技術2026.09.29·9 min read·Nortiq Labs

受発注の電子化、電子帳簿保存法の保存要件

受発注を電子にすると、何を保存する義務が生じますか?

メールやWebでやり取りした注文書や注文請書などの取引データに、電子のまま保存する義務が生じます。印刷して綴じる運用では要件を満たしません。

受発注のシステム化を考えるとき、見落とされやすいのがこの点です。業務が楽になるかどうかの前に、法令上の保存義務が付いてきます。

対象になるのは電子取引でやり取りした書類です

国税庁の「電子取引関係」のページには、次のように記載されています。請求書、領収書、契約書、見積書などに関する電子データを送付または受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要である、という内容です。

出典: 国税庁「電子取引関係」。

受発注に当てはめると、対象は次のような書類です。

書類 電子でやり取りした場合
注文書 対象になります
注文請書 対象になります
見積書 対象になります
請求書 対象になります
領収書 対象になります

送った側も受け取った側も、それぞれが保存の義務を負います。取引先が電子で送ってきたから相手が保存している、という整理にはなりません。

FAXは送り方と受け方で扱いが変わります

ここは判断に迷いやすい部分です。国税庁の記述は「電子データを送付・受領した場合」を対象としています。

この記述からすると、次の切り分けになると読めます。

  1. 複合機で紙に出力して受け取るFAXは、電子データの受領には当たらない
  2. インターネットFAXなどで、PDFのデータとして受け取る場合は電子取引に当たる

ただし、これは上記の記述からの読み取りです。自社の運用がどちらに当たるかは、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」で確認してください。

実務上の注意を1つ申し添えます。同じ取引先からのFAXでも、送信元の設備が変われば扱いが変わることがあります。受け取り方が複数ある場合は、取引先ごとではなく、受け取り方ごとに整理してください。

いつから必要になったのか、要件の中身は何かは、次から順に説明します。

いつから電子での保存が必要になりましたか?

令和6年(2024年)1月からです。令和5年12月31日までは、印刷して保存し税務調査等で提示できれば差し支えないとされていました。

期限は既に過ぎています。まだ紙に出力して綴じるだけの運用であれば、対応が必要な状態です。

経過措置は終わっています

国税庁の「電子取引関係」のページには、次のように記載されています。令和5年12月31日までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示または提出できるようにしていれば差し支えない、という内容です。事前申請等は不要とされていました。

続けて、令和6年からは保存要件に従って電子データの保存が行えるよう必要な準備をお願いします、と記載されています。出典: 国税庁「電子取引関係」。

この経過措置は、令和4年度税制改正で措置された宥恕措置です。適用期限である令和5年12月31日をもって廃止されています。

つまり、現在は原則どおりの保存が求められる状態です。

猶予措置として残っているもの

一方で、猶予措置は残っています。宥恕措置とは別のものです。

国税庁の資料によれば、次の2つを満たす場合には、電子取引データを保存しておくだけで差し支えないとされています。

  1. ルールに従って保存できなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
  2. 税務調査等の際に、電子取引データのダウンロードの求めと、プリントアウトした書面の提示または提出の求めに、それぞれ応じることができるようにしている場合

相当の理由には、システム整備が間に合わない、資金不足、人手不足といった幅広い理由が認められると説明されています。出典: 国税庁の電子帳簿等保存制度に関する資料。

ここで誤解しやすい点があります。猶予措置があるからといって、紙だけで保存してよいわけではありません。電子データそのものは保存しておく必要があります。

整理すると次のとおりです。

運用 現在の扱い
電子データを残さず、紙だけ保存 認められません
電子データは残すが、検索できない状態 猶予措置の対象になりえます
保存要件をすべて満たしている 原則どおりの対応です

自社が真ん中の状態なら、まず電子データを消さずに残すところから始めてください。要件の中身は次で説明します。

保存要件とは? 何を満たせばよいですか

国税庁は原則的なルールを3つ挙げています。改ざん防止の措置をとること、確認するためのディスプレイやプリンタ等を備え付けること、日付と金額と取引先の3要素で検索できることです。

