交付決定後に仕様を変えると、補助の対象から外れますか?
変更の内容と手続きによって変わります。勝手に変えると対象外になる可能性があるため、着手の前に事務局へ確認します。
判断の分かれ目は、補助の対象が「ホームページ一式」ではなく、登録されたITツール単位で決まっている点にあります。
先に確認するのは、変更の前か後かという一点
デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領 (通常枠) では、補助事業の実施が3つの手続きの一連として定義されています。
- ITツールの契約、発注。交付決定後に行うこととされています。
- ITツールの納品、導入。
- ITツール代金の請求、支払い。
公募要領は、1の契約と発注が全ての手続きの中で先立って行われる必要があるとしています。実績報告提出後の確定検査で、1より先に2や3が行われていたことが確認された場合は、補助金の交付が行えず、交付決定の取消しとなる場合があるとされています (出典: 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 (通常枠)」https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf。2026年10月時点。最新は公式サイトで確認してください)。
つまり、変更したい内容が発注の前か後かで扱いが変わります。発注の前に気づいたのであれば、事務局へ相談してから発注します。
実装者の立場から1点補足します。制作の現場では、着手後に機能の過不足が見つかります。このとき担当者は「仕様を調整しただけ」と考えがちですが、補助金の側から見ると導入するITツールの構成が変わった可能性があります。作業を止めて確認する判断が先です。所要時間の目安は、事務局への確認で3営業日から1週間です。
公募要領で確認する箇所
変更の相談の前に、手元で読んでおく箇所を挙げます。
| 確認する箇所 | 読み取る内容 |
|---|---|
| 補助対象経費、補助率及び補助額 | 変更後の構成が補助額の区分に収まるか |
| 補助対象外となる経費 | 変更で追加する費用が対象外に当たらないか |
| 補助事業の実施及び実績報告 | 実施期間に収まるか。期間は交付決定日から6か月間程度とされています |
| 効果報告完了前の辞退について | 導入するITツールを減らす場合の手続き |
出典は同公募要領です (2026年10月時点。最新は公式サイトで確認してください)。
つまずきやすい点は、4つ目です。複数のITツールを導入し、そのうちの一部を解約する場合であっても、実施している補助事業の辞退とみなす場合があるため、辞退の手続きを行う必要があるとされています。構成を減らす変更は、単なる仕様変更として扱えない可能性があります。対象経費の中身は次のセクションで扱います。
そもそも何が対象経費ですか?
補助の対象になるのはソフトウェア購入費と導入関連費で、枠によって補助率と補助額の範囲が決まっています。制作の作業一式がまとめて対象になるわけではありません。
年度で制度の名称と区分が変わっているため、申請した年度の資料で確認します。
対象になるもの
デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領 (通常枠) では、補助対象経費がソフトウェア購入費と導入関連費とされ、補助率と補助額は次のとおりです。
| 区分 | 補助率 | 補助額 |
|---|---|---|
| 1プロセス以上 | 1/2以内 | 5万円から150万円未満 |
| 4プロセス以上 | 1/2以内 | 150万円から450万円以下 |
令和6年10月から令和7年9月までの間で、地域別最低賃金の近傍で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は、補助率が2/3以内となります。150万円から450万円以下の区分では4プロセス以上が必要で、賃上げ目標が必須要件です (出典: 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 (通常枠)」https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf。2026年10月時点。最新は公式サイトで確認してください)。
前年度の区分も参考になります。IT導入補助金2025では、通常枠A類型が補助率1/2以内で補助額5万円から150万円未満、B類型が1/2以内で150万円から450万円以下、インボイス枠 (インボイス対応類型) は小規模事業者で3/4以内とされていました (出典: 中小企業庁「サービス等生産性向上IT導入支援事業 IT導入補助金2025の概要」https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_it_summary.pdf。2026年10月時点の公表資料に基づきます。最新は公式サイトで確認してください)。
対象事業者は中小企業基本法に基づく中小企業者および小規模事業者で、業種ごとに基準が異なります。製造業、建設業、運輸業は資本金3億円以下または従業員数300人以下が目安です (出典: 同概要資料。2026年10月時点)。
対象にならないもの
公募要領は、補助対象外となる経費を列挙しています。変更の場面で関わる項目を挙げます。
- 交付決定前に購入したITツール
- 補助金申請、報告に係る申請代行費
- リース、レンタル契約のITツール (サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)
- 中古品
- 交付申請時において、ITツールの利用金額が定められないもの
- 対外的に無償で提供されているもの
- 交通費、宿泊費
- 公租公課 (消費税)
- 補助事業者の顧客が実質負担する費用がITツール代金に含まれるもの
- その他、事務局が本事業の趣旨、目的から不適当であると判断するもの
出典は同公募要領です (2026年10月時点。最新は公式サイトで確認してください)。
つまずきやすいのは5です。変更で追加する作業を「別途見積もり」として金額を定めないまま進めると、この項目に当たる可能性があります。変更後の金額を先に確定させます。
支払方法にも定めがあります。公募要領は、支払いの事実に関する客観性の担保のため、原則として銀行振込およびクレジットカード1回払いのみとし、その他の方法で支払った場合は補助金の交付を受けることができないとしています (出典: 同公募要領。2026年10月時点)。変更で追加費用が発生した場合も、この支払方法に従います。
ホームページのリニューアルがどこまで対象になるかは次のセクションで扱います。
ホームページのリニューアルはどこまで対象ですか?
