技術2026.09.27·12 min read·Nortiq Labs

属人化したExcelを業務システムへ引き継ぐ手順

中身の分からないExcelは、何から手をつけますか?

マクロの解読ではなく、入力と出力の記録から始めます。誰が何を入力し、どの帳票や数字が出ていくのかを1枚の表にします。中のロジックが読めなくても、それが外注の起点になります。

順序を逆にすると止まります。解読から始めた案件は、着手の翌週には手が止まるのが通例です。

最初に作るのは入力と出力の一覧

作るのは1枚の表です。列は4つで足ります。

列 書く内容 記入の例
入力するもの 誰が、どこから、何を入れるか 営業担当が受注メールから品番と数量を入力
出てくるもの 誰が、どの形式で受け取るか 経理が月初に売上一覧をPDFで受け取る
頻度 毎日、週次、月次のどれか 入力は毎日、集計は月初の3営業日
例外の処理 手で直している箇所 返品があった月だけ担当者が数字を手で引く

書き方の手順は次のとおりです。

  1. 月次で必ず出している帳票と数字を洗い出す (所要1時間)
  2. その帳票ごとに、元になる入力の画面またはファイルを辿る (所要2時間)
  3. 辿れなかった箇所に印を付けて残す (所要30分)
  4. 実際に操作している担当者に、印を付けた箇所だけを聞く (1件あたり所要15分)

つまずきやすいのは3番目です。辿れない箇所を空欄で放置すると、後で誰も気づきません。分からないという情報も記録として価値があります。印を付けて残してください。

マクロの解読を先にやらない理由

解読は目的ではなく手段だからです。目的は、外注先が同じ結果を出せる仕組みを作ることです。同じ結果の定義が先に決まっていなければ、解読しても使い道がありません。

そして、解読には終わりが見えません。マクロが別のファイルを参照し、その先でさらに別のマクロを呼ぶ構成は珍しくありません。読み進めるほど範囲が広がります。

一方、入力と出力の記録には終わりがあります。帳票の数だけ書けば完了します。先に終わる作業から着手するのが実務的です。

着手の判断に使える公的なデータ

読者の状況は珍しいものではありません。営業事務担当者221人を対象とした調査では、64.2%が前任者の関数やマクロの解読に苦労していると回答しています。複数人でファイルを共有するときの課題では、読み取り専用になり作業が中断するという回答が33.2%で最多でした。

出典: NTTデータビジネスブレインズ「営業事務のExcel属人化に関する調査」(2026年、営業事務担当者221人、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000103389.html)

社内で情報を共有しているかどうかで、可視化の進み方も分かれます。経済産業省とデジタル庁、IPAが参画した委員会のレポートでは、システムに関する情報が社内で適切に共有されている企業のうち71%がIT資産の棚卸しや可視化に取り組めているとされています。共有されていない企業では、66%でIT資産の可視化ができていません。

出典: レガシーシステムモダン化委員会総括レポート (2025年5月28日公表、https://digital-agency-news.digital.go.jp/articles/2025-08-27-1)

この数値は、記録を作る作業そのものが可視化の第一歩であることを示します。入力と出力の一覧は、社内で共有できる最初の資料になります。

なお、同レポートではレガシーシステムが残存している企業の割合も示されています。全産業分野で61%、大企業で74%、中小企業で約50%です (出典: 同レポート)。古い仕組みを抱えたまま運用している状態は、中小企業でも半数程度あるという前提で考えてよいことになります。

現行のExcelを渡すだけでは、なぜ足りないのですか?

ファイルには「今どう動いているか」しか入っていないためです。「なぜそうしているか」は入っていません。業務上の判断が数式に埋め込まれていると、外注先は再現すべきかどうかを決められません。

具体例で言えば、税率の端数を切り捨てている数式があったとします。それが会計上の方針なのか、誰かの入力ミスなのか、ファイルからは判別できません。

ファイルに残っていない情報の種類

残っていないのは次の4種類です。いずれも人の頭の中か、口伝えの運用にあります。

残っていない情報 具体例 記録しないと起きること
判断の理由 特定の取引先だけ集計から除いている 再現すべき仕様か不具合か判断できません
例外時の対応 月をまたぐ返品を手で調整している 移行後に同じ数字が出ません
使っていない箇所 3年前に使った列が残っている 不要な機能まで見積もりに入ります
誰が何をするか 承認は部長が口頭で行っている 権限の設計が抜けます

