懸念の中身より先に目に入るのは、方針を定めている会社の少なさです
総務省の情報通信白書では、生成AIの活用方針を定めている企業の割合に企業規模による差が示されています。懸念を挙げる会社は多い一方、方針という形にしている会社は限られます。
最初に見る数字
生成AIを活用する方針を定めている企業の比率は、日本の大企業で約56パーセント、日本の中小企業で約34パーセントです。全体では2024年度調査で約50パーセント、2023年度調査では約43パーセントでした (出典: 総務省『令和7年版情報通信白書 (概要)』(令和7年))。
| 区分 | 方針を定めている企業の比率 |
|---|---|
| 日本全体 (2024年度調査) | 約50% |
| 日本全体 (2023年度調査) | 約43% |
| 日本の大企業 | 約56% |
| 日本の中小企業 | 約34% |
大企業と中小企業の差は20ポイント以上あります。全体の比率が1年で上がっている一方、中小企業は3社に1社という水準にとどまっています。
懸念と方針は別の話
同じ白書では、生成AI導入に際しての懸念事項として、日本で最も多かったのは「効果的な活用方法がわからない」で30.1パーセント、次に「社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある」が27.6パーセントでした (出典: 総務省『令和7年版情報通信白書』第1部第1章第2節 図表Ⅰ-1-2-15 (令和7年))。
ここで読み取れるのは、懸念の中身が「危ない」よりも「どう使えばよいか分からない」に寄っているという点です。使い方が分からない状態では方針も書けないため、懸念と方針の少なさは同じ原因から来ている可能性があります。
この記事で扱う統計の範囲
この記事で扱う数字は、総務省の令和7年版情報通信白書の図表Ⅰ-1-2-15、図表Ⅰ-1-2-16、および概要資料によるものです。懸念事項の内訳と、方針の策定状況を順に見ていきます。
なお、生成AIの活用による自社への影響として日本で最も多く挙げられたのは「業務効率化や人員不足の解消につながる」で32.8パーセントでした (出典: 総務省『令和7年版情報通信白書』第1部第1章第2節 図表Ⅰ-1-2-16 (令和7年))。期待の内容と懸念の内容を並べて見ると、社内で何を決めればよいのかが見えやすくなります。
統計の出どころと読み方
この記事で扱う数字は、総務省の令和7年版情報通信白書の図表と概要資料によるものです。調査の対象と年次を押さえておくと、社内の説明で数字の意味を取り違えずに済みます。
出典と年次
参照しているのは次の3つです。
| 参照先 | 扱っている内容 |
|---|---|
| 図表Ⅰ-1-2-15 | 生成AI導入に際しての懸念事項の内訳 |
| 図表Ⅰ-1-2-16 | 生成AIの活用による自社への影響 |
| 概要資料 | 生成AIを活用する方針を定めている企業の比率 |
出典の書き方は、出典: 総務省『令和7年版情報通信白書』(令和7年) の形で統一します。数値を社内の資料に転記するときも、この表記をそのまま添えると、後から出どころを確認できます。
企業規模の区分
方針の策定率は、大企業と中小企業に分けて示されています。日本の大企業は約56パーセント、日本の中小企業は約34パーセントです (出典: 総務省『令和7年版情報通信白書 (概要)』(令和7年))。白書の区分に従った数値であるため、自社がどちらに当たるかは、白書の定義を確認したうえで当てはめます。
割合の分母に注意する
懸念事項の割合は、複数の項目を挙げられる形式で集計されています。日本で最も多かった「効果的な活用方法がわからない」が30.1パーセント、「社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある」が27.6パーセント、「ランニングコストが掛かる」が24.9パーセント、「初期コストが掛かる」が22.1パーセントと、いずれも3割前後で並びます (出典: 総務省『令和7年版情報通信白書』第1部第1章第2節 図表Ⅰ-1-2-15 (令和7年))。
合計が100パーセントにならないのは、1社が複数の懸念を挙げているためです。ここを誤って「7割の会社は懸念がない」と読むと、説明が成り立たなくなります。項目ごとの割合として見るのが正しい読み方です。
方針の策定率については、2024年度調査で約50パーセント、2023年度調査で約43パーセントと、年次による比較ができる形で示されています (出典: 総務省『令和7年版情報通信白書 (概要)』(令和7年))。次の章では、懸念事項の内訳を項目別に見ていきます。
