技術2026.09.25·9 min read·Nortiq Labs

訪問介護の記録アプリ外注|決める要件7項目

訪問介護の記録アプリを外注するとき、何から決めますか?

最初に決めるのは、記録の入口と出口の2つです。入口とは、誰がどの端末でいつ入力するかのこと。出口とは、入力した内容をどの帳票やどのソフトへ渡すかのことです。

この2つが決まっていないまま見積もりを取ると、提案の前提が会社ごとにばらつきます。結果として、金額だけが比較の材料になってしまいます。

訪問介護の記録アプリとは、訪問先でサービスの実施内容をその場で入力し、事業所と共有するための仕組みです。紙の記録用紙を置き換える範囲をどこまでにするかで、必要な開発量が大きく変わります。

入口と出口を先に決める理由

入口と出口は、御社の運用そのものだからです。外注先はここを決められません。

入口で決めることは、次の3点です。

  1. 入力する人 (訪問するヘルパーか、サービス提供責任者か)
  2. 使う端末 (事業所の貸与端末か、個人の端末か)
  3. 入力するタイミング (サービス終了直後か、その日の最後にまとめてか)

出口で決めることは、次の3点です。

  1. 出力する帳票 (サービス提供記録、連絡帳、実績の集計)
  2. 渡す相手 (既存の介護ソフト、ケアマネジャ、利用者の家族)
  3. 渡す形式 (画面での閲覧、印刷、CSVファイル)

つまずきやすいのは、入力のタイミングです。訪問の直後に入力する前提で画面を作ったのに、実際は移動中で手が離せず、結局まとめ入力に戻る例があります。現場の1日を1件ずつ追ってから決めてください。所要時間の目安は、管理者と現場2名で2時間ほどです。

外注の範囲に含めないものを決める

含めないものを先に書くほうが、要件は早く固まります。

請求と計画の作成は、既存の介護ソフトに残すのが基本です。記録アプリ側で作り直すと、介護報酬の改定のたびに改修が必要になります。この線引きは後述します。

利用者の家族向けの閲覧画面や、シフトの自動作成も、初回の開発では外すことを検討してください。まず記録の二重入力を止めることに絞ると、稼働までの期間が短くなります。範囲の決め方は、発注前の要件シートの手順で改めて整理します。

記録の二重入力は、どこで発生していますか?

紙やメモに書いた内容を、事業所でソフトへ入力し直す工程が二重入力の実体です。同じ内容を2回書いているため、書く回数を減らせば時間はそのまま戻ります。

どこで二重入力が起きているかは、記録の様式ごとに違います。要件を決める前に、様式を1枚ずつ並べて確認してください。

訪問系で紙の記録が残る場面

紙が残りやすいのは、次の3つの場面です。

  1. サービス提供記録に利用者の押印やサインをもらう場面
  2. 利用者宅に置く連絡帳へ、他の事業者向けの申し送りを書く場面
  3. 移動中や電波が届かない場所で、忘れないようにメモを取る場面

いずれも、紙に書いた内容が後から介護ソフトへ入力されます。つまずきやすいのは、3番目のメモです。メモは公式の様式ではないため、運用の棚卸しから漏れがちです。

要件を決める際は、この3場面のうちどれをアプリで置き換えるかを明示します。置き換えないものは紙のまま残す、と書くことも立派な要件です。

様式が事業所ごとに違うと何が起きるか

様式が独自だと、既製のソフトに合わせるか、画面を作り込むかの判断が必要になります。作り込むほど費用は上がります。

記録の整備は、制度の側からも求められています。令和6年度の介護報酬改定では、施設系・居住系・多機能系・短期入所系の事業所に生産性向上委員会の定期開催が義務付けられました。この義務には3年間の経過措置があり、令和8年度末 (2027年3月31日) までは努力義務として扱われます。開催頻度は3か月に1回以上とされています。

出典: 公益財団法人介護労働安定センター『生産性向上のための委員会と生産性向上推進体制加算 解説資料 Ver.3.0』、および厚生労働省の解釈通知に関する報道 (2026年9月時点)

訪問介護はこの委員会の義務の対象ではありません。ただし、生産性向上推進体制加算は加算 (I) が月額100単位、加算 (II) が月額10単位と設定され、加算 (II) はテクノロジーを1種類以上、加算 (I) は3種類すべての導入が要件です。加算 (I) では業務改善の効果を示すデータを1年以内ごとに1回オンラインで提出します。

出典: NDソフトウェア『生産性向上推進体制加算とは?加算を取るための準備のポイントをわかりやすく解説』 (2026年9月時点)

ここから読み取れるのは、記録を後から集計できる形で持つ価値です。様式を独自のまま作り込むより、集計できる項目に整理するほうが、後の説明資料に使えます。

既存の介護ソフトとの接続は、どこまで要件に入れますか?