このうち最も見積もりに影響するのは、3番目の使っていない箇所です。外注先はファイルにある列とシートを見て工数を積みます。使っていないことは、御社が伝えなければ分かりません。

例外処理と手作業の補正が見積もりを膨らませる仕組み

例外処理は、数が多いのではなく境界が曖昧なことが問題です。境界が決まっていない仕様は、開発の途中で判断を仰ぐ往復を生みます。

往復の回数がそのまま期間になります。仕様の確認が1件増えるごとに、回答待ちの日数が加算されます。10件の曖昧な箇所があれば、それだけで数週間が動きます。

対策は、例外を網羅することではありません。次の3つに分類しておくことです。

  1. 移行後も必要な例外 (仕様として書き起こします)
  2. 移行を機にやめる例外 (対象外として明記します)
  3. 判断がつかない例外 (発注前に社内で決める項目として残します)

3番目を空欄のまま発注しないことが要点です。判断がつかないものは、外注先も判断できません。発注前に決めるか、決められないことを明示するかのどちらかにしてください。

情報を社内で共有できているかが分かれ目になります

ここで効いてくるのが、社内での情報共有です。経済産業省とデジタル庁、IPAが参画した委員会のレポートでは、システムに関する情報が社内で適切に共有されている企業のうち71%がIT資産の棚卸しや可視化に取り組めているとされています。共有されていない企業では66%でIT資産の可視化ができていません。

出典: レガシーシステムモダン化委員会総括レポート (2025年5月28日公表、https://digital-agency-news.digital.go.jp/articles/2025-08-27-1)

つまり、可視化ができるかどうかは技術の問題ではありません。情報を社内で共有する運用があるかどうかの問題です。

当社が業務システムの引き継ぎで最初に確認するのも、ファイルの中身ではありません。誰がその運用の理由を説明できるかです。説明できる人が社内にいる段階で着手すれば、記録は数日でまとまります。説明できる人が既に退職している場合、実際の操作を1か月観察して復元する作業が必要になります。この差が、そのまま初期の期間と費用の差になります。

記録すべき項目の具体は次のセクションで扱います。

何を棚卸しして記録しますか?

入力項目、出力帳票、処理の頻度、例外処理の4種類を記録します。この4つが揃えば、マクロが読めなくても外注先が要件を起こせます。

逆に言えば、この4つ以外は最初は不要です。画面の色や配置の希望は、要件が固まった後で構いません。

記録する4種類と書き方

書式は自由ですが、項目は揃えてください。1つの帳票につき1行が基本です。

記録する種類 書く粒度 悪い例 良い例
入力項目 項目名、入力する人、元になる情報 受注データ 品番、数量、納期。営業担当が受注メールから入力
出力帳票 帳票名、受け取る人、形式、締め 売上レポート 月次売上一覧。経理が月初3営業日までにPDFで受領
処理の頻度 入力と集計を分けて書く 毎月 入力は毎日、集計は月初、締めは5営業日目
例外処理 条件と、そのときの手作業 イレギュラー対応あり 返品があった月は担当者が売上から手で減算

悪い例と良い例の違いは、第三者が読んで同じ動作を再現できるかどうかです。「受注データ」では再現できません。項目名まで書いてください。

作成の手順は次のとおりです。

  1. 出力帳票を先に全部並べる (所要1時間。数が有限なので終わりが見えます)
  2. 帳票ごとに、必要な入力項目を書き出す (帳票1つあたり所要30分)
  3. 入力と集計の頻度を、実際の締めの日付で書く (所要1時間)
  4. 例外処理を、前のセクションの3分類に振り分ける (所要2時間)

つまずきやすいのは1番目です。帳票は社内で共有されているものだけではありません。担当者が自分用に作っている集計が抜けがちです。

1か月分の実際の操作を観察して記録する

前任者が既にいない場合は、観察で復元します。推測で書くと、移行後に数字が合わなくなります。

観察の進め方は次の3点です。

  1. 月初から月末まで、操作した日付と内容を担当者に記録してもらう
  2. 月次の締めの作業だけは、同席して手順を見る
  3. 手で数字を直した箇所は、その場で理由を聞いて書き残す

