障害福祉の経営情報報告は何から始める?
まず自事業所が報告対象かを確認し、直近の決算資料と職員の給与・人数の資料を揃えてから、障害福祉サービス等情報公表システムに登録します。順番を逆にして先にシステムを開くと、手元に数値が無く入力が止まります。
経営情報の報告とは、事業所の収益や費用、職員の人数や給与の状況を、国の情報公表システムへ登録する手続きです。WAM NETの「障害福祉サービス等情報公表システム 主な変更点について 2025年度 2025年8月」によれば、この登録機能が追加され運用が始まったのは2025年8月です。事業者向けの操作説明書も、経営情報の登録手順を含む第1.7版(2025年8月)に更新されています。
対象になる事業者の範囲
報告の対象は、障害者総合支援法第76条の3第1項および児童福祉法第33条の18第1項に規定する対象事業者のうち、基準日より前に指定障害福祉サービス等を提供している事業者です。出典は「令和7年度大阪市障がい福祉サービス等情報公表事務に関する実施要領」です。
注意したいのは、対象の広さです。従来、財務状況等の報告は一部の法人に限られていました。この制度では原則としてすべての指定事業所が対象になります。「うちは小規模だから関係ない」という判断は成り立ちません。
着手前に揃える3種類の資料
御社が最初に用意するのは、次の3種類です。
| 資料 | 具体例 | どこにあるか |
|---|---|---|
| 決算資料 | 貸借対照表、損益計算書にあたる数値 | 会計ソフト、顧問の会計事務所 |
| 職員の資料 | 職種別の職員数、給与の状況 | 給与計算ソフト、賃金台帳 |
| 事業所の基本情報 | 名称、所在地その他 | 指定申請時の控え |
いずれも新たに作る書類ではありません。既にある資料を報告様式の項目に合わせて並べ替える作業です。
報告までの全体の流れ
- 自事業所が対象かを所管自治体の案内で確認する(所要時間の目安: 30分)
- 上の3種類の資料を揃える(つまずきやすい点: 顧問の会計事務所への依頼は日数がかかるため最初に声をかけます)
- 情報公表システムのIDとパスワードで入れるかを確認する(つまずきやすい点: 担当者の交代でログイン情報が不明になっている事例が目立ちます)
- 操作説明書に沿って経営情報を入力し、登録する(所要時間の目安: 半日)
実務で先に片付けたいのは、3のログイン確認です。期限の直前に発覚すると、再発行の手続きだけで数日を要します。報告する項目の中身は次のセクションで詳しく見ていきます。
経営情報として報告する項目は?
報告するのは、事業所の基本情報、職種別の職員数および職員給与の状況、事業所の収益および費用の内容の3系統です。出典は障害福祉サービス等情報公表システムの操作説明書と、栃木県「障害福祉サービス等事業者における経営情報の見える化について」です。
言い換えると、会計情報としては貸借対照表や損益計算書にあたる数値が、運営実態としては職員の給与や従業者数のデータが求められます。決算書と賃金台帳の中身を、指定の項目に沿って書き写す作業だと考えてください。
| 系統 | 報告する内容 | 手元の元資料 |
|---|---|---|
| 基本情報 | 事業所または施設の名称、所在地その他 | 指定申請時の控え |
| 職員の状況 | 職種別の職員数、職員給与の状況 | 賃金台帳、給与計算ソフト |
| 経営の状況 | 事業所または施設の収益および費用の内容 | 決算書、会計ソフト |
基本情報として求められるもの
基本情報は、事業所または施設の名称、所在地その他の情報です。既に情報公表システムへ登録済みの内容と重なる部分があります。
確認したいのは、登録済みの内容が現況と合っているかです。移転や名称変更があったまま更新されていないと、経営情報だけ新しく基本情報が古い状態になります。
職員数と給与の状況
職員については、職種別の職員数と職員給与の状況を報告します。職種別という点が要点です。事業所の合計人数だけでは足りません。
実務でつまずくのは、兼務している職員の扱いです。サービス管理責任者と生活支援員を兼ねる職員をどちらで数えるかは、様式の定義に従って判断します。迷ったら所管自治体に確認するのが確実です。
収益および費用の内容
収益および費用は、事業所または施設の単位で報告します。法人全体の決算数値をそのまま貼れば済むとは限りません。
複数のサービスや事業所を運営している法人では、法人全体の決算書から事業所単位へ分ける作業が必要になります。この按分の考え方は、つまずきやすい点として後のセクションで改めて取り上げます。
なお、報告した経営情報が事業所名とセットで公表されるわけではない点は、御社の懸念に直結するため先に触れておきます。栃木県および厚生労働省「障害福祉サービス等情報公表制度について」によれば、経営情報は情報公表システム上のデータベースを用いてグルーピングした分析結果として公表され、個人や個別事業所が特定される形では公表されないとされています。制度の目的は、国が毎年度データを収集し、実態に即した報酬体系の検討に用いることとされています。
報告期限はいつまで?経過措置はある?
