まず決めるのは「URLを変えるか」の一点です
全面か部分かという言葉で考えるより、URLを変えるかどうかで分けると判断が進みます。URLを変えない範囲に収まるなら、検索への影響は小さく済みます。
「全面リニューアル」と「部分改修」の線引きがあいまいになる理由
全面リニューアルと部分改修は、業界で定義が決まった言葉ではありません。制作会社によっては、デザインをすべて作り替えても既存のページ構成を保つ提案を全面リニューアルと呼び、別の会社は同じ作業を部分改修と呼びます。言葉で合意しても、作業範囲は一致しません。
これに対してURLを変えるかどうかは、作業の前後で機械的に確かめられます。Googleの説明も、URLが変わる場合と変わらない場合で内容が分かれています。範囲の議論は、まずこの一点に置き換えると進みます。
URLを変える作業とURLを変えない作業の具体例
| 区分 | 主な作業 | 検索への影響としてGoogleが示していること |
|---|---|---|
| URLが変わらない | デザインの刷新、文章と画像の差し替え、ページの追加、サーバの移転 | 移転直後にGooglebotのクロール頻度が一時的に下がるのは通常の動作で、その後数日かけて徐々に上がっていくとされています。検索順位が変わるという記述はありません |
| URLが変わる | サイト構造の組み替え、CMSの移行にともなうURLの変更、ドメインの変更 | 中規模のウェブサイトの場合、古いURLの代わりに新しいURLを段階的に表示し始めるまでに数週間以上かかることがあり、移転中は掲載順位が一時的に変動することがあるとされています |
出典はいずれもGoogle検索セントラルの「サイトを移転する方法 (URLの変更なし)」(https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/site-move-no-url-changes?hl=ja) と「サイトを移転する方法 (URLの変更あり)」(https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/site-move-with-url-changes?hl=ja) です。
サーバの移転はURLが変わらない区分に入りますが、準備は必要です。同じGoogleの文書では、移転の少なくとも1週間前にDNSのTTLを下げることが示されています。
なお、URLを変える判断をすると、旧URLから新URLへのリダイレクトを一般的な目安として1年以上保持する前提が付いてきます。公開後に残る作業については後述します。
現状を4つの指標で測り、どこに手を入れるかを絞ります
表示速度と安定性、スマートフォンでの見え方、検索からの流入、問い合わせまでの動線の4点を先に測ると、作り替えが必要な範囲が数値で見えます。感覚で「古いから全面的に」と決めると、直す必要のない部分まで範囲に入ります。
Core Web Vitalsのしきい値で合否を確かめる
表示速度と安定性には、Googleが公開しているしきい値があります。
| 指標 | 良好とされるしきい値 |
|---|---|
| LCP (Largest Contentful Paint) | 2.5秒以内 |
| INP (Interaction to Next Paint) | 200ミリ秒以下 |
| CLS (Cumulative Layout Shift) | 0.1以下 |
出典はweb.devの「Web Vitals」(https://web.dev/articles/vitals?hl=ja) です。同ページによると、評価はモバイルとデスクトップに分けたページ読み込みの75パーセンタイルで行い、3つの指標すべてで目標値を満たすとページは合格と見なされます。平均値ではなく75パーセンタイルで見るため、一部の遅いページが足を引っ張っている状態も把握できます。なお、Core Web Vitalsがランキングシグナルに正式採用されたのは2021年6月です (出典: Google検索セントラル公式ブログ https://developers.google.com/search/blog/2020/11/timing-for-page-experience)。
自社で測るときの手順と所要時間の目安
- Search Consoleの「ページエクスペリエンス」でCore Web Vitalsの合否とページ数を確認します (所要時間の目安: 30分)。
- 主要なページをPageSpeed Insightsにかけ、LCPとINPとCLSの実測値を記録します (所要時間の目安: 1ページ10分)。
- スマートフォンで問い合わせ完了まで実際に操作し、途中で止まる箇所を書き出します (所要時間の目安: 1時間)。
- Search Consoleの検索パフォーマンスで、表示回数とクリック数が多いページを上位20件ほど書き出します (所要時間の目安: 30分)。
つまずきやすい点は、PageSpeed Insightsに2種類の数値が出ることです。上段の実際のユーザのデータと、下段のその場での測定結果は別物です。合否の判断は実際のユーザのデータ側で行います。
測らずに全面に踏み切ると起きること
測定を省くと、流入のあるページを作り替えてURLまで変えてしまう事故が起きます。URLが変わると新しいURLが検索結果に段階的に表示されるまで中規模のサイトで数週間以上かかることがあり、その間は掲載順位が一時的に変動するとGoogleが説明しています (出典: Google検索セントラル「サイトを移転する方法 (URLの変更あり)」 https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/site-move-with-url-changes?hl=ja)。流入が集まっているページを先に把握しておけば、そのURLだけは変えないという判断ができます。
部分改修で足りるのはどんな場合か