2番目を同席で行う理由があります。締めの作業は手順が多く、後から思い出して書いてもらうと抜けます。年に1回しか動かない処理は、この1か月では拾えません。拾えなかったことも記録に残してください。

つまずきやすい点 (担当者ごとの別ファイル)

実装の現場で最も手が止まるのが、同じ内容のファイルが担当者ごとに分かれている状態です。ファイル名が似ていて、中の列が微妙に違います。

どれが正しいのかを決めないまま移行すると、移行後の数字がどのファイルとも一致しません。着手の前に次を決めてください。

  1. どのファイルを正とするか
  2. 正としたファイルに無い列を、他のファイルから拾うかどうか
  3. 拾う場合、どの期間から拾うか

3番目は費用に直結します。過去5年分を統合するのか、今期分だけでよいのかで、移行の作業量が変わります。過去分は参照用に元のファイルを残す方針にすると、移行の範囲を絞れます。

マクロの解読を誰がどこまで行うかは、次のセクションで扱います。

マクロの中身は誰が、どこまで調べますか?

解読は外注先の作業として発注します。自社は解読の対象範囲を絞る役割を持ちます。全マクロを読むのではなく、月次で必ず動かすものだけを対象にすると調査の工数が収まります。

自社で読もうとしないでください。読めないから外注するのであり、読めるようになることは目的ではありません。

解読を発注するときの範囲の指定

範囲は3つの軸で指定します。ファイル、処理、期間です。

軸 指定の仕方 例
ファイル 対象のファイル名を列挙する 売上管理.xlsm と 請求一覧.xlsm の2ファイル
処理 実行のきっかけで指定する 月次集計ボタンから動く処理のみ
期間 調査に充てる期間を上限で示す 2週間を上限とし、残りは報告のうえ判断する

3番目の期間の上限が重要です。上限を決めずに調査を発注すると、費用の見通しが立ちません。上限に達した時点で判断を挟む取り決めにしてください。

発注の手順は次のとおりです。

  1. 前のセクションで作った記録を渡し、調査の目的を出力の再現と明記する (所要30分)
  2. 対象のファイルと処理を列挙する (所要1時間)
  3. 調査の期間の上限と、上限到達時の進め方を契約に書く (所要1時間)
  4. 成果物の形式を指定する (所要30分)

つまずきやすいのは4番目です。成果物を指定しないと、調査の結果が口頭の報告で終わります。後で別の会社に依頼する場合、同じ調査をもう一度発注することになります。

実装者視点で手が止まる箇所 (外部参照と手動の並べ替え)

当社が実際に解読で時間を取られるのは、次の2つです。いずれも御社が事前に把握していれば、調査が短くなります。

1つ目は外部参照です。マクロや数式が、別のファイルやネットワーク上の共有フォルダを参照している構成です。参照先のファイルが移動や改名されていると、値だけが残って計算式が追えません。この場合、当時の参照先を知っている人の記憶が唯一の手がかりになります。

2つ目は手動の並べ替えです。マクロが「上から3行目を集計する」という前提で書かれていることがあります。並べ替えの順序が担当者の操作に依存していると、処理の前提が記録に残りません。移行後に別の行を拾う不具合につながります。

事前に確認していただきたいのは次の2点です。

  1. 他のファイルを参照している数式があるか。ファイル名だけでも分かれば十分です
  2. 処理の前に手で並べ替える手順があるか。あれば、その並べ替えの基準

この2点が分かっているだけで、調査の初期の手戻りが減ります。分からない場合も、分からないと伝えてください。前提がない状態で調査を始める見積もりになります。

調査の成果物として何を受け取るか

受け取るのは次の3点です。形式は文書で受け取り、社内で保管してください。

成果物 中身 使い道
処理の一覧 どのボタンが何をするか、入力と出力の対応 要件定義の元資料になります
再現できない箇所の一覧 参照先が不明、前提が不明な処理 社内で判断する項目になります
移行の方針の提案 そのまま再現するか、仕組みを変えるか 見積もりの前提になります

2番目の一覧が、実務上最も価値があります。分からない箇所が文書として残れば、社内の誰かが心当たりを思い出せる可能性が残ります。口頭の報告では残りません。

なお、この調査を発注した会社に、そのまま開発を発注する義務はありません。調査の成果物を受け取っていれば、他社にも同じ資料で見積もりを依頼できます。調査と開発を分けて発注できる契約になっているかは、発注前に確認してください。

移行の対象から外してよいものはありますか?

