旧サーバを止める前に、最初に決める3つのこと
旧サーバの解約は、リダイレクトの置き場所、取り出すデータ、保存期間が決まっているデータの3つを確定してからにします。公開が終わった時点で解約の手続きに進みたくなりますが、この3つを決めずに契約を止めると、転送が切れて検索から来たユーザが行き止まりに当たり、問い合わせの記録も取り戻せなくなります。
どのURLを転送し続けるかを一覧にする
最初の作業は、旧サイトのURLを一覧にして、転送し続けるものと、無くしたことを明示するものに分けることです。手順は次のとおりです。
- 旧サイトのURLを洗い出します (つまずきやすい点: サイトマップだけでは足りず、他社サイトや印刷物から参照されている古いURLが漏れがちです)
- 新サイトの対応先を1件ずつ割り当てます (所要時間の目安: 50ページ規模で半日程度)
- 対応先が無いURLを「無くすページ」として分けます
この一覧が、後の工程すべての土台になります。転送の設定方法そのものは本記事では扱いません。
取り出すデータと取り出し先を決める
次に、旧サーバとCMSの中にあって新サイトへ移っていないものを決めます。問い合わせの記録、注文や請求の記録、計測データ、画像と原稿の元データ、CMSの中身が主な対象です。取り出す先は、社内の共有フォルダのように解約後も残る場所にします。詳しくは後述します。
解約日を仮置きして、関係者に共有する
3つ目は、解約日を仮の日付として置き、制作会社と社内の担当者に共有することです。仮置きである点が重要で、転送の移設と取り出しが終わってから確定させます。
実装者としての注意点を1つ挙げます。レンタルサーバの契約は、解約の申し出をした時点ではなく契約期間の満了日に停止する形が多く、申し出の期限が満了日の1か月前などに設定されていることがあります。期限を過ぎると次の期間の料金が発生し、逆に早めに申し出ると、取り出しが終わる前に止まってしまいます。自社の契約書か管理画面で、停止日と申し出の期限の両方を先に確認しておいてください。
旧URLのリダイレクトはいつまで必要か
Googleはリダイレクトをできるだけ長く保持するとしており、期間の目安は1年以上です。つまり、旧サーバでリダイレクトを動かしている構成のままでは、公開から1か月で解約するという判断は取れません。先に転送の置き場所を決める必要があるのは、この期間の長さが理由です。
Google公式ドキュメントが示す保持期間
Google検索セントラルの「URLの変更を伴うサイト移転」では、旧URLから新URLへのリダイレクトについて「リダイレクトをできるだけ長く保持します」と説明されており、期間の目安として1年以上が示されています。同じドキュメントでは「リダイレクトを無期限に保持することを検討してください」とも述べられています。
また、移転せずに無くすページについては、HTTP 404または410のエラーレスポンスコードを返すようにすると説明されています。旧サーバをまとめて止めると、転送すべきURLも、無くしたことを伝えるべきURLも、区別なく応答しなくなります。前のセクションで作った一覧を、この2つに分けて扱う形になります。
インデックスの移行にかかる時間
同ドキュメントによると、Googlebotが移転を認識するには少なくとも1回、新旧両サイトのすべてのURLにアクセスする必要があるとされています。あわせて、中規模のサイトでも大半のページがインデックス上で移行するまでに数週間かかる場合があり、規模が大きいほど長くなると記載されています。旧URLが応答しなくなると、この処理は完了しません。
公開の直後は、まさにこの移行が進んでいる時期にあたります。旧URLが応答する状態を保ったまま進めるのが前提になります。
リダイレクトを旧サーバ以外へ移す選択肢
1年以上の転送を旧サーバで抱え続けるのは、費用の面でも管理の面でも重くなります。そこで、転送だけを旧サーバの外に出す構成を検討します。主な置き場所は次の3つです。
| 置き場所 | 向いている場合 | 確認すること |
|---|---|---|
| 新サイト側のサーバ | 旧ドメインと新ドメインが同じ | 旧URLのパスを新サイト側で受けられるか |
| 転送専用のサービスやDNSの転送機能 | ドメインが変わり、旧サーバを止めたい | 個別のURLごとの転送に対応しているか |
| 最小の契約に変更した旧サーバ | 転送の規則が複雑で作り直しが難しい | 下位のプランで同じ設定が動くか |
いずれの場合も、移設の直後に主要な旧URLを実際に開き、新サイトの対応先に届くかを確認します。つまずきやすい点は、トップページだけを試して終わりにしてしまうことです。ドメイン単位の転送に切り替えると、個別ページの転送先がすべてトップページに集まってしまう設定になりがちで、検索から来たユーザが目的のページに着けません。一覧にした主要なURLを10件ほど抜き出して、1件ずつ開いて確かめてください。
解約前に取り出すデータの一覧と取り出す順番
問い合わせの記録、注文や請求の記録、計測データ、画像と原稿の元データ、CMSの中身の5つを、解約日より前に取り出します。このうち計測データは、旧サーバを止めるかどうかとは別に、時間の経過だけで遡れなくなるため最優先で扱います。
手順1 問い合わせと注文の記録を書き出す
最初に、旧サイトのフォームから届いた記録と、注文や請求に関する記録を書き出します。CMSの管理画面に蓄積されている分と、転送先のメールボックスに残っている分の両方を対象にします。CSV形式で書き出せる場合はCSVで、できない場合は管理画面の一覧を印刷用に保存します。