民間の解説では、これを真実性の要件と可視性の要件の2つに整理しています。呼び方が違うだけで、求められる内容は同じです。

真実性の要件で認められる4つの措置

改ざん防止のための措置は、4つの選択肢から選べます。すべてを満たす必要はありません。

措置 内容
受領時のタイムスタンプ タイムスタンプが付与されたデータを受領する
付与によるタイムスタンプ 受領したデータにタイムスタンプを付与する
履歴が残るシステム 訂正と削除の履歴が残るシステム等で授受および保存する
事務処理規程 改ざん防止のための事務処理規程を策定し、運用し、備え付ける

出典: 国税庁の電子帳簿等保存制度に関する資料。

国税庁の資料は、専用のシステムを導入しない方法もあると説明しています。事務処理規程のサンプルは、国税庁がWordファイルで公表しています。

可視性の要件で求められるもの

可視性は、必要なときに取り出して見せられる状態を指します。民間の解説によれば、求められるのは次の3点です。

  1. 保存場所にパソコン、プログラム、ディスプレイ、プリンタおよびマニュアルを備え付け、整然とした形式で速やかに出力できるようにしておくこと
  2. システム概要書を備え付けること
  3. 検索機能を確保すること

出典: クラウドサイン「電子帳簿保存法の要件とは?2026年最新のポイントをわかりやすく解説」。

2つ目に注目してください。システム概要書の備付けが求められています。受発注システムを外注する場合、これは成果物として求めるべき書類にあたります。

契約時に指定しておかないと、後から作ってもらうことになります。その場合は追加費用が発生します。

費用をかけずに満たすなら事務処理規程です

予算をかけずに真実性の要件を満たすなら、事務処理規程を選ぶのが現実的です。理由は2つあります。

  • タイムスタンプの仕組みを導入する必要がない
  • 規程のサンプルが国税庁から公表されている

規程で定めるのは、データを訂正したり削除したりする場合の手続です。誰の承認を得るのか、記録をどう残すのかを文章にします。

注意点もあります。規程は作って終わりではありません。国税庁の資料は、策定し、運用し、備え付けることを求めています。運用されていなければ、要件を満たしたとは言えません。

実装する側から見ると、ここは仕組みで支える余地があります。受発注システム側で訂正と削除の履歴を残せるなら、履歴が残るシステムという選択肢に寄せたほうが、運用の負担は軽くなります。

検索の要件については、緩和の条件があります。次で説明します。

検索要件はどこまで必要ですか?

取引年月日その他の日付、取引金額、取引先で検索できる状態が原則です。ただし基準期間の売上高によっては、検索要件を満たす必要がなくなります。

システムに求める機能の範囲が変わる部分です。先に自社がどちらに当たるかを確かめてください。

検索の対象になる3つの項目

国税庁の資料によれば、検索できる必要があるのは日付、金額、取引先の3つの要素です。

これに加えて、次のどちらかが必要とされています。

  1. 日付または金額での範囲指定検索と、2つの要素を組み合わせた検索ができること
  2. 税務調査等の際に、電子取引データのダウンロードの求めに応じることができること

出典: 国税庁の電子帳簿等保存制度に関する資料。

つまり、専用の検索画面が必須というわけではありません。ダウンロードの求めに応じられるなら、範囲指定や組み合わせの検索までは求められません。

簡易な方法も認められています。国税庁の資料が挙げているのは次の2つです。

  • 表計算ソフト等で索引簿(連番、日付、金額、取引先、備考)を作成して検索する方法
  • 日付、金額、取引先の順で規則性をもったファイル名を付け、特定のフォルダに集約する方法

出典: 同資料。

この2つは、システムを導入しなくても実行できます。件数が月に数十件までなら、索引簿で十分に回ります。

売上高による緩和の条件

基準期間の売上高が5,000万円以下の場合には、検索の要件を満たす必要がありません。条件は、電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしていることです。

基準期間は、2年前または2期前を指します。出典: 国税庁の電子帳簿等保存制度に関する資料。

ここは税制改正で変わる可能性のある部分です。判断の前に、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」で最新の内容を確認してください。

自社がどちらに当てはまるかの確かめ方

確認は次の順で進めてください。

  1. 2年前または2期前の売上高を、決算書から確認する(所要の目安: 10分)
  2. 5,000万円以下であれば、ダウンロードの求めに応じられる状態かを確認する
  3. 5,000万円を超えていれば、索引簿か規則的なファイル名か、システムの検索機能のどれで満たすかを決める
  4. 決めた方法を、事務処理規程または運用手順の文書に残す

つまずきやすい点は1つ目です。基準は今期の売上ではありません。2年前または2期前です。売上が伸びている会社では、来期には対象が変わることがあります。

御社が5,000万円を超える規模であれば、システムの検索機能を使うのが現実的です。次のセクションで、外注時に何を要件として書くかを整理します。

受発注システムを外注するとき、何を要件に書きますか?

