多言語対応の費用は、何にいくらかかりますか?
費用は翻訳の費用と実装の費用に分かれます。見積書でこの2つが分かれていない場合、後から追加費用が発生しやすくなります。
多言語対応は、既存のサイト制作に上乗せされる要件です。まず土台となる制作費用を押さえてから、上乗せ分を見てください。
費用の内訳を4つに分けて見ます
見積書は次の4つに分解して読みます。
| 区分 | 多言語対応で発生するもの |
|---|---|
| 初期費用 | 言語切替の実装、言語ごとのページの作成、URLの設計 |
| 月額 | 翻訳した内容の更新、言語ごとのページの保守 |
| オプション | 翻訳そのものの費用、ネイティブによる校正、言語の追加 |
| 従量課金 | 自動翻訳ツールの利用料(文字数や閲覧数に応じて課金されるもの) |
このうち見落とされやすいのは月額と従量課金です。初期費用だけを比べて発注すると、公開後の負担が想定を超えます。
土台となる制作費用の相場は、次のとおりです。複数の制作会社が公開する相場データによると、小規模なコーポレートサイト(5ページから10ページ程度)を中小規模の制作会社へ依頼した場合、30万円からが目安とされています。出典: Web幹事「ホームページ作成費用・制作費用の料金相場をプロが解説!相場早見表付き【2026年最新版】」。
月額の管理と保守の費用は、小規模サイトで月額5,000円からが相場の下限とされています。出典: あきばれホームページ「ホームページ維持費の相場は月いくら?ランニングコストの内訳を全公開」。
多言語対応を加えた場合の金額は、案件の規模と要件により大きく変動します。言語数とページ数、翻訳の方式で幅が出るためです。具体的な変動要因は後述します。
基準日と前提
本記事の内容は2026年9月時点のものです。相場の数値は上記の出典によります。
前提として、次の2点を確認してください。
- 既存サイトがあるのか、新規に作るのか。既存サイトへの後付けは、URL設計の見直しが必要になる場合があります
- 対象の言語が英語1つか、複数か。複数の場合は言語の追加ごとに費用が積み上がります
なお、補助金による負担の軽減を検討する場合は、制度の内容が年度ごとに変わります。対象や要件は補助金のご案内をご確認ください。
翻訳と実装の切り分けは、次で整理します。
翻訳と実装、どちらが制作費に含まれますか?
実装は制作費に含まれますが、翻訳は別費用として扱われることが一般的です。見積書のどこに書かれているかを必ず確認してください。
ここが曖昧なまま発注すると、原稿が用意されないまま納期が来ます。制作は止まり、公開が遅れます。
制作会社が担う範囲と担わない範囲
一般的な切り分けは次のとおりです。ただし会社によって違います。契約前に必ず確認してください。
| 作業 | 一般的な扱い |
|---|---|
| 言語切替のボタンや仕組みの実装 | 制作費に含まれます |
| 言語ごとのページの枠組みの作成 | 制作費に含まれます |
| URLの設計と検索エンジン向けの設定 | 制作費に含まれます |
| 日本語から他言語への翻訳 | 別費用、または発注者側の用意 |
| 翻訳内容の正しさの確認 | 発注者側の責任になることが多い |
| 画像内の文字の差し替え | 見落とされやすい追加作業 |
4行目からが問題になります。制作会社は翻訳の専門家ではありません。翻訳を依頼できる場合も、外部の翻訳会社への取り次ぎという形が多くなります。
原稿の用意は誰の仕事になるか
原則として、原稿の用意は発注者側の仕事です。日本語のサイト制作でも同じですが、多言語ではここが重くなります。
理由は3つあります。
- 翻訳する前に、日本語の原稿を確定させる必要がある
- 専門用語や社名、サービス名の訳し方を決める必要がある
- 訳された文章が自社の意図と合っているかを、発注者側でしか判断できない
2つ目は見落とされやすい作業です。自社のサービス名を英語でどう表記するかを決めていないと、ページごとに違う表記になります。
実装する側から見ると、この用語の一覧があるかどうかで作業の見通しが大きく変わります。発注前に、社名、サービス名、部署名、よく使う専門用語の対訳表を作っておいてください。
画像内の文字も忘れないでください。バナーや図の中に日本語が入っている場合、画像そのものを作り直す必要があります。この作業は、テキストの翻訳とは別に費用が発生します。
費用が大きく変わる要因は、次で整理します。
費用を左右する要因は何ですか?
