技術2026.09.28·9 min read·Nortiq Labs

製造業のロット検品記録|外注前に決める6項目

ロット追跡の仕組みを外注する前に、何から決めますか?

最初に決めるのは、ロット番号を何の単位で振るかです。この単位が決まらないと、検品記録も材料の紐づけも設計できません。

御社が制作会社に相談する前に自社で決めておくことは、次の3点に集約されます。

  1. ロット番号を振る単位(所要時間の目安: 現場責任者との打ち合わせ2時間程度)
  2. たどりたい範囲、つまりどこからどこまでを1本の線でつなぐか(同: 1時間程度)
  3. 現場で誰がどの端末に入力するか(同: 現場確認を含めて半日程度)

この3点は仕様書の前提になるため、決まっていないまま見積もりを取ると、後から設計のやり直しが発生します。

ロット番号を振る単位を決める

ロット番号は、製造指示の単位、投入した材料の単位、出荷の単位のいずれかに合わせます。3つを混ぜると、1つの番号が複数の意味を持ち、照会の結果が合わなくなります。

つまずきやすい点は、既に現場で使っている番号があるのに、それが台帳に残っていない場合です。伝票の余白に手書きされた番号は、そのままでは単位の定義になりません。まず現物を集めて、実際にどの単位で振られているかを確認します。

たどりたい範囲を1本の線で書き出す

「客先から不具合の連絡が来たときに何を答えるか」を具体的な1文で書き出します。たとえば「出荷したロット番号から、検品の判定結果と、使った材料のロット番号を答える」という形です。

この1文が、必要な紐づけをそのまま示します。線が長くなるほど関係する帳票が増えるため、最初は客先対応に必要な範囲に絞ることをおすすめします。工程別の原価集計まで広げるかどうかは、後述の要件整理の段階で判断します。

現場の入力端末と入力者を決める

入力するのは検査の担当者か、事務で後からまとめて入力するのかを決めます。担当者が現場で入力する前提にすると、画面の設計が変わります。

つまずきやすい点は、手袋を着けたまま操作する工程や、通信が届かない場所がある場合です。その工程では紙に記録して後で入力する運用を残す判断もあり得ます。画面の作り方については後のセクションで詳しく述べます。

なぜ紙と表計算ソフトではロットをたどれなくなるのですか?

記録は取れていても、ロット番号で横断して探せる場所が無いためです。記録する行為と、後からたどれる形にすることは別の問題です。

この差は公的な統計にも表れています。2026年版ものづくり白書によると、製造プロセスでデータを取得している事業者は約7割に達する一方で、そのデータを活用して効果を得ている事業者は約4割にとどまります。同白書は、企業間のデータ連携についても2年前からほぼ進展していないとしています。

出典: 経済産業省・厚生労働省・文部科学省『2026年版ものづくり白書』(2026年5月29日閣議決定)

記録は取れているのに活用できない状態

紙の検査記録も表計算ソフトの一覧も、記録としては成立しています。問題は、ロット番号を手がかりに複数の帳票をまたいで引き当てる手段が無いことです。

ペーパーレス化の進み方にも同じ断絶が見えます。LINE WORKS株式会社が2026年3月に全国の従業員数1,000名未満の製造業225名を対象に実施した調査では、80.9%の企業がペーパーレス化に取り組む一方、「ほぼ全ての業務で、問題なくペーパーレスが完了している」と回答した企業は8.9%でした。着手率と完了率の差が、電子化だけでは終わらないことを示しています。

出典: LINE WORKS株式会社「中小・中堅製造業の紙書類利用・ペーパーレスの取り組みに関する調査」(2026年3月、従業員数1,000名未満の製造業225名)

帳票ごとにファイルが分かれる構造

製造指示書、工程別の作業記録、検査の判定表、材料の受払記録は、それぞれ別の帳票か別のファイルとして作られます。同じロット番号が各帳票に書かれていても、番号で結ばれたデータにはなっていません。

Tebiki株式会社が2024年8月に製造業従事者143名を対象に実施した調査では、優先してデジタル化したい書類として製造日報と検査記録が挙げられています。現場が探しにくさを感じている帳票が、まさにロット追跡の対象と重なります。

出典: Tebiki株式会社の製造業従事者143名への調査(2024年8月)

担当者しか探せない状態になる理由

どの棚のどの綴りに何月分が入っているかは、保管している担当者の記憶にあります。ファイル名の付け方も担当者ごとに違うため、他の人が同じ手順で探せません。

その結果、客先からの問い合わせの対応が特定の人に集まります。必要な記録項目については次のセクションで整理します。

検品記録に持たせる項目は何ですか?