外せます。使われていない列とシート、そして過去のデータの保管だけを目的にしたファイルは対象外にできます。すべてを移す前提にすると、費用と期間が現行の規模のまま膨らみます。

外注先は、御社が対象外と言わない限り全部を対象として積みます。伝えることで初めて減ります。

外す判断の基準

判断は次の4つの基準で行います。迷ったら残す側に倒してください。

対象 外す基準 判断のしかた
列 直近1年で1度も値が入っていない 該当列を上から下まで確認します
シート 参照もされず、印刷も出力もされていない 数式の参照元と帳票の出力元を辿ります
ファイル 過去データの保管のみが目的 最終更新日と、参照している人がいるかを確認します
帳票 出しているが誰も見ていない 受け取る人に、使っているかを直接聞きます

4番目が最も減ります。過去の経緯で出し続けている帳票は、意外に多く見つかります。受け取る側に聞けば、不要と分かるものがあります。

確認の手順は次のとおりです。

  1. 前のセクションで作った出力帳票の一覧に、受け取る人の名前を入れる (所要30分)
  2. その人に、その帳票を使っているかを聞く (1件あたり所要10分)
  3. 使っていない帳票を対象外の一覧に移す (所要30分)
  4. 対象外にした帳票に紐づく入力項目が他で使われていないかを確認する (所要1時間)

つまずきやすいのは4番目です。帳票を外しても、その入力項目が別の帳票で使われていることがあります。入力項目まで一緒に外すと、残した帳票が出せなくなります。

外したものの扱いを決めておく

外したものを消すかどうかは別の判断です。次の3つのうちどれにするかを決めてください。

  1. 元のExcelファイルを読み取り専用で保管する (移行の費用は増えません)
  2. 過去データを新しいシステムに参照用として取り込む (移行の費用が増えます)
  3. 廃棄する (社内の保管規程と法令上の保存期間を確認してください)

現実的なのは1番です。元のファイルを共有フォルダに読み取り専用で置き、いつまで保管するかを決めておきます。新しいシステムに取り込む必要が後で出た場合も、ファイルが残っていれば対応できます。

3番を選ぶ場合は注意が必要です。帳簿や書類には法令上の保存期間が定められているものがあります。判断の前に、社内の保管規程と該当する法令の保存期間を確認してください。この記事では保存期間の個別の要件には踏み込みません。

対象と対象外を分けた一覧は、そのまま見積もりの前提資料になります。この一覧が無い見積もりは、後から範囲の解釈が変わる余地を残します。最後のセクションで、渡す資料としてまとめます。

納品後に誰がこのシステムを運用するのかは、次のセクションで扱います。移行の範囲を決める段階で、運用の担い手も併せて考えてください。範囲を広げれば、運用で覚えることも増えます。

納品後に誰が運用しますか?

移行の前に、運用と保守を誰が担うかを決めます。社内にシステムの担当者がいない状態のまま納品されると、Excelの属人化を別の形で再現することになります。

具体的には、項目を1つ追加したいときに外注先へ都度依頼することになります。依頼できる人が1人だけなら、その人が新しい属人化の起点です。

社内の担当者の状況を公的なデータで確認する

まず、自社の状況が一般的かどうかを確認してください。民間の調査では、システム担当者がいない中小企業は全体の3割弱とされています。従業員10人から29人の規模では5割弱です。日常的な取引や情報管理にデジタルを利用していない中小企業も5割弱と報告されています。

出典: 株式会社kubell 調査 (2025年12月公表、https://www.kubell.com/news/2025/12/research.html)