言語数、ページ数、翻訳の方式、更新の頻度の4つで決まります。なかでも更新の頻度が、公開後の費用を最も大きく左右します。
初期費用だけを見て判断すると、この点を見落とします。順に説明します。
言語数とページ数の掛け算で増えます
翻訳の費用は、おおむね言語数とページ数の掛け算で増えます。3言語で20ページなら、日本語以外に60ページ分の文章が必要になります。
一方、実装の費用は掛け算では増えません。言語切替の仕組みは1度作れば使えます。言語を追加する分の費用は、最初の1言語目より小さくなります。
この違いが、見積もりの読み方に影響します。
| 増え方 | 該当する費用 |
|---|---|
| 言語数とページ数に比例して増える | 翻訳、校正、画像の差し替え |
| 最初に大きく、追加分は小さい | 言語切替の実装、URLの設計 |
| 言語数に応じて毎月増える | 翻訳内容の更新、ページの保守 |
翻訳の方式による違い
方式は大きく3つあります。費用と品質のどちらを取るかの判断になります。
- 人による翻訳。費用は最も高くなりますが、内容の正しさと読みやすさが得られます
- 機械翻訳に人が手を入れる方式。費用を抑えつつ、大きな誤りを避けられます
- 機械翻訳のみ。費用は最も低いものの、内容の正しさは保証されません
商品の仕様や契約に関わるページでは、3つ目は避けてください。誤訳が取引の条件の誤解につながります。
会社案内やニュースのように、内容の誤りが取引に直結しないページであれば、2つ目で足りる場合があります。ページの性質で方式を分ける進め方が現実的です。
公開後の更新が費用を決めます
最も見落とされるのがここです。日本語のページを1つ直すたびに、対応する他言語のページも直す必要があります。
3言語に対応していれば、1つの修正が4つの作業になります。更新の頻度が高いサイトでは、この積み上がりが初期費用を超えることもあります。
対策は2つです。
- 更新の頻度が高いページ(ニュース、ブログ)は多言語化の対象から外す
- 更新が少ないページ(会社案内、サービス内容、問い合わせ)に絞る
この絞り込みが、費用を抑える最も効く手段になります。
実装者から見た、見積もりに乗りにくい作業
見積書に項目として現れにくいものが、いくつかあります。
- 言語によって文章の長さが変わるため、デザインの崩れを直す作業。ドイツ語のように語が長い言語では、ボタンからはみ出します
- 日付や金額、住所の表記を言語に合わせる作業
- 問い合わせフォームの入力チェックを言語ごとに調整する作業(郵便番号や電話番号の桁が国ごとに違います)
- 検索エンジンに言語の対応関係を伝える設定
最後の1つは、後から追加すると手戻りが大きくなります。URLの設計と合わせて、最初に決めておいてください。方式の選び方は次で説明します。
多言語対応の方式には、どんな選択肢がありますか?
大きく3つの方式があります。ページを言語ごとに作る方式、翻訳ツールを組み込む方式、既存サイトに自動翻訳をかぶせる方式です。
費用の安い順は3、2、1です。ただし検索エンジンからの評価と、公開後の手間は逆の順になります。
3つの方式の比較
| 方式 | 内容 | 初期費用 | 公開後の手間 |
|---|---|---|---|
| 言語ごとにページを作る | 言語別のURLで、それぞれのページを持つ | 高い | 更新のたびに各言語を直します |
| 翻訳ツールを組み込む | CMSに多言語の仕組みを入れ、管理画面から各言語を編集する | 中くらい | 管理画面でまとめて直せます |
| 自動翻訳をかぶせる | 既存サイトの表示を、閲覧時に機械翻訳で置き換える | 低い | 原文を直せば自動で反映されます |
3つ目は手軽ですが、訳文を自社で管理できません。商品名や社名が意図しない形に訳されることがあります。
検索エンジンからの評価という観点
海外からの検索での流入を期待するなら、1つ目か2つ目を選んでください。理由は、言語ごとに別のURLを持つ形になるためです。
3つ目の自動翻訳をかぶせる方式では、多くの場合、翻訳された内容が検索エンジンに登録される形になりません。表示は他言語になっても、検索の対象は日本語のページのままという状態です。
つまり、次のように整理できます。
- 海外から検索で見つけてほしい: 言語ごとにURLを持つ方式
- すでに接点のある海外の相手に、読んでもらえれば十分: 自動翻訳でも足ります
自社の目的がどちらなのかを先に決めてください。検索からの流入を期待しないのであれば、費用の低い方式で始めて構いません。
どの方式を選ぶかの目安
判断の目安は次のとおりです。
- 海外向けの営業に使い、問い合わせを取りたい。かつ対象ページが20ページ以内。言語ごとにページを作る方式が向きます
- ページ数が多く、更新も定期的にある。翻訳ツールを組み込む方式が向きます
- 既存の取引先に資料として見せる用途が中心。自動翻訳をかぶせる方式で足ります
つまずきやすい点を1つ申し添えます。3つ目で始めた後に1つ目へ移る場合、URLの設計をやり直すことになります。
将来的に検索からの流入を狙う見込みがあるなら、最初からURLを言語ごとに分ける設計にしておいてください。ページ数が少ないうちに決めておくほうが、費用は小さく済みます。
要件として何を決めるかは、次で整理します。