懸念事項として挙げられている項目
白書では、生成AIの導入にあたっての懸念事項が項目別に示されており、情報漏えいや出力の正確性に関する項目が並びます。上位の項目はいずれも3割前後で、どれかが突出しているわけではありません。
項目の並び方
日本の回答では、次の順に並んでいます (出典: 総務省『令和7年版情報通信白書』第1部第1章第2節 図表Ⅰ-1-2-15 (令和7年))。
| 懸念事項 | 割合 |
|---|---|
| 効果的な活用方法がわからない | 30.1% |
| 社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある | 27.6% |
| ランニングコストが掛かる | 24.9% |
| 初期コストが掛かる | 22.1% |
最も多い項目が「効果的な活用方法がわからない」であることは、導入の相談を受ける立場から見ても実感と合います。危険だから止めているのではなく、どこに使えば効くのかが決まらないまま止まっている状態です。
情報漏えいに関する懸念の位置
「社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある」は27.6パーセントで、2番目に挙げられています (同上)。1番目との差は2.5ポイントであり、ほぼ並んでいると見るのが妥当です。
この項目は、対策の形がはっきりしているという点で他と性質が違います。活用方法が分からないという懸念は、使ってみる以外に解消の手がありません。一方で情報漏えいの懸念は、入力してよい情報の範囲を決め、使うツールのデータの取り扱いを確認するという作業に分解できます。後の章でその手順を扱います。
グラフで見ると分かること
この4項目を横棒グラフにすると、棒の長さがほぼそろった図になります。上位の項目が3割前後で並ぶため、「最大の懸念はこれだ」という読み方はできません。図を社内で示すときは、順位ではなく「どれも3割前後で、特定の懸念だけが突出しているわけではない」という点を添えます。
コストに関する2項目 (ランニングコストが24.9パーセント、初期コストが22.1パーセント) を合わせて見ると、費用の話も活用方法やセキュリティと同じ重さで並んでいることが分かります。導入の検討では、この3つの論点を同時に扱う必要があるという示唆になります。
方針の策定状況を企業規模別に見る
活用方針の策定率は企業規模によって差があり、規模が小さいほど低い傾向が示されています。全体の策定率は49.7パーセントで、前年度調査の42.7パーセントから上がっています (出典: 総務省『令和7年版情報通信白書(概要)』(2025年7月))。
規模別の差
規模別の数値は次のとおりです。
| 区分 | 生成AI活用方針を定めている割合 |
|---|---|
| 大企業 | 約56% |
| 中小企業 | 約34% |
| 全体 (当年度) | 49.7% |
| 全体 (前年度調査) | 42.7% |
大企業は約56パーセント、中小企業は約34パーセントです (出典: 総務省『令和7年版情報通信白書|企業におけるAI利用の現状』(令和7年))。差は20ポイント以上あり、全体の数値は大企業側に引かれた形になっています。自社の立ち位置を見るときは、全体の49.7パーセントではなく、中小企業の約34パーセントと比べるほうが実態に近くなります。
方針がない状態で起きること
同じ白書では、何らかの業務で生成AIを利用していると回答した企業の割合は55.2パーセントです (同上)。方針を定めている企業が約50パーセント、利用している企業が55.2パーセントであることを並べると、方針がないまま使っている企業が一定数いる形になります。
参考として、日本における生成AIの個人利用率は26.7パーセントです (出典: 総務省『令和7年版情報通信白書|個人におけるAI利用の現状』(令和7年))。会社としての利用の広がりと、個人の利用の広がりには差があります。
方針がない状態で現場が使い始めると、何を入力してよいかの判断が個人に委ねられます。前の章で見たとおり、情報漏えいへの懸念は27.6パーセントの企業が挙げている項目です。懸念を持ちながら線を引いていない状態が、数値の上では見えてきます。
グラフで見ると分かること
大企業と中小企業の2本を並べた棒グラフにすると、20ポイント以上の段差が視覚的に出ます。社内で示すときは、この段差に加えて、全体の数値が前年度から7ポイント上がっていることを併記します。方針を作る会社が増えている流れの中で、中小企業の水準が3社に1社であるという2つの事実を同時に見せると、判断の材料になります。