担当者がいる場合も、専任かどうかで状況が変わります。年商5億円から50億円の層では、IT担当が専任である割合が16.7%、兼任である割合が61.1%と報告されています。年商500億円未満の中堅・中小企業で、担当者が1人だけの体制の割合は24.5%です。2023年時点の21.3%から増えています。

出典: ノークリサーチ 調査 (TechTargetジャパン報道 https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2510/24/news11.html 、IT Leaders報道 https://it.impress.co.jp/articles/-/28482)

この数値が意味するのは、兼任が標準であるという前提です。兼任の担当者に、納品後の運用と機能追加の判断を両方任せる設計は現実的ではありません。

将来の見通しも押さえておいてください。経済産業省の調査では、2030年に見込まれるIT人材の不足数は最大で79万人とされています (出典: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_06_00.pdf)。採用で解決する前提は置きにくい状況です。

保守を外注する場合に決めておく範囲

外注する場合、契約の範囲を4つに分けて決めます。境界が曖昧なままにすると、依頼のたびに見積もりの相談が発生します。

範囲 中身 決めておくこと
障害対応 動かなくなったときの復旧 連絡先、受付時間、復旧の目標時間
軽微な修正 項目名の変更、帳票の体裁 月あたりの対応件数と、超えた場合の扱い
機能追加 新しい帳票や処理の追加 都度見積もりか、月次の枠内かの区分
データの取り出し 保管しているデータの書き出し 契約を終了する場合の形式と費用

4番目を最初に決めることをおすすめします。契約を続ける前提で設計すると、他社へ移りたくなったときに動けません。データを標準的な形式で取り出せる条件は、発注時に確認してください。

設定で変えられる範囲を仕様に入れる

運用の負担を下げる方法として、変更の頻度が高い項目を設定で変えられるようにします。開発を依頼せずに社内で変えられる範囲を、発注時の仕様に含めます。

対象にしやすいのは次の3つです。

  1. 選択肢の一覧 (取引先名、商品区分、部署名などの追加と削除)
  2. 帳票の並び順と表示する列 (印刷の体裁を除く)
  3. 承認する人の割り当て

つまずきやすいのは1番目です。選択肢を自由に追加できる設計にすると、表記が揺れた同じ項目が増えます。追加できる人を限定する運用を、仕様と一緒に決めてください。

当社が業務システムを納品する場合も、この設定の範囲を先に決めます。設定で変えられる範囲を広くすれば運用の自由度は上がりますが、初期の開発の費用は増えます。どこまでを設定にするかは、社内で変更する頻度から判断してください。判断の材料が足りない場合は、無料診断 (/diagnostic) で現在のExcelの運用をもとに、設定にすべき項目の候補をお伝えしています。

外注の依頼時に渡す資料は何ですか?

棚卸しの4種類の記録、対象と対象外の一覧、運用の体制の方針を渡します。この3点が揃っていると、見積もりの前提が固まり、追加費用の発生する余地が減ります。

逆に、この3点が無い依頼では、外注先は範囲を広く見積もります。範囲が不明なときに小さく見積もる会社は、後から追加費用を請求することになります。

渡す資料の一覧と目的

渡すのは次の3点です。形式は表と文書で構いません。分量は合計で数ページに収まります。

渡す資料 中身 見積もりへの効き方
棚卸しの記録 入力項目、出力帳票、処理の頻度、例外処理 開発する機能の数が確定します
対象と対象外の一覧 移行するもの、外すもの、保管するもの 範囲の解釈の差がなくなります
運用の体制の方針 納品後に誰が運用するか、設定で変える範囲 保守の契約と初期費用の配分が決まります

3番目を渡す会社は少ないです。しかし、この方針があると提案の中身が変わります。社内に担当者がいない前提なら、設定で変えられる範囲を広くする提案になります。

渡す手順は次のとおりです。

  1. 3点の資料をまとめ、社内で内容を確認する (所要2時間)
  2. 判断がついていない項目に印を付け、未定と明記する (所要30分)
  3. 複数社に同じ資料を渡し、同じ条件で見積もりを依頼する (所要1時間)
  4. 見積もりの回答期限と、質問の受付方法を決めて伝える (所要30分)