請求と計画の領域は既存ソフトに残し、記録アプリ側はデータの受け渡し方式だけを要件にするのが現実的です。介護報酬は定期的に改定されるため、請求まで自作すると改修が続きます。

接続の要件は、次の3段階で考えると整理しやすくなります。

  1. 画面で見えればよい (アプリと既存ソフトを別々に使う)
  2. ファイルで渡せればよい (CSVファイルを出力して取り込む)
  3. 自動で連携する (ソフト側のAPIや連携仕様に合わせる)

段階が上がるほど費用と期間は増えます。つまずきやすいのは、既存ソフトの取り込み仕様を発注前に確認していない場合です。既存ソフトの提供元に、取り込み可能なファイル形式を文書でもらってください。所要時間の目安は、問い合わせから回答まで1週間程度です。

LIFEへのCSV連携をどう扱うか

LIFE (科学的介護情報システム) とは、介護の状態やケアの内容を提出し、分析結果の提供を受ける国の仕組みです。厚生労働省老健局は「科学的介護情報システム (LIFE) CSV連携仕様について」を公開しており、現行は3.00版 (令和6年4月) です。介護ソフトが出力したCSVファイルをLIFEが取り込む方式が定められています。

出典: 厚生労働省老健局『科学的介護情報システム (LIFE) CSV連携仕様について【3.00版】』 (令和6年4月)

新しく作る記録アプリに、この仕様に沿った出力を持たせるかどうかが要件の分かれ目です。既存ソフトがLIFEへの提出を担っているなら、記録アプリは既存ソフトへ渡す形式だけを満たせば足ります。二重に実装しないでください。

ケアプラン連携標準仕様への準拠の要否

準拠が要るかどうかは、補助金を使うかどうかで変わります。自治体の介護サービス事業所ICT導入支援事業では、補助の対象となる介護ソフトの条件として、ケアプラン連携標準仕様に準拠し、サービス類型に応じて居宅サービス計画書とサービス利用票のCSVファイルの出力・取込機能を実装していることが挙げられています。

出典: 千葉県『介護テクノロジー定着支援事業費補助金 (ICT導入支援事業)』、愛知県『介護事業所ICT導入支援事業』 (2026年9月時点)

補助金の扱いは後述します。ここでは、準拠の要否を先に決めておくと見積もりの前提が揃う、という点だけ押さえてください。

なお、現場のICT利用の状況は、公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度 介護労働実態調査」で確認できます。同調査は全国の介護保険サービス事業所18,000事業所を無作為に抽出し、有効回答は9,044事業所、回収率は52.9%でした。サービス種別ごとの利用状況が公表されているため、自社の立ち位置を測る材料になります。

出典: 公益財団法人介護労働安定センター『令和6年度 介護労働実態調査結果について』

利用者の情報を事業所の外で扱う要件は、どう書きますか?

端末の紛失時の扱い、アクセス権の範囲、クラウド事業者を含む委託先の管理を、公的なガイダンスに沿って書面化します。訪問先で入力する情報には利用者の心身の状況が含まれ、これは要配慮個人情報にあたります。

根拠になるのは、厚生労働省と個人情報保護委員会の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」です。平成29年4月14日の通知で、令和8年4月1日が最終改正です。安全管理措置、従業者の監督、委託先の監督、漏えい等の報告について定めています。

出典: 個人情報保護委員会『医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス』 (令和8年4月1日最終改正)

要件書では、このガイダンスの項目名をそのまま見出しに使うと漏れが減ります。提案を受け取る側も、どこに対応した記述なのかが分かります。

端末とアカウントの要件

端末については、次の5点を決めます。

  1. 端末の所有者 (事業所の貸与か、個人の持ち込みか)
  2. 画面ロックと生体認証の要否
  3. 端末に記録を保存するか、通信のたびに消すか
  4. 紛失時に遠隔でデータを消せるか
  5. 退職時にアカウントを止める手順と担当者

つまずきやすいのは3番目です。電波が届かない訪問先でも入力できるようにすると、端末の中に一時的にデータが残ります。オフライン対応と端末内にデータを残さない方針は両立しないため、どちらを優先するかを先に決めてください。所要時間の目安は、管理者と外注先で1時間の打ち合わせ1回です。

アクセス権は、担当する利用者の記録だけを見られる範囲にするのが基本です。全員の記録を全員が見られる設計は、後から絞り込むのが難しくなります。

委託先の監督をどう書くか

委託先の監督とは、記録の保管や処理を任せた相手を、御社が管理することです。クラウドでデータを預かる外注先も、この委託先にあたります。

要件書と契約書に、次の4点を書いておきます。

  1. データを保管する場所 (国内か国外か)
  2. 再委託の可否と、再委託先を通知する義務
  3. 漏えいが起きたときの連絡先と、連絡までの時間
  4. 契約が終わったときのデータの返却または削除の方法

このうち4番目は、見積もりの段階で確認してください。データの取り出しに追加費用がかかる契約もあります。比較の観点は後述します。

補助金を使うなら、要件に何を足しますか?

