サーバ移転の準備は何から始めますか
最初に確かめるのは、いまのドメインとメールをどこで契約しているかです。契約先が分からないまま切替を進めると、メールが止まります。
リニューアルの打ち合わせでは、サイトの話が中心になります。メールは別の契約であることが多く、確認が後回しになりがちです。
契約先を洗い出す
次の4つを一覧にしてください。所要時間の目安は半日です。
| 対象 | 確認すること |
|---|---|
| ドメイン | 登録している事業者名、更新日、管理画面にログインできるか |
| Webサーバ | 契約している事業者名、契約の期間 |
| メール | Webサーバと同じ契約か、別のサービスか |
| 管理用の権限 | Google Search Consoleなどの管理者が誰か |
管理用の権限も見落とせません。Google Search Consoleでは、プロパティに対する役割が所有者とユーザの2種類に分かれています。
出典: Google「所有者、ユーザー、権限の管理」Search Consoleヘルプ
つまずきやすい点は、管理画面のログイン情報です。前の担当者しか知らない場合や、制作会社の名義で契約されている場合があります。移転の日程を決める前に、ログインできるかどうかを確かめてください。
ドメインとサーバとメールの関係
用語を整理します。ドメインとは、nortiqlab.comのような住所にあたる文字列です。サーバとは、サイトのデータを置く場所です。メールも、このドメインを使って届きます。
3つの関係は次のとおりです。
- ドメインは、事業者に登録して維持します。
- サイトのデータは、Webサーバに置きます。
- メールは、メールサーバが受け取ります。
- どのサーバに届けるかは、ドメインの設定で決まります。
4が今回の要点です。サイトとメールが別のサーバにあっても、宛先を決める設定は1か所にまとまっています。この設定を書き換えるときに、メールの行き先も一緒に変わります。
当社の実装経験では、メールの契約先が分からないまま移転の日を決めてしまう例が多くあります。まず契約先の洗い出しを終えてから、日程を相談してください。
なぜサーバ移転でメールが止まるのですか
サイトとメールの宛先を決める設定が、同じ場所でまとめて管理されているためです。サイトだけを移すつもりでも、設定を書き換えるとメールの宛先も変わります。
止まる理由が分かっていれば、防ぎ方も決まります。原因は3つの型に分かれます。
宛先を決める設定の仕組み
宛先を決める仕組みは、DNSと呼ばれます。DNSとは、ドメインと接続先を結びつける名簿のような仕組みです。
名簿には複数の行があります。主なものは次の2つです。
| 設定の種類 | 決めるもの |
|---|---|
| サイト向けの設定 | ドメインにアクセスしたとき、どのWebサーバを表示するか |
| メール向けの設定 | そのドメイン宛のメールを、どのメールサーバに届けるか |
この2つは別の行です。理屈のうえでは、サイトだけを移すこともできます。ただし実務では、移転のときに名簿ごと別の場所へ移す作業が発生します。そのときにメール向けの行が抜けると、メールが届かなくなります。
もうひとつ知っておくことがあります。名簿の内容は、世界中の機器に一定時間保存されます。変更してもすぐには反映されません。反映には時間差があると理解してください。
止まり方の3つの型
実際に起きる止まり方は、次の3つです。
- 宛先の設定が抜ける。新しい名簿にメール向けの行を書き忘れた場合です。送られたメールが届かなくなります。
- 受信の準備ができていない。宛先は新しいサーバに向いたが、そのサーバにメールの箱がない場合です。
- 旧サーバを先に解約する。宛先の切替より前に契約を終えると、その時点から受け取れません。
つまずきやすい点は2です。宛先の切替は数分で終わりますが、メールの箱を作る作業は前日までに済ませておく必要があります。
実装者の視点で補足します。反映の時間差があるため、切替の直後はメールが新旧どちらのサーバにも届く時間帯が生まれます。この間に届いた分を取りこぼさないよう、旧サーバも数日は残しておいてください。
具体的な手順は次に整理します。
メールを止めない手順はどうなりますか