課題がデザインの古さや一部のページの不足にとどまり、URLの構成とCMSを変えずに済むなら、部分改修で足ります。前の節で測った4点のうち、問題が1つか2つに収まっているときが目安です。
デザインの刷新だけで解決する課題
次のような課題は、見た目と組み方を直すだけで解決します。ページのURLは変わりません。
- 画面が狭い端末で文字や表が切れて読めない
- 配色や写真が古く、同業の他社と比べて印象が弱い
- 問い合わせボタンが下まで読まないと見つからない
- 文字が小さく、行間が詰まっていて読みにくい
このうち表示速度に関わるものは、画像の大きさと読み込みの順序を直すだけで改善する場合があります。LCPが基準を外れている原因が最初に表示される大きな画像であれば、作り替えずに差し替えで足ります。
ページの追加と文章の差し替えで足りる課題
「必要な情報が載っていない」という課題は、ページを足せば解決します。既存のURLには手を触れません。
- 料金や事例のページが無く、問い合わせ前に判断できない
- 会社概要の内容が古く、実績や体制が最新でない
- 採用の情報が1ページに詰め込まれている
ページを足す場合に注意するのは、既存ページと同じ検索意図のページを作らないことです。同じ内容のページが並ぶと、どちらを検索結果に出すかをGoogleが選ぶため、意図した側が表示されないことがあります。
CMSを残したまま直せる範囲の見極め
判断の分かれ目は、いま使っているCMSで管理画面から直せるかどうかです。次の順で確認します。
- 管理画面でテンプレートやデザイン設定を変えられるか (所要時間の目安: 30分)
- 必要な項目 (料金表や事例の分類など) を既存の投稿タイプで表現できるか (所要時間の目安: 1時間)
- CMS本体とプラグインが更新を受けられる版かどうか (所要時間の目安: 30分)
1と2が満たせれば部分改修で収まります。3で更新が止まっている版だった場合は、更新のために本体を上げる作業が入り、見た目やプラグインの動作が変わることがあるため、範囲は部分改修より広がります。
つまずきやすい点は、見た目だけを変えるつもりでテーマを入れ替えると、テーマ固有の機能で作られていたページが崩れることです。入れ替えの前に、どのページがテーマの機能に依存しているかを一覧にしておきます。
全面の作り替えが必要になるのはどんな場合か
CMSの移行やサイト構造の組み替え、サーバの移転をともなう場合は、部分改修では収まらず全面の作り替えになります。いずれも、ページを1枚ずつ直す作業ではなく、サイト全体の土台を入れ替える作業です。
CMSを移行する場合
CMSを別のものに移す場合は、全ページのデータを移し替えることになるため、作業範囲はサイト全体になります。判断の目安は次のとおりです。
- 現在のCMS本体がすでに更新を受けられない版で、上げるとテーマやプラグインが動かない
- 必要な項目を既存の構造で表現できず、投稿タイプと管理画面の作り直しが必要になる
- 管理画面が複雑で、社内の担当者が更新を続けられていない
移行の際にURLの形式が変わるかどうかは、移行先の設定で決まります。移行自体は避けられなくても、URLの形式を現在と同じ規則に合わせられるなら、検索への影響は小さく収まります。移行を決めた時点で、URLを変えずに済むかを制作会社に確認しておきます。
サイト構造とURLを組み替える場合
カテゴリやページの親子関係を組み替えると、URLが変わります。この場合はGoogleの言う「URLの変更をともなうサイト移転」に当たります。
Google検索セントラルの「サイトを移転する方法 (URLの変更あり)」(https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/site-move-with-url-changes?hl=ja) によると、サイトの大幅な変更があった場合はGoogleがサイトを再クロールしてインデックスに登録し直す間にランキングが変動することがあり、中規模のウェブサイトでは古いURLの代わりに新しいURLを段階的に表示し始めるまでに数週間以上かかることがあるとされています。あわせて、リダイレクトはできるだけ長く保持することとされ、一般的な目安として1年以上が示されています。
つまずきやすい点は、構造を組み替える目的が「社内の部署の並びに合わせる」ことになっている場合です。検索から来る人の探し方と社内の組織図は一致しないため、URLを変える代償を払う理由になりません。組み替えるのは、現在の構造が原因で必要なページにたどり着けないと測定で確認できた場合に限ります。
サーバやドメインを移す場合
サーバの移転は、URLが変わらない区分に入ります。Google検索セントラルの「サイトを移転する方法 (URLの変更なし)」(https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/site-move-no-url-changes?hl=ja) では、移転直後にGooglebotのクロール頻度が一時的に下がるのは通常の動作であり、その後数日かけて徐々に上がっていくと説明されています。準備として、移転の少なくとも1週間前にDNSのTTLを下げることが示されています。
一方、ドメインそのものを変える場合はURLが変わるため、前項と同じ扱いになります。ドメインを変えるかどうかの判断は論点が多いため、別の記事で詳しく扱います。
| 作業 | URLの変更 | 範囲の目安 |
|---|---|---|
| サーバの移転のみ | なし | 全面の作業だが検索への影響は小さい |
| CMSの移行 (URLの形式を維持) | なし | 全面の作り替え |
| CMSの移行 (URLの形式が変わる) | あり | 全面の作り替えとリダイレクトの保守 |
| サイト構造の組み替え | あり | 全面の作り替えとリダイレクトの保守 |
| ドメインの変更 | あり | 全面の作り替えとリダイレクトの保守 |