ホームページの制作そのものが一律に対象になるわけではありません。登録されたITツールの要件を満たすかどうかで決まります。
補助の対象は登録されたソフトウェアやクラウドサービスであり、制作の作業そのものではない点が出発点です。
対象になりやすい構成
業務の手順に組み込まれる機能を含む構成です。
- 予約の受付と管理を画面上で行う機能
- 受発注や見積もりのやり取りを画面上で行う機能
- 問い合わせや顧客の情報を蓄積し、検索できる機能
- 商品の販売と決済を行う機能
いずれも、サイトを見せるためではなく、業務の作業を置き換えるものです。
公募要領は、業務プロセスと一緒に導入することで更に労働生産性を向上させるものを汎用プロセスと位置づけています。汎用プロセスのみを保有するITツールは単独では交付申請ができず、業務プロセスの区分と組み合わせることで1プロセスとしてカウントされ交付申請が可能となるとされています (出典: 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 (通常枠)」https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf。2026年10月時点。最新は公式サイトで確認してください)。
この構造が、補助額の区分にも関わります。150万円から450万円以下の区分は4プロセス以上が条件とされているため、機能を減らす変更は区分そのものに影響する可能性があります (出典: 同公募要領。2026年10月時点)。
対象から外れやすい構成
情報を見せることだけを目的とした構成です。
- 会社案内、事業内容、沿革などの掲載のみ
- デザインの刷新のみで、業務の手順が変わらないもの
- 記事の掲載のみで、業務の記録が残らないもの
実装者の立場から1点補足します。リニューアルの依頼は「見た目を新しくしたい」から始まることが多く、予約や問い合わせの管理は後から話題に出ます。この順序で進めると、補助の対象になる部分が構成の端に寄り、申請の形になりません。先に業務のどの作業を画面に移すのかを決めると、対象の判断も申請の形も揃います。
なお、ホームページ制作が対象になるかどうかの一般的な説明としては、補助対象が原則として登録されたITツールであり、ホームページ制作そのものはソフトウェアに該当しないため単体では対象外とされる一方、EC機能、予約管理機能、顧客管理機能など業務プロセスに紐づく仕組みをともなう場合はITツールの一部として認められる可能性があるという整理が示されています (出典: IT導入補助金2025およびデジタル化・AI導入補助金の制度解説。2026年10月時点の整理であり、個別の判断は事務局と登録されたIT導入支援事業者にご確認ください)。
対象可否の判断そのものは「IT導入補助金でホームページ制作は対象?補助率・申請方法を解説」でも扱っています。本記事では、交付決定後の変更に話を戻します。手続きの流れは次のセクションです。
変更したい場合の手続きの流れは?
事務局への相談、必要な申請、承認の確認、記録の保存という順に進めます。発注先の作業を止めてから進めるのが基本です。
手続きの名称や様式は年度と枠で変わります。ここで示すのは進め方の順序です。具体的な様式は、申請した年度の公募要領と事務局の案内に従ってください。
手続きの手順
- 発注先の作業を止めます。変更に関わる部分の作業と発注を保留します。所要時間の目安は、連絡だけなら即日です。つまずきやすい点は、作業が進んでから相談すると、契約や発注の日付が動かせなくなることです。
- 変更の内容を1枚に書き出します。変えたい機能、増える費用または減る費用、プロセス数の増減、完了予定日の変化を書きます。所要時間の目安は半日です。
- 登録されたIT導入支援事業者に相談します。ITツールの構成が変わるかどうかを、事業者の側から確認してもらいます。
- 事務局へ問い合わせます。必要な手続きと様式を確認します。所要時間の目安は、回答まで3営業日から1週間です。
- 案内された手続きを行い、承認の有無を確認します。承認が必要な変更で、承認を得ずに進めると補助の対象から外れる可能性があります。
- 作業を再開します。契約と発注の日付が、承認後になっていることを確認します。
公募要領は、ITツールの契約と発注が全ての手続きの中で先立って行われる必要があるとしており、実績報告提出後の確定検査で順序の違いが確認された場合は交付決定の取消しとなる場合があるとしています (出典: 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 (通常枠)」https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf。2026年10月時点。最新は公式サイトで確認してください)。6の確認が必要なのはこのためです。
実施期間にも注意します。補助事業の実施および実績報告の期間は交付決定日から6か月間程度とされており、公募要領は、この期間内に補助事業の実施と実績報告書類の提出が可能か事前に十分確認して申請することを求めています (出典: 同公募要領。2026年10月時点)。変更で完了が遅れる場合は、この期間に収まるかを4の問い合わせで確認します。
証憑の残し方
変更の経緯は、実績報告のときに説明できる形で残します。
| 残すもの | 内容 |
|---|---|
| 変更の記録 | 変更した内容、理由、決めた日付を記載した書面 |
| 事務局と事業者とのやり取り | 問い合わせの内容と回答。メールであれば転送して保管します |
| 変更後の見積書 | 金額と内訳。金額が定まらない記載を残さないこと |
| 契約と発注の証憑 | 契約日と発注日が承認後であることが分かるもの |
| 請求と支払いの証憑 | 請求書と、支払いが完了したことが分かるもの |
公募要領は、請求書や支払いが完了したことが分かる証憑を適切に保管、管理し、事業の実績報告時に提出することを求めています (出典: 同公募要領。2026年10月時点)。
実装者の立場から1点補足します。制作の現場では、変更は打ち合わせの場で決まり、議事録だけが残ります。補助金の実績報告では、どの時点でどの構成に決まったのかを日付で示す必要があります。変更のたびに見積書を差し替えて版を残す運用にすると、報告の作業がそのまま済みます。
相見積もりや発注先の変更については次のセクションで扱います。