つまずきやすいのは2番目です。未定の項目を隠して依頼すると、各社が別の前提で見積もります。金額を並べても比較になりません。未定であることを明記したうえで、各社がどう前提を置いたかを回答に含めてもらってください。

見積もりを比較するときに見る項目

金額の総額だけでは比較できません。次の4点を各社の回答から抜き出して並べてください。

  1. 解読と調査の費用が、開発の費用と分かれているか
  2. 未定の項目について、どの前提を置いたか
  3. 設定で変えられる範囲として、何を含めているか
  4. 納品後の保守の範囲と、その月額

1番目が分かれていない見積もりは、調査で判明した内容によって総額が動きます。分けて提示してもらうことで、調査の結果を見てから開発の発注を判断できます。

4番目は初期の金額に含まれないため見落としやすい項目です。初期費用が安く、月額の保守が高い構成もあります。3年分で比較すると順序が変わることがあります。

依頼の前にもう一度確認すること

渡す資料が揃ったら、次の3点を社内で確認してください。いずれも発注後に変えると費用が動きます。

  1. 移行する範囲が、対象外の一覧と矛盾していないか
  2. 運用の担い手が決まっているか、または外注する方針が決まっているか
  3. 判断がついていない項目について、いつまでに誰が決めるかが決まっているか

3番目が実務上いちばん効きます。未定の項目は、開発が進むほど決める時間が短くなります。開発の開始前に、決める期限と決める人を一覧にしておいてください。

属人化したExcelの引き継ぎは、解読の技術よりも記録の作業で決まります。記録は社内で作れます。作った記録をどう要件に落とすかで迷う場合は、当社の問い合わせ (/contact) から現在の記録の内容をお送りください。不足している項目と、外注先に確認すべき点をお伝えします。

よくあるご質問

この記事に関して多い質問と回答をまとめます。

マクロの中身が分からないままでも外注できますか?

できます。必要なのはマクロの理解ではなく、入力と出力の記録です。何を入れると何が出てくるかが分かっていれば、外注先は同じ結果を出す仕組みを設計できます。

ただし、解読の作業自体は発生します。その分の費用と期間を、開発の費用とは別に見積もってもらってください。分けておけば、調査の結果を見てから開発の発注を判断できます。

現行のExcelファイルを渡せば、要件は起こしてもらえますか?

ファイルだけでは足りません。ファイルには今どう動いているかしか入っておらず、なぜそうしているかが入っていないためです。特定の取引先を集計から除いている数式が、方針なのか不具合なのかは判別できません。

必要なのは、判断の理由、例外時の対応、使っていない箇所、誰が何をするかの4種類です。この4つは人の頭か口伝えの運用にしかないため、記録として起こす必要があります。

棚卸しの記録は、どのくらいの期間をかけて作りますか?

運用の理由を説明できる人が社内にいる場合は、数日でまとまります。出力する帳票の数だけ書けば終わるため、作業量に上限があります。

前任者が既に退職している場合は、実際の操作を1か月観察して復元する作業が必要です。年に1回しか動かない処理はこの1か月では拾えないため、拾えなかったことも記録に残してください。

Excelのまま使い続ける選択肢は残りますか?

残ります。判断の基準は、同時に編集する必要があるかどうかです。1人が順番に使う運用で足りているなら、移行の優先度は下がります。

一方、複数人が同時に触る必要がある場合は、Excelでは対応できません。営業事務担当者221人を対象とした調査では、複数人でファイルを共有するときの課題として、読み取り専用になり作業が中断するという回答が33.2%で最多でした (出典: NTTデータビジネスブレインズ「営業事務のExcel属人化に関する調査」2026年、営業事務担当者221人)。

前任者が退職している場合、何を手がかりにしますか?

手がかりは3つあります。実際の操作、出力された過去の帳票、そして受け取る側の記憶です。

まず、現在の担当者の操作を1か月記録します。次に、過去に出力した帳票を並べ、月ごとの数字の動きを確認します。最後に、帳票を受け取る側に、過去に例外があった月を聞きます。返品や値引きのような例外は、受け取る側の記憶に残っていることがあります。

この3つで復元できない箇所は、再現できない箇所として一覧に残してください。分からないことを文書に残しておけば、後で誰かが心当たりを思い出せる可能性が残ります。

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監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

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