自治体のICT導入支援事業を使う場合は、補助の対象となるソフトの条件を要件に先に織り込みます。作ってから条件に合わないと分かっても、後から直す費用は補助の対象になりません。

補助の対象は、厚生労働省と経済産業省が定める「介護テクノロジー利用の重点分野」に該当する介護ソフト等の導入経費とされています。

出典: 鹿児島県『令和7年度介護サービス事業所ICT導入支援事業』、厚生労働省『介護テクノロジーの利用促進』 (2026年9月時点)

対象になる経費の考え方

対象になりやすいのは、導入そのものにかかる経費です。運用の途中で発生する費用は、対象外になることがあります。

要件を書くときは、次の区分で費用を分けて見積もりをもらってください。

  1. 初期の導入費用 (設計、開発、設定、データの移行)
  2. 端末やネットワークの費用
  3. 導入時の研修の費用
  4. 月額の利用料と保守の費用

つまずきやすいのは、見積書が一式でまとまっている場合です。区分が分かれていないと、どこまでが補助の対象か申請の担当者が判断できません。見積もりを依頼する時点で、この4区分での記載を条件にしてください。所要時間の目安は、依頼の一文を追記するだけなので数分です。

申請の前に確認する順序

順序を間違えると、要件を作り直すことになります。次の順で進めてください。

  1. 自治体の今年度の募集要項を読む (募集期間と対象事業者を確認する)
  2. 対象となるソフトの条件を抜き出す (標準仕様への準拠の有無を含む)
  3. 抜き出した条件を、そのまま要件書の項目に転記する
  4. 外注先へ、その条件を満たせるかを文書で回答してもらう
  5. 見積もりを4区分で受け取り、申請書に添付する

2番目で確認する条件には、ケアプラン連携標準仕様への準拠が含まれます。詳細は前述のとおりです。

つまずきやすいのは1番目です。募集は年度ごとに内容が変わり、募集期間も短い場合があります。開発の着手時期と募集期間がずれると、その年度は使えません。要件を固める前に、募集の時期だけでも確認しておくと安全です。

なお、補助金の要件は自治体によって異なります。千葉県や愛知県のように、対象ソフトの機能要件を明示している例もあります。御社の所在地の自治体の資料を必ず一次で確認してください。

発注前に埋める要件シートの手順は?

現場の1日の記録の流れを書き出し、項目、端末、権限、出力、保守の順で7項目を埋めます。ここまでに決めた内容を1枚にまとめる作業です。

シートは表計算ソフトで構いません。項目名と、決めた内容と、決めた人の3列があれば足ります。

手順1から3: 現状の記録を洗い出す

  1. 1日の記録の流れを書き出す。朝の申し送りから、訪問、帰社後の入力までを時刻つきで並べます。所要時間の目安は、現場2名への聞き取りで半日です。
  2. 記録の様式を全部集める。サービス提供記録、連絡帳、日報、ヒヤリハットの報告まで含めます。つまずきやすいのは、個人が独自に作ったExcelの表が出てこない点です。「使っている紙とファイルを全部見せてください」と依頼してください。
  3. 入力項目を一覧にする。様式ごとに項目名を並べ、同じ内容を指す項目に印を付けます。この印が、二重入力を止める対象になります。

3番目の一覧は、そのまま外注先への提出資料になります。画面の絵を描く必要はありません。項目と、必須か任意か、選択肢の有無が分かれば、見積もりは出ます。

手順4から7: 出力と保守まで決める

  1. 端末と権限を決める。誰がどの端末を使い、どの利用者の記録を見られるかを書きます。つまずきやすいのは、管理者の権限を1人にしてしまう点です。退職や休職のときに誰も操作できなくなります。
  2. 出力する形式を決める。印刷、PDF、CSVのどれが必要かを、提出先ごとに書きます。所要時間の目安は1時間です。
  3. 保守の範囲を決める。障害時の連絡先と対応時間、月々の問い合わせの上限、OSの更新への追随を書きます。訪問先で使うため、端末のOS更新に追随できるかは必ず確認してください。
  4. 移行と教育を決める。過去の記録をどこまで移すか、誰がいつ操作を覚えるかを書きます。過去分を全部移すと費用が増えるため、直近1年だけにする判断もあります。

7項目が埋まったら、外注先に渡す前に現場のヘルパー1名に読んでもらってください。運用と合わない箇所は、この段階でほぼ見つかります。

外注先の提案は、どこを見て比べますか?