保存要件を満たすための機能を、発注時の要件として文章で指定します。とくに検索機能とシステム概要書は、後から足すと費用がかさみます。

「電子帳簿保存法に対応すること」という一文だけでは足りません。何をもって対応とするかの解釈が、発注側と受注側でずれます。

要件書に入れる5項目

  1. 受領した電子データを、受領した形式のまま保存すること(PDFを画像に変換しないなど)
  2. 日付、金額、取引先の3要素で検索できること。範囲指定と2要素の組み合わせに対応するかは、自社の売上規模に応じて指定する
  3. 訂正と削除の履歴が残ること。または、残らない場合は事務処理規程で対応する旨を明記する
  4. 保存したデータを、画面表示と印刷の両方で整然とした形式で出力できること
  5. システム概要書を成果物として納品すること

3つ目の書き方が要です。履歴が残る仕組みにするか、規程で対応するかを決めてから発注してください。決めずに進めると、どちらも用意されないまま納品されることがあります。

5つ目は忘れられやすい項目です。可視性の要件でシステム概要書の備付けが求められているため、納品物の一覧に明記してください。

既製サービスを使う場合の確認点

既製の受発注サービスやEDIを使う場合も、確認は必要です。見るのは次の3点です。

確認すること なぜ見るのか
改ざん防止の措置がどの方式か 4つの選択肢のどれに当たるかで、自社で規程が必要かが変わります
検索がどこまでできるか 範囲指定と組み合わせに対応しているかを確認します
データの取り出しができるか ダウンロードの求めに応じられる状態かを確かめます

中小企業庁は、中小企業の受発注業務を電子化し関連データを活用するための仕様として「中小企業共通EDI」の仕様を策定し、実証事業により業務効率の向上を確認したとしています。取引先が多い場合は、独自仕様より共通仕様を軸に検討したほうが広がりが出ます。

実装者から見た、見落としやすい箇所

最も多いのは、受け取ったデータをそのまま残していないという状態です。基幹システムに数値だけを取り込み、もとのPDFを捨ててしまう設計です。

保存義務がかかるのは、やり取りしたデータそのものです。取り込んだ後の数値だけでは足りません。

もう1つは、紙の運用が残ったまま部分的に電子化するパターンです。参考になる数値があります。

インフォマートの調査では、建設土木業界の6割を超える企業が、いまだに手作業で請求書の転記を行っていると報告されています。同社の2024年2月の調査では、およそ3割が請求書の受け渡しは紙で行っていると回答しています。出典: インフォマートの調査(2024年2月)。

これは建設土木業界を対象とした調査です。他業種にそのまま当てはまるわけではありません。ただ、電子と紙が混在する期間が長く続くという点は、業種を問わず共通します。

混在する前提で、どちらの経路でも保存が漏れない仕組みにしておいてください。

何から着手すればよいですか?

現状のやり取りの棚卸しから始めます。どの取引先と、どの手段で、どの書類をやり取りしているかを一覧にするところまでが最初の作業です。

システムの検討より先です。棚卸しをしないまま製品を選ぶと、対象外の書類が残ります。

5つの手順

  1. 取引先ごとに、やり取りしている書類と手段を一覧にする(所要の目安: 3日から1週間)。手段はメール、Web、FAX、郵送に分けます。つまずきやすい点は、営業担当が個人のメールで受け取っている分が抜けることです
  2. 一覧のうち、電子でやり取りしている行に印を付ける(所要の目安: 1日)。この行が保存義務の対象です
  3. 基準期間の売上高を確認し、検索要件が必要かを判断する(所要の目安: 10分)。2年前または2期前の数字を見ます
  4. 改ざん防止の措置を4つのうちどれにするか決める(所要の目安: 1日)。当面は事務処理規程で始め、システム導入時に切り替える進め方もできます
  5. 保存の置き場所と命名の規則を決め、運用手順として1枚にまとめる(所要の目安: 2日から3日)。つまずきやすい点は、担当者が変わったときに規則が引き継がれないことです

