技術2026.09.17·5 min read·Nortiq Labs

システム開発のアジャイル契約、モデル契約書の注意点

アジャイル開発の契約で、まず確認すべきことは何ですか

まず、契約がアジャイル開発版の準委任契約を前提としているか、従来の請負契約かを確認します。

御社が受け取った契約書の種別を確認しないまま進めると、後で認識のずれが生まれやすくなります。

アジャイル開発における契約とは

アジャイル開発とは、要件を固定せず、短い期間で開発と検証を繰り返す開発手法です。

一般的な契約は、成果物を先に定めてから対価を決める請負契約が中心でした。

アジャイル開発では、開発の途中で仕様が変わることを前提とします。そのため、成果物ベースの請負契約とは相性が悪い場合があります。

IPAは2020年3月31日、アジャイル開発を想定したモデル契約書を公開しました。正式名称は「情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)」です(出典: IPA公式サイト)。

ユーザ企業、ベンダ企業、業界団体、法律専門家が参加して取りまとめられたものです。この契約書の位置づけは、次の見出しで詳しく説明します。

請負契約との違いの基本

このモデル契約書の最大の特徴は、準委任契約を前提としている点です。

請負契約では、あらかじめ特定した成果物の完成に対して対価を支払います。準委任契約は、ベンダ企業が専門家として業務を遂行すること自体に対価を支払います。

仕様変更や優先順位の見直しが前提のアジャイル開発では、この違いが重要になります。なぜ準委任契約が向いているのかは、後の見出しで具体的に説明します。

IPAのアジャイル開発版モデル契約書とは、どのようなものですか

IPAが2020年3月31日に公開した、アジャイル開発の外部委託を想定した契約書です。契約条項と補足資料で構成されています(出典: IPA公式サイト)。

ユーザ企業、ベンダ企業、業界団体、法律専門家が参画して取りまとめられました。スクラムを想定したアジャイル開発を外部委託する際の契約条項と、その解説で構成されています。

さらに、契約前チェックリストも含まれています。ユーザ企業と開発ベンダの間で、重要な理解が共有されているかを確認するものです。

IPA公式サイトの契約書一覧では、請負・準委任を前提とした標準的なモデル契約書も別途公開されています。両者の違いを、次の表にまとめます。

項目 アジャイル開発版 第二版(標準版)
公開日 2020年3月31日 2020年12月22日
想定する契約類型 準委任契約が前提 請負・準委任の双方を想定
主な用途 スクラム等のアジャイル開発の外部委託 従来型の開発案件全般

(出典: IPA『情報システム・モデル取引・契約書』一覧)

御社の開発案件がアジャイル型かどうかを確認したうえで、使い分けます。準委任契約が前提となる理由は、次の見出しで説明します。

なぜ準委任契約が前提になるのですか

アジャイル開発は仕様の変更や優先順位の見直しを前提とします。そのため、成果物を固定できる請負契約になじまないからです。

経済産業省の「情報システム・モデル取引・契約書」は、初版が2007年に公開されました。当初から、上流工程では準委任型の契約が採用されています(出典: IPA公式サイト)。

その後IPAが見直しを行い、第二版を公開しました。見直し期間は2019年5月から2020年12月です(出典: IPA公式サイト)。

準委任契約と請負契約の違い

2020年4月1日に改正民法が施行されました。これにより、準委任契約に「成果完成型」が新設されました(出典: 民法第648条の2、e-Gov法令検索)。従来の準委任は「履行割合型」と呼ばれます。

契約類型 対価の対象 契約不適合責任
請負契約 成果物の完成 あり
準委任(成果完成型) 成果物の完成 あり
準委任(履行割合型) 業務の遂行そのもの 適用されない

準委任の成果完成型は、請負と同様に成果物の完成が契約の目的です。請負契約では、注文者は不適合を知った時から1年以内に通知する必要があります。通知しなければ、修補請求や報酬減額請求などができなくなります(出典: 民法第637条)。成果完成型の準委任でも、契約書で同様の通知期限を定めるのが一般的です。

アジャイル開発版のモデル契約書は、このうち履行割合型の準委任を前提としています。具体的にどの条項に注意すべきかは、次の見出しで説明します。

契約書のどの条項に、特に注意すればよいですか

対価の算定方法、契約前チェックリストの実施有無、検収と契約不適合責任の扱いという3点に特に注意します。

具体的な確認ポイントは、次の3つです。

  1. ポイント1 対価の算定方法(所要時間の目安: 契約書確認10分) 準委任契約では、業務の遂行そのものが対価の対象です。成果物の完成を条件とする支払い方になっていないかを確認します。
  2. ポイント2 契約前チェックリストの実施(つまずきやすい点: 省略されがち) ユーザ企業と開発ベンダの間で、アジャイル開発への理解が揃っているかを確認するものです。実施していないベンダには、実施を依頼します。
  3. ポイント3 検収条件と契約不適合責任の通知期限 IPAのモデル契約書では、検収完了の時点を通知期間の起算点にしています。民法の原則と異なる点に注意します。