経営情報は毎会計年度終了後3か月以内の報告が必要で、最初の報告となる令和6年度決算情報には令和8年3月31日という経過措置の期限が設けられています。出典は栃木県「障害福祉サービス等事業者における経営情報の見える化について」と、枚方市「障害福祉サービス等情報公表制度における経営情報の報告に関するシステムの運用開始に係る対応等について」です。
つまり、当面の期限と来年以降の期限は別物です。ここを混同したまま来年度を迎えると、報告済みのつもりで未報告になります。
| 対象 | 報告する決算 | 期限 |
|---|---|---|
| 最初の報告(経過措置) | 令和6年度決算情報 | 令和8年3月31日 |
| 令和8年度以降 | 各会計年度の決算情報 | 毎会計年度終了後3か月以内 |
通常年度の期限の数え方
通常年度の期限は、会計年度が終わった日から3か月以内です。3月31日で年度を締める法人であれば、6月末が目安になります。
ここで効いてくるのが決算の確定時期です。決算が固まってから報告項目へ並べ替える時間を見ておかないと、期限の直前に集計と入力が重なります。顧問の会計事務所に依頼する場合は、決算作業の依頼と同時に報告用の数値も頼んでおくと手戻りが減ります。
最初の報告にあたる経過措置の期限
最初の報告は、令和6年度の決算情報を令和8年3月31日までに提出します。通常年度の3か月以内という数え方とは異なる、経過措置としての期限です。
注意したいのは、令和8年度以降の扱いです。枚方市および栃木県の案内によれば、令和8年度以降は毎年度の報告が必要で、未報告の場合は報告期限の翌月から減算の対象になるとされています。期限を過ぎてから報告すれば免れる、という性質のものではありません。
- 自法人の会計年度の終了日を確認する(所要時間の目安: 5分)
- そこから3か月後の日付を、来年以降の期限として社内の年間予定に書き込む(つまずきやすい点: 担当者の手帳ではなく、法人の年間スケジュールに載せます)
- 経過措置の期限である令和8年3月31日を、直近の締切として別に管理する(つまずきやすい点: 通常年度の期限と同じ欄に書くと取り違えます)
減算そのものの中身は、次のセクションで詳しく見ていきます。
情報公表未報告減算とは?
情報公表未報告減算とは、情報公表の対象となるサービス等情報の報告を適切に行っていない場合に、所定単位数から一定割合が減算される仕組みです。兵庫県「障害福祉サービス等情報公表制度」によれば、この減算が新設されたのは2024年4月です。
減算という言葉のとおり、影響は報酬に直接及びます。加算を1つ取り逃すのとは性質が違い、そのサービスの所定単位数そのものが目減りします。
減算が適用される条件
適用されるのは、情報公表対象サービス等情報の報告を適切に行っていない場合です。報告そのものを出していない場合はもちろん、内容が要件を満たしていない場合も含まれます。
経営情報の報告が加わったことで、確認すべき対象が増えた点に注意してください。基本情報や運営情報を毎年更新していても、経営情報が未報告であれば対応済みとは言えません。
減算が始まる時期の考え方
減算が始まる時期は、期限を過ぎたかどうかで決まります。枚方市および栃木県の案内によれば、令和8年度以降の報告については、未報告の場合は報告期限の翌月から減算の対象になるとされています。
ここが実務上の分かれ目です。報告を忘れて数か月が経過すると、その間の報酬が継続して目減りします。期限の直前に慌てるのではなく、決算の確定と同時に報告まで終える段取りにしておくのが安全です。
自事業所に適用される率の確認先
減算率は一律ではありません。提供するサービスの種類に応じて、所定単位数の5%または10%とされています。
ただし、サービス種別ごとの内訳について本記事で確認できたのは解説記事の範囲です。御社に適用される率は、必ず次の一次資料で確認してください。
| 確認先 | 確認する内容 |
|---|---|
| 厚生労働省の告示・通知 | 減算の根拠と、サービス種別ごとの率 |
| 所管自治体の案内 | 自事業所の指定サービスに対する適用の有無と手続き |
| 障害福祉サービス等情報公表システム | 自事業所の報告状況が登録済みになっているか |
実装者の立場から1つ付け加えます。3つ目の「報告状況が登録済みになっているか」の確認は、入力を終えた直後ではなく、後日あらためて画面上で確かめてください。入力画面で保存したつもりでも、最終的な登録の操作が済んでいなければ未報告のままです。この種の取り違えは、業務システムの申請フローで最も起きやすい箇所です。