手順1に最も時間がかかります。ここを飛ばして製品比較から入ると、後から対象書類が増えて要件が崩れます。

つまずきやすい点

運用を始めてから起きやすいことを、3つ挙げます。

つまずく場面 対応
担当者の個人メールに受注が届く 受注専用のアドレスに寄せます。個人のメールボックスは棚卸しの対象から漏れます
ファイル名の規則が守られない 命名を人に任せず、保存時に自動で付ける仕組みにします
規程を作ったが運用されていない 訂正や削除の手続を、実際の業務の流れに合わせて書き直します

実装する側の実感として、2つ目が最も多く崩れます。日付、金額、取引先の順で名前を付ける規則は、月末の忙しい時期に必ず守られなくなります。

規則に頼る運用は、件数が増えると続きません。取引の件数が月に百件を超える規模であれば、保存と命名を自動で行う仕組みに切り替えたほうが確実です。

どこまで仕組みで支えるべきかは、取引先の数と件数、そして自社の売上規模で変わります。既製のサービスで足りるのか、自社の商流に合わせて作る必要があるのかは、現状の一覧を見ないと判断できません。当社は代表自身が実装者として、業務の流れとデータの持ち方の両面から適切な範囲をお伝えしています。受発注の電子化をどこから進めるか整理したい場合は、無料診断をご利用ください。

なお、保存要件の細部と5,000万円という基準額は税制改正で変わりえます。実務での判断の前に、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」で最新の内容を確認してください。

よくあるご質問

受発注の電子化について、ご相談の場で実際に多い質問をまとめます。

FAXで受け取った注文書は、電子取引データの保存義務の対象になりますか?

受け取り方によって変わります。国税庁の記述は「電子データを送付・受領した場合」を対象としています。

複合機で紙に出力して受け取る場合は、電子データの受領には当たらないと読めます。インターネットFAXなどでPDFのデータとして受け取る場合は、電子取引に当たります。

自社の運用がどちらに当たるかは、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」でご確認ください。判断に迷う場合は、所轄の税務署にお尋ねいただくのが確実です。

受注メールに添付されたPDFは、印刷して保管するだけでは駄目ですか?

現在は駄目です。印刷して保存する扱いが認められていたのは、令和5年12月31日までに行う電子取引についてです。

出典: 国税庁「電子取引関係」。

ただし猶予措置があります。相当の理由が認められ、ダウンロードの求めと書面の提示の求めの両方に応じられる場合は、電子取引データを保存しておくだけで差し支えないとされています。

いずれの場合も、PDFそのものを消さずに残しておく必要があります。

タイムスタンプの仕組みを入れないと、保存要件は満たせませんか?

満たせます。改ざん防止のための措置は4つの選択肢から選べます。

そのうち1つが、改ざん防止のための事務処理規程を策定し、運用し、備え付ける方法です。国税庁の資料は、専用のシステムを導入しない方法もあると説明しています。規程のサンプルは、国税庁がWordファイルで公表しています。

出典: 国税庁の電子帳簿等保存制度に関する資料。

検索要件が不要になる売上高の基準は、どの期間の売上で判断しますか?

基準期間の売上高で判断します。基準期間は2年前または2期前です。

出典: 国税庁の電子帳簿等保存制度に関する資料。

今期の売上ではありません。売上が伸びている会社では、来期から対象になる場合があります。決算のたびに確認してください。

なお、この基準額は税制改正で変わりえます。判断の前に最新の内容をご確認ください。

既存の販売管理システムに保存すれば、要件を満たしたことになりますか?

それだけでは足りない場合があります。確認すべき点が3つあります。

  1. 受け取ったデータそのもの(PDFなど)が残っているか。数値だけを取り込んでいる場合は不足します
  2. 日付、金額、取引先で検索できるか
  3. 訂正と削除の履歴が残るか。残らない場合は、事務処理規程で対応します

とくに1つ目でつまずく例が目立ちます。基幹システムへの取り込みは、保存の代わりにはなりません。もとのデータを残す置き場所を、別に用意してください。

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監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

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