画面の見た目ではなく、オフライン時の挙動、データの持ち出し方法、保守の範囲の3点で比べます。見た目は導入後にも直せますが、この3点は設計に関わるため後から変えにくい部分です。

提案書を並べたら、次の表の項目を埋めてみてください。空欄が多い提案は、前提の確認が足りていません。

比較の項目 確認すること
オフライン時の挙動 電波が無い場所で入力できるか。復帰後にどう同期するか
データの持ち出し CSV等で全件を出力できるか。費用がかかるか
保守の範囲 障害時の連絡方法と対応時間。OS更新への追随
追加開発の単価 項目の追加や帳票の変更にいくらかかるか
稼働までの期間 要件確定から本稼働までの週数

電波が届かない訪問先での挙動

オフライン対応とは、通信が無い状態でも入力でき、後から自動で同期する仕組みのことです。訪問介護では、建物の構造によって電波が届かない場面があります。

確認したいのは、同期のときに衝突が起きた場合の扱いです。同じ記録を、現場の端末と事務所のパソコンで別々に直すと、どちらを残すかの判断が必要になります。実装する側から見ると、ここが最も設計が分かれる箇所です。「後から直した方を残す」のか「警告を出して人が選ぶ」のかを、提案書に書いてもらってください。

書かれていない場合は、そもそもオフラインを想定していない可能性があります。

契約終了時にデータを取り出せるか

取り出せるかどうかは、契約書ではなく操作の手順で確認します。「エクスポート機能がある」という回答だけでは不十分です。

次の3点を質問してください。

  1. 出力できる範囲 (全期間か、直近だけか)
  2. 出力の形式 (CSV、PDF、画像の添付ファイルを含むか)
  3. 作業を誰が行うか (自社で操作できるか、依頼が必要か)

介護の記録は保存義務のある書類を含みます。乗り換えや解約のときに読めない形式でしか出せないと、紙に印刷して保管することになります。

当社もWeb制作と業務システムの開発を手がけており、訪問業務の記録のように現場で入力する仕組みでは、まずこの3点を先に決めてから見積もりを作ります。要件の整理から一緒に進めたい場合は、無料診断で現在の記録の流れをお聞かせください。作るものを絞る相談だけでも承ります。

よくあるご質問

この記事に関して多い質問と回答をまとめます。要件を決める前の判断材料としてお読みください。

訪問介護の記録アプリは、既存の介護ソフトを入れ替えないと使えませんか?

入れ替えなくても使えます。記録アプリは記録の入力に役割を絞り、請求や計画の作成は既存ソフトに残す構成が一般的です。

確認が必要なのは、既存ソフトがどの形式でデータを取り込めるかの1点です。取り込みの仕様を提供元からもらってから、外注先に渡してください。

電波が届かない訪問先でも記録を入力できますか?

オフライン対応を要件に入れれば入力できます。入力した内容は端末に一時保存され、通信が回復したときに送信されます。

ただし、端末に一時保存する以上、端末内にデータが残ります。紛失時の扱いをどうするかと併せて決めてください。

個人のスマートフォンで記録を入力させても問題ありませんか?

運用と要件を整えれば可能ですが、決めることが増えます。私物の端末を使う場合、画面ロックの強制、業務データと私用データの分離、退職時のデータ削除の方法を先に決める必要があります。

端末代を抑えられる一方で、管理の手間は増えます。台数が少ないうちは貸与端末のほうが簡単です。

記録アプリの開発費用は、補助金の対象になりますか?

自治体によって異なります。介護サービス事業所ICT導入支援事業では、補助の対象となるソフトの条件が定められており、標準仕様への準拠が求められる場合があります。

御社の所在地の自治体が公表している今年度の募集要項を確認してください。募集期間が短いことがあるため、開発の着手前に調べることをおすすめします。

外注先との契約が終わったあと、記録データは取り出せますか?

契約前に確認しておかないと、取り出せない場合があります。出力できる期間の範囲、形式、作業を誰が行うかの3点を、見積もりの段階で質問してください。

介護の記録には保存義務のある書類が含まれます。読める形式で全件を出力できることを、契約書に書いておくと安全です。

記録の要件整理から外注先の比較まで、判断に迷う点があればお問い合わせからご相談ください。

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監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

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