移転先でメールの受信を先に用意し、動作を確かめてから宛先の設定を切り替えます。逆の順序にすると、切替の直後に届かない時間が生まれます。
日程は、業務の少ない曜日に置いてください。金曜の夕方は避けます。問題が起きたときに、対応できる時間が残らないためです。
切替までの手順
準備は次の順で進めます。
- 移転先のメールサービスを契約します。所要時間の目安は、申し込みから利用開始まで1日から3日です。
- 使っているメールアドレスを全部書き出します。つまずきやすい点は、フォームの送信先や請求書の宛先に使っている、普段見ないアドレスです。
- 移転先で同じアドレスを作ります。
- 過去のメールを移す必要があるか決めます。必要な場合は、移行の方法と費用を制作会社かメールサービスの提供元に確認します。
- 名簿の設定を書く内容を用意します。現在の設定をすべて控え、新しい内容と並べて確認します。
5が最も大事です。現在の設定を控えずに書き換えると、元に戻せなくなります。画面の写しを保存しておいてください。
切替の当日にやること
当日の作業は短時間で終わります。流れは次のとおりです。
- 名簿の設定を新しい内容に変更します。所要時間の目安は30分です。
- 変更の直後から、新しいサーバでメールを受け取れるかを確認します。
- 社内の端末やスマートフォンで、メールの接続先を新しいサーバに変更します。
- 送信と受信の両方を、複数の端末で試します。
つまずきやすい点は3です。反映に時間差があるため、端末によって新旧どちらに接続するかが変わります。社内の全員に、当日の作業手順を事前に配っておいてください。
切替後の確認
切替の後も、数日は旧サーバを残します。確認するのは次の3点です。
- 旧サーバに届いたメールがないか。数日は毎日確認します。
- 送ったメールが相手に届いているか。届かない場合は、送信の設定を確認します。
- フォームからの通知が届いているか。サイトの問い合わせフォームは、送信先の設定が別になっている場合があります。
旧サーバの解約の時期は、後述します。急いで解約すると取りこぼします。
ドメインの手続きはどこに申請しますか
ドメインの管理を別の会社へ移す場合は、指定事業者の変更という手続きになります。日本のjpドメインでは、JPRSが手順を公開しています。
サーバを移すだけなら、この手続きは必ずしも必要ありません。ドメインの契約先も変える場合に行います。
指定事業者の変更
指定事業者とは、ドメインの登録を取り次ぐ事業者です。制作会社の名義で契約されている場合、ここを自社側へ移す判断が出てきます。
JPドメイン名では、2022年11月13日から認証コード (AuthCode) の利用が始まっています。
出典: JPRS「ドメイン名の管理指定事業者の変更」
手続きの流れは次のとおりです。
- 現在の指定事業者に、変更したい旨を伝えます。所要時間の目安は、返答まで数日です。
- 必要な情報を受け取ります。
- 新しい指定事業者に申請します。
- 完了の連絡を待ちます。つまずきやすい点は、ドメインの更新日が近い場合です。更新の直前は手続きが進めにくくなります。
日程に余裕を持ってください。更新日の1か月前までに着手すると、慌てずに済みます。
管理者の連絡先の確認
ドメインには、管理者の連絡先が登録されています。この連絡先が古いままだと、手続きの通知が届きません。
確認するのは次の3点です。
| 確認する項目 | 見るところ |
|---|---|
| 登録者の名義 | 自社名か、制作会社の名義か |
| 連絡先のメールアドレス | 現在使っているアドレスか、退職者のアドレスか |
| 更新の期限 | 次の更新日と、自動更新の有無 |
名義が制作会社になっている場合は、変更を相談してください。名義の変更は、指定事業者の変更とは別の手続きになります。
あわせて、Google Search Consoleの権限も確認します。プロパティに対する役割は所有者とユーザの2種類です。所有者が制作会社だけの場合、自社でも所有者の権限を持てるようにしておくと、移転後の確認がしやすくなります。
出典: Google「所有者、ユーザー、権限の管理」Search Consoleヘルプ
制作会社を変える場合に引き継ぐ資産の全体像は、別の記事で扱っています。