検収とは、発注者が成果物を確認し、合否を判定する工程です。検収が完了すると、発注者の支払義務が確定します。

IPAは2020年12月22日に「モデル取引・契約書(第二版)」を公開しました(出典: IPA公式サイト)。

改正民法は2020年4月1日に施行されました。民法の原則では、契約不適合責任の通知期限は不適合を知った時から1年以内です(出典: 民法第637条)。

一方、IPAの第二版モデル契約書は、起算点を「検収完了」という客観的な時点に置いています。検収完了から一定期間内の通知に、責任を限定する契約上の規定です(出典: IPA第二版モデル契約書)。

つまり、「知った時」は民法上の原則で、「検収完了時」は契約で定める基準です。御社の契約書がどちらを採り、期間を何か月としているかを確認します。

アジャイル開発では、検収の単位が小さいイテレーションごとになることが多くなります。1回ごとの検収時点と通知期限を、あわせて確認しておくことが重要です。

発注者側が負うリスクは、請負契約とどう変わりますか

準委任契約では、成果物の完成義務がありません。そのため、進捗管理や優先順位の判断を、発注者自身が担う必要があります。

請負契約では、仕様どおりの成果物が完成しなければ、ベンダの責任が問われます。準委任契約(履行割合型)では、この完成保証がありません。

御社が優先順位の決定やレビューに関与しなければ、開発が想定と異なる方向に進む可能性があります。定期的なレビューの頻度を、契約前に取り決めておくことが重要です。

また、予算の上限管理も発注者側の役割になります。準委任契約は稼働に対して対価を支払うため、想定より工数がかかれば費用も増えます。

上限額や、上限を超えそうな場合の報告ルールを、あらかじめ契約に盛り込んでおくと安心です。こうした発注者側の関与を怠ることが、次に説明する失敗につながります。

アジャイル契約でよくある失敗は何ですか

契約前チェックリストを省略してしまうことが、最も多い失敗です。開発ベンダとの前提理解のずれに気づかないまま、契約してしまいます。

このほかにも、次のような失敗がよく見られます。

  1. 準委任契約なのに、請負契約と同じ感覚で「完成」を期待してしまう
  2. イテレーションごとの検収基準を、契約時点で具体的に決めていない
  3. 優先順位の変更ルールを決めておらず、後になって認識の違いが表面化する

いずれも、アジャイル開発の性質を理解しないまま、従来型の契約感覚で進めてしまうことが原因です。契約前に、前述のチェックリストで前提を揃えておくことが、こうした失敗を防ぎます。

自社だけで契約書の妥当性を判断できないときは、どうすればよいですか

契約条項の技術的な妥当性を実装者の視点で確認したい場合は、無料診断を利用することも選択肢になります。

ここまで紹介した確認ポイントで、契約の骨格は判断できます。ただし、契約前チェックリストの具体的な項目は、実際に開発した経験が無いと判断しにくい部分も残ります。開発体制との整合性も、同様です。

御社の情シス担当者が、提示された契約書がアジャイル開発に本当に合っているのか、判断に迷うケースは珍しくありません。そのまま契約すると、進捗管理の負担や、優先順位をめぐる認識の違いが後から表面化することがあります。

株式会社ノーティックラボでは、代表自身が実装者としてアジャイル開発に携わっています。契約書の技術的な妥当性を確認する視点をお伝えできます。第三者の視点で契約書を確認したい場合は、無料診断(/diagnostic)をご利用ください。要件定義の段階からご相談いただくことも可能です。

よくあるご質問

この記事に関して多い質問と回答をまとめます。

アジャイル開発の契約は、必ず準委任契約にしなければいけませんか

IPAのアジャイル開発版モデル契約書は、準委任契約を前提としています。ただし、契約類型は当事者間の合意で決まるため、実務では請負契約でアジャイル的な進め方を試みる例もあります。

IPAのアジャイル開発版モデル契約書は、どこで入手できますか

IPA公式サイトで公開されています。契約条項の解説や、契約前チェックリストなどの補足資料もあわせて確認できます。

請負契約でアジャイル開発を進めるのは、避けたほうがよいですか

成果物を先に固定できない性質上、請負契約とは相性が良くありません。仕様変更が多い開発では、認識のずれが生じやすくなります。

契約前チェックリストとは、具体的に何を確認するものですか

ユーザ企業と開発ベンダの間で、アジャイル開発への理解が揃っているかを確認するものです。プロジェクトの目的や体制についての項目が含まれます。

アジャイル契約でも、検収や契約不適合責任の考え方は必要ですか

必要です。イテレーションごとの検収基準と、契約不適合責任の通知期限を、契約時点で決めておきます。

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監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

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