ロット番号、判定結果、判定者、判定日時、検査項目ごとの実測値、使用材料のロット番号の6つが最低限です。この6つが揃っていれば、客先からの問い合わせに画面上で答えられます。

項目 型 決めておくこと
ロット番号 文字列 桁数と付番のルール、重複を許さないこと
判定結果 選択式 合格、不合格、保留などの選択肢を確定させる
判定者 選択式 作業者マスタから選ぶ。自由入力にしない
判定日時 日時 入力時刻の自動記録か、検査時刻の手入力かを決める
検査項目ごとの実測値 数値 項目名、単位、規格値の上限と下限
使用材料のロット番号 文字列 1つの製造ロットに複数の材料が入る場合の持ち方

この表をそのまま制作会社に渡せば、データ設計の出発点になります。

判定結果は選択式にして自由記述を分ける

判定結果は選択式にします。自由記述にすると「OK」「良」「合格」が混ざり、後から合格品だけを絞り込めなくなります。

備考として書きたい内容は、判定結果とは別の欄に分けます。判定は集計する項目、備考は読む項目と割り切ると、設計が単純になります。選択肢は後から増やせる形にしておくと、運用中の追加に対応できます。

実測値は数値型で持つ

寸法や重量の実測値は数値型で持ちます。「12.5mm」のように単位まで含めた文字列で保存すると、規格値の上限と下限との比較ができません。

単位は項目のマスタ側に持たせ、入力欄には数値だけを入れます。規格値の上限と下限をマスタに登録しておけば、入力時点で範囲外を知らせることができ、判定の入力漏れも減ります。

つまずきやすい点は、検査項目が製品ごとに違う場合です。項目を固定の列として持つと製品が増えるたびに設計変更が必要になるため、項目を行として持つ形にします。

不適合時の処置を記録の一部にする

不合格と判定した後の処置を、同じ記録の中に持たせます。手直し、選別、廃棄、特別採用のどれを行ったかが残っていないと、客先への回答が判定結果だけで止まります。

処置も選択式にし、処置日と処置後の再判定結果を持たせます。再判定を別の記録として作るか、同じ記録に履歴として積むかは、御社の運用に合わせて決めます。履歴として積む場合は、最新の判定がどれかを示す項目が必要です。

記録の保存期間はどう決めますか?

自社の業種に保存期間の定めがあるかを先に確認します。法令で年数が決まっている場合は、その年数と検索できることが要件になります。

保存期間は、システムの容量と設計に直結する数少ない「外から決まる条件」です。社内の都合で短くできないため、要件定義の最初に確認します。定めが無い業種でも、客先との取引基本契約で保存年数を求められている場合があります。

法令で保存期間が定まる例

食品に関わる製造では、保存期間が法令で明示されています。農林水産省の米トレーサビリティ法の解説によると、指定米穀等を扱う事業者には記録の作成と保存の義務があり、受領や発行した伝票等、作成した記録等は原則3年間保存する必要があります。消費期限が付された商品は3か月、賞味期限が3年を超える商品は5年です。

対象 保存期間
原則 3年
消費期限が付された商品 3か月
賞味期限が3年を超える商品 5年

対象は、対象品目となる米や米加工品の販売、輸入、加工、製造または提供を行うすべての事業者で、生産者、米加工品製造事業者、流通事業者、小売販売事業者、外食事業者が含まれます。農林水産省は、この記録の作成と保存の義務が直罰規定であると説明しています。

出典: 農林水産省「米トレーサビリティ法の概要」「米トレーサビリティ制度Q&A 基本編」

衛生管理の記録も同様です。平成30年6月13日に食品衛生法等の一部を改正する法律が公布され、原則として食品の製造や加工、調理、販売等を行うすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理を実施することとなり、経過措置期間を経て令和3年6月1日から全面施行されました。厚生労働省は、実施したことを記録に残し、それを保存する方法を定めることが必要であるとしています。

出典: 厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」

これらは食品に関わる業種の例です。御社の業種にどの定めがあるかは、所管の官公庁の公表資料で確認することをおすすめします。

保存期間を過ぎた記録の扱いを決める

保存期間を過ぎた記録をどうするかも、あらかじめ決めます。選択肢は、そのまま残す、画面から見えない状態にする、削除するの3つです。

米トレーサビリティ法のように保存期間内の廃棄が問題になる制度がある一方、期間を過ぎた記録を残し続けても不利益は生じないことが多く、実務では残す判断が現実的です。ただし件数が増えると照会の反応が鈍くなるため、直近分と過去分を分けて持つ設計にします。

つまずきやすい点は、期間の起算日です。検査を行った日か、記録が完成した日か、出荷した日かで年数の境目が変わります。起算日を要件として明記しておかないと、後から数え直しが必要になります。

現場が入力し続けられる画面にするには?