所要時間の目安は、件数が数百件までであれば1時間から2時間です。つまずきやすい点は、フォームのプラグインが独自の保存先を持っている場合で、記事や固定ページの書き出しだけでは問い合わせの記録が含まれません。
手順2 計測データを期間を指定して書き出す
次に計測データです。Google Search Consoleの検索パフォーマンスレポートで遡れる期間は最長16か月で、これは画面上の操作にもAPIにも適用されます。比較したい期間がこの範囲から外れると、後から当時の表示回数やクリック数を確認する手立てがありません。
Googleアナリティクス4では、公式ヘルプによると、イベントデータの保持期間は2か月または14か月から選択する形で、無料版の上限は14か月、Googleアナリティクス360では最長50か月まで選べます。既定の設定のままでは2か月より前のデータが残らないため、リニューアル前の状態を後から振り返ることができなくなります。
| 書き出すもの | 期間の指定 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 検索パフォーマンスレポート | 遡れる上限は16か月 | 期間を指定して書き出し、ページ別と検索語別を分けて保存します |
| Googleアナリティクス4のレポート | 保持期間の設定を先に確認 | 既定のままなら2か月より前が残りません |
所要時間の目安は、必要なレポートが決まっていれば30分程度です。
手順3 画像・原稿・CMSの中身をまとめて保存する
3つ目は、新サイトへ移っていない画像や原稿の元データ、CMSの記事と固定ページの書き出し、データベースの控えです。制作会社が作業用に保管している分もあるため、どこに何があるかを先に聞いておきます。つまずきやすい点は、新サイトに載せた画像は書き出せても、旧サイトだけにあった高解像度の元データが旧サーバの作業用フォルダにしかない場合です。
手順4 取り出したものを開いて中身を確認する
最後に、取り出したファイルを実際に開いて中身を確かめます。CSVの文字化け、空のファイル、途中で切れた書き出しは、この段階でしか気づけません。所要時間の目安は30分程度で、ここを省くと解約後に空のファイルだけが残ります。確認が済んだ時点で、仮置きしていた解約日を確定させます。
消すデータと、保存期間が決まっているデータの分け方
個人データは必要がなくなれば遅滞なく消去するよう努める一方で、帳簿書類のように法令で保存期間が定められているものは残します。前のセクションで書き出した5種類のうち、問い合わせの記録と注文や請求の記録は、この2つの要請が重なる部分です。取り出して終わりにせず、どちらの扱いにするかを決めます。
個人情報保護法第22条の消去の努力義務
個人情報保護委員会のガイドライン (通則編) 3-4-1では、個人情報保護法第22条について、利用する必要がなくなったときは当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないと整理されています。あわせて、法令で保存期間が定められている場合はこの限りではないとされています。
旧サーバを解約すること自体は、この消去にあたるとは限りません。取り出したCSVを社内の共有フォルダへ置いた場合、個人データは場所を移して残っています。解約の作業と、必要がなくなったデータを消す作業は別に考えてください。
帳簿書類の保存期間は原則7年、欠損金がある事業年度は10年
国税庁のタックスアンサーNo.5930では、帳簿書類はその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならないとされています。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合等は10年間 (平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間) になります。
旧サイトで受けた注文や請求に関する記録がある場合は、解約の前にこの期間を満たす形で取り出しておく必要があります。自社のサイトで物販や有料のサービスの申し込みを受けていた場合は、該当する可能性があります。
旧サイトの問い合わせ履歴をどちらに振り分けるか
振り分けの考え方を整理します。
| 旧サイトに残るもの | 扱い | 根拠として見るもの |
|---|---|---|
| 取引に至った注文や請求の記録 | 保存期間を満たす形で残します | 国税庁の帳簿書類等の保存期間 |
| 取引に至らなかった問い合わせの記録 | 利用する必要がなくなった時点で消去するよう努めます | 個人情報保護法第22条 |
| 資料請求や応募の個人データ | 自社で定めた利用目的と保存の期間に照らして判断します | 個人情報保護法第22条 |
| 画像・原稿・CMSの中身 | 個人データを含まなければ資産として保管します | 自社の判断 |
実務では、問い合わせの記録に取引の経緯が混ざっていることが多く、機械的に分けられません。つまずきやすい点は、判断が付かないものをすべて残す方向に寄せてしまい、共有フォルダに個人データが期限の定めなく置かれる状態になることです。この記事の範囲では、まず取り出す段階で、取引に至ったものと至らなかったものを別のファイルに分けておくことをおすすめします。保存の期間と消去の判断そのものは、税務と法務の担当に確認してください。