かす材料がなければ引き継げません。

列挙は契約書の別紙で構いません。大事なのは、あとから追加を頼まなくて済む状態にすることです。

納品物の一覧の作り方

次の順で一覧を作ります。

  1. 動かすために必要なものを挙げます。ソースコード、設定ファイル、データベースの定義などです。
  2. 作り直すために必要なものを挙げます。ビルドの手順書、依存するライブラリの一覧です。
  3. 引き継ぐために必要なものを挙げます。設計資料、画面の一覧、外部サービスの接続先の情報です。
  4. 受け渡しの方法と時期を決めます。所要時間の目安は、社内での確認を含めて1週間です。

つまずきやすい点は3です。外部サービスの契約者が外注先のままになっている例があります。将来の乗り換えを考えると、契約は自社名義にしておくほうが安全です。

実装者の視点で補足します。ソースコードだけを受け取っても、動く環境を再現できない場合があります。必要なのは、環境の構築手順と、動作に必要な設定値の一覧です。この2つは納品物に明記してください。

検収との関係

納品物の一覧は、検収の基準にもなります。何を受け取るかが決まっていないと、確認のしようがないためです。

IPAは「情報システム・モデル取引・契約書 (第二版)」を2020年12月22日に公開しています。検収や契約不適合責任の定め方の参考になります。

出典: IPA「情報システム・モデル取引・契約書 (第二版)」

契約不適合責任についても押さえておきます。民法改正は2020年4月1日に施行されました。改正後、契約不適合責任の通知期限は、契約不適合を知った時から原則1年以内とされています。

出典: IPA デジタル基盤センター「システム開発の健全化に向けて ~情報システム・モデル取引・契約書から読み解く~」

権利の条文と検収の条文は、別々に書かれることが多くなります。ただし実務では連動します。検収の完了を権利が移る時期にする場合は、検収の基準も具体的に定めてください。

検収条件そのものの決め方は、別の記事で扱っています。

交渉でつまずきやすい点はどこですか

つまずくのは2点です。全部を譲渡させようとして費用が上がる点と、譲渡の合意だけで引き渡しの実務を決め忘れる点です。

どちらも、交渉の前に方針を決めておけば避けられます。

費用と権利の関係

外注先にとって、既存の部品は費用を抑える手段です。全部の譲渡を求めると、その部分を書き直す必要が生じます。結果として見積もりが上がります。

現実的な落としどころは次の3つです。

落としどころ 内容 向く場面
新規部分のみ譲渡 本件のために書いた部分だけを譲り受ける 多くの案件で成立しやすい形です
全部譲渡 既存部品を含めて譲り受ける 独自性が事業の中核にある場合
許諾の条件を広げる 譲渡は求めず、再委託と改修を認めてもらう 費用を抑えたい場合

3を選ぶ場合も、条件を文書に残してください。口頭の了解では、担当者が変わったときに確認できません。

つまずきやすい点は、交渉の順序です。金額を決めたあとに権利の話を持ち出すと、追加の費用として扱われます。見積もりの依頼の段階で、権利の希望を伝えてください。

外注先が納得しやすい書き方

外注先が警戒するのは、事業の継続に関わる部分です。次の書き方であれば、合意しやすくなります。

  1. 譲渡の対象を明確に限定します。既存の部品と汎用の仕組みは対象外と書きます。
  2. 外注先が同種の仕事を続けられることを明記します。技術やノウハウの利用を妨げない旨です。
  3. 譲渡の理由を伝えます。将来の改修と保守の継続性という目的を共有します。