紙の帳票と同じ並びの画面にして、判定と数量と担当者の選択だけで終わる形にします。入力項目を増やすほど記録は埋まらなくなります。

記録の設計が正しくても、現場で入力されなければ照会できるデータは増えません。画面の作り方は、要件として明記すべき項目の1つです。

紙の帳票の並びをそのまま移す

いま現場が使っている帳票の項目の順番を、そのまま画面の順番にします。紙では上から下に書いていた項目が画面で並び替わると、目の動きと手の動きが合わず、入力を間違えます。

改善したい点があっても、最初の導入では並びを変えないことをおすすめします。入力がデータとして溜まってから、実際の使われ方を見て並びを見直す順番にすると、現場の抵抗が小さくなります。

自由記述を最小にする

入力の手間の大半は、文字を打つ操作にあります。現場の画面では、次の順で入力方法を選びます。

  1. マスタからの選択(作業者、製品、検査項目、判定結果、処置)
  2. 数値の入力(実測値、数量)
  3. 自由記述(備考のみ)

自由記述を備考1つに絞ると、1件の入力が数十秒で終わります。備考も、よく書かれる内容が固まってきたら選択肢に昇格させます。

つまずきやすい点は、ロット番号の入力です。桁数の多い番号を手で打つと入力誤りが起き、しかもその誤りが照会できない原因になります。番号は製造指示から引き継ぐか、印字されたコードを読み取る形にして、手入力を避けます。

実装者としてつまずきやすい点

実装の側から見て、最も後戻りが大きいのは通信が不安定な現場での設計です。画面を開いた時点で通信が必要な作りにすると、電波の届かない工程で入力できず、紙に戻ります。

入力内容を端末側に一時保存し、通信が回復した時点で送る作りにすると、この問題は避けられます。ただし同じ記録が二重に送られないよう、端末側で発番した識別子を使って重複を判定する必要があります。この仕組みは後から追加すると影響範囲が広いため、最初の要件に含めてください。

もう1点は、判定日時の扱いです。端末の時刻設定がずれていると記録の順序が崩れます。時刻はサーバ側で付与し、検査時刻を別に持ちたい場合は手入力の項目として分けます。

外注前に用意する資料と、要件として書くことは?

現行の帳票の実物、ロット番号の付け方のルール、たどりたい照会のパターンの3点を用意します。この3点があれば見積もりの前提が揃います。

逆に、この3点が無い状態で見積もりを依頼すると、制作会社は標準的な構成で概算を出すしかありません。後から実際の帳票が出てきて設計が変わり、追加費用の話になります。

現行帳票の実物を集める

いま使っている帳票を、記入済みの実物で集めます。空欄の様式だけでは、どの欄が実際に使われていて、どの欄が空のまま運用されているかが分かりません。

現行の仕組みを社内で説明できる状態にしておくことの重要性は、公的な調査でも示されています。経済産業省、デジタル庁、IPAが参画した「レガシーシステムモダン化委員会」の総括レポートによると、経営層と情報システム部門や業務部門との間でシステムに関する情報が適切に共有されている企業では71%がIT資産の棚卸しや可視化に取り組めている一方、共有されていない企業では66%でIT資産の可視化ができていないとされています。

出典: 経済産業省・デジタル庁・IPA「レガシーシステムモダン化委員会」総括レポート(2025年5月28日公表)

同レポートでは、レガシーシステムが残存している企業の割合は中小企業で約50%とされています。既存の生産管理の仕組みがある場合は、その仕様を誰が説明できるかも併せて確認します。

照会のパターンを具体例で書く

照会のパターンは、実際の番号を使った具体例で書きます。「ロット番号A-2026-0413から、検品の判定結果と使用した材料のロット番号を表示する」という形です。

抽象的に「トレーサビリティを確保する」と書くと、実装の範囲が決まりません。具体例を3つから5つ書けば、必要な紐づけと画面がそのまま決まります。優先順位も付けておくと、予算に合わせて範囲を調整できます。

移行する過去データの範囲を決める

過去の紙の記録をどこまで入れるかを決めます。全部入れる、法令の保存期間の分だけ入れる、入れないの3つから選びます。

つまずきやすい点は、過去データの入力費用です。紙からの入力は件数に比例して工数がかかるため、システムの開発費よりも移行費が大きくなることがあります。当面は新しい記録から溜めて、過去分は紙で照会する運用も現実的な選択です。

なお、社内で仕様を説明できる人が退職する前に文書化しておく必要性については、経済産業省「DXレポート」(平成30年9月7日)が、レガシーシステムの保守運用を担ってきた社内技術者の高齢化と若手人材の不足により2025年までにIT人材の不足が約43万人に拡大すると指摘しています。

ロット追跡の記録を整えると何が変わりますか?

客先からの問い合わせへの回答が、倉庫とファイルサーバを探す作業から、画面での照会に変わります。探す時間が無くなるだけでなく、誰が対応しても同じ答えが出せるようになります。

問い合わせ対応の変化

これまでは、該当ロットの検査記録を綴りから探し、使った材料の受払記録を別の場所から探し、担当者に確認して回答していました。記録が1つのデータでつながると、ロット番号を入力した画面にその3つが並びます。

記録を統合した効果は公的な資料にも事例があります。2026年版中小企業白書では、松本興産株式会社が紙やExcelで分散していた情報をデジタル化し、検品業務で年間1,500時間の削減を実現した事例が報告されています。同白書では、岡田研磨株式会社が生産管理、労務管理、原価管理を含む30以上のアプリを統合し、情報の一元管理を実現した事例も紹介されています。

出典: 中小企業庁『2026年版 中小企業白書・小規模企業白書』

御社の削減時間がこの事例と同じになるとは限りません。工程数と記録の件数によって変わるため、導入前に現状の探す時間を実測しておくと、投資の判断材料になります。

工程別の集計が出せるようになる

検品記録が数値型で溜まると、規格値に対する実測値のばらつきを工程別に見られます。不適合の発生が特定の工程や材料ロットに偏っていないかも、同じデータから確認できます。

ただし集計は、記録が一定量溜まってから意味を持ちます。導入直後に集計画面を作り込むより、まず記録が確実に溜まる状態を作ることをおすすめします。集計の追加は、記録の項目が正しければ後から行えます。

御社の記録の整理を一緒に進めます

記録項目や照会のパターンを自社だけで書き出すのは、日々の製造を回しながらでは進みにくい作業です。現行の帳票を見ながら決めていくほうが早く、抜けも見つかります。

株式会社ノーティックラボでは、業務システムの開発を500,000円から承っており、現行帳票の確認から要件の整理までを一緒に進めます。代表はAIエンジニアとして自ら実装しており、要件の整理から実装までを同じ担当者が見ます。

まず現状を整理したいという段階であれば、無料診断で御社の記録の状態と進め方をお伝えします。具体的な相談はお問い合わせからご連絡ください。

よくあるご質問

この記事に関して多い質問と回答をまとめます。

ロット番号は製造指示の単位と出荷の単位のどちらで振るべきですか?

製造指示の単位で振ることをおすすめします。検品と材料の投入はどちらも製造の工程で起きるため、製造指示に紐づけたほうが記録の入り口が1つになります。

出荷の単位は、製造ロットと出荷ロットの対応表を別に持つことで後からたどれます。1回の出荷に複数の製造ロットが混ざる場合は、この対応表が必須になります。

検品記録を電子化すると、紙の帳票は破棄してよいのですか?

業種によって異なります。保存期間や保存の方法が法令で定められている場合は、電子的な保存が認められる条件を満たしているかを確認する必要があります。

御社の業種の定めについては、所管の官公庁の公表資料で確認することをおすすめします。判断がつくまでは紙も保管し、二重管理の期間を設ける運用が安全です。

過去の紙の記録はどこまでシステムに移行すべきですか?

移行しない判断から始めて構いません。紙からの入力は件数に比例して工数がかかり、開発費より移行費が大きくなることがあります。

客先からの問い合わせが実際に何年前まで遡るかを確認し、その範囲だけを入れる方法が費用と効果の釣り合いが取れます。移行しない過去分は、紙で照会する運用を残します。

既存の生産管理システムがある場合、検品記録だけを別に作ってもよいのですか?

作れますが、ロット番号を既存システムから受け取る形にしてください。検品記録の側で番号を新しく振ると、2つの番号の対応表が必要になり、たどる手間が元に戻ります。

既存システムからロット番号と製造指示の情報を取り出せるかを、要件を決める前に確認します。取り出せない場合は、検品記録の側を入り口にする設計も選択肢になります。

現場にタブレットを配る以外の入力方法はありますか?

工程に据え置きの端末を置く方法と、事務所で後からまとめて入力する方法があります。据え置きは持ち運びの手間が無く、共用のため台数を抑えられます。

まとめて入力する場合は、紙への記入が残るため転記の手間は減りません。ただし照会できる状態は作れるため、まず照会を実現し、現場の入力は次の段階にする進め方もあります。

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監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

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