当社の実装経験では、2を書くだけで話が進む場面があります。発注者が求めているのは自社のシステムを扱える状態であり、外注先の商売を止めることではないためです。

相手が個人の技術者や小規模な会社の場合は、丁寧に説明してください。契約書の文面だけを送ると、意図が伝わらないまま警戒されます。

契約後に確認することは何ですか

納品されたソースコードが、手元の環境で実際に動くところまで確認します。権利があっても動かせなければ引き継げません。

確認は納品の直後に行ってください。時間が経つほど、外注先に聞ける関係が薄れます。

第三者が引き継げる状態か

確認の手順は次のとおりです。

  1. 受け取ったソースコードを、自社または第三者の環境に置きます。
  2. 手順書のとおりに環境を作ります。所要時間の目安は、規模にもよりますが半日から2日です。
  3. 動作を確認します。主要な画面と処理が動けば十分です。
  4. 詰まった箇所を手順書に追記してもらいます。

つまずきやすい点は2です。開発した本人の環境でしか動かない状態になっている場合があります。手順書に書かれていない設定や、特定の版のソフトに依存している場合です。

実装者の視点で補足します。確認は、開発に関わっていない人が行うほうが確実です。関わった人は、書かれていない前提を無意識に補うためです。社内に適任者がいない場合は、第三者に確認を依頼する方法もあります。

保管と更新の担当

受け取った納品物は、保管の担当を決めてください。決める項目は次の3つです。

項目 決めること
保管の場所 社内のどこに置くか。持ち出しの可否
更新の反映 改修のたびに最新版を受け取る手順
接続情報の管理 外部サービスの認証情報を誰が持つか

更新の反映は忘れられがちです。納品時のソースコードだけを保管していると、その後の改修分が抜けます。保守の契約に、改修後の納品物の引き渡しを含めてください。

ここまで決めておくと、開発会社を変える必要が生じても慌てずに済みます。権利と引き渡しの両方がそろって、初めて引き継げる状態になります。

当社は、既存システムの引き継ぎや再構築のご相談も受けています。いまの契約で何が自社のものになっているか分からない場合は、問い合わせ(/contact)からご連絡ください。契約書と納品物の確認から一緒に整理します。

よくあるご質問

契約の検討中に多い質問をまとめます。条文の読み方で迷いやすい点を選びました。

契約書に著作権の条項がない場合、ソースコードは誰のものですか

外注先に残ります。著作権法第15条第2項により、職務上作成されたプログラムの著作者は、原則としてその法人等になるためです。費用を負担したかどうかは、この判断に影響しません。すでに納品を受けている場合は、追加の覚書で取り決める方法があります。

著作権を譲り受けると費用は上がりますか

上がる場合があります。外注先が既存の部品を使えなくなると、その部分を書き直す必要が生じるためです。新規に書いた部分だけを譲渡の対象にすれば、費用への影響を抑えられます。見積もりの依頼時に希望を伝えてください。

オープンソースが含まれていても問題ありませんか

利用の条件を守っていれば問題ありません。条件はライセンスの種類によって異なります。表示が必要なもの、改変部分の公開が必要なものなどがあります。使われている一覧を外注先に出してもらい、自社の使い方が条件に反しないかを確認してください。

著作者人格権の不行使は必ず入れるべきですか

案件によります。著作者人格権は譲渡できないため、実務では不行使の取り決めを置くかどうかが論点になります。改修や再構築の可能性があるなら、その理由を説明したうえで相談してください。文面だけを送ると警戒されやすくなります。

ソースコードを受け取っても、自社で改修できますか

権利の面と技術の面は別です。権利があっても、環境の構築手順や設定値が不足していると改修できません。納品物にビルドの手順と依存するライブラリの一覧を含め、納品の直後に動作を確認してください。

契約はいつ見直せばよいですか

開発の方式を変えるときと、保守の担当を変えるときです。アジャイルの形に切り替えた場合、成果物の定義と権利の条文がずれます。保守を別の会社に移す場合は、既存部品の許諾が再委託を認めているかを確認してください。

関連リンク

監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

こうした観点をベースに、
貴社の DX を一緒に考えませんか。

ホームページ無料診断

営業日 24時間以内に担当者よりご返信します。

初回相談無料 · 営業日24h以内にご返信