現場の資料が探せない原因は、どこにありますか?
保存の場所ではなく、探すための情報が一緒に残っていないことが原因です。写真がどの現場のどの工程のものかが記録されていなければ、どこに置いても探せません。
共有フォルダをクラウドに移しただけで解決しない理由が、ここにあります。
置き場所を変えても解決しない
よくある状態を整理します。次のような形になっていないでしょうか。
| よくある状態 | 起きること |
|---|---|
| 現場名のフォルダに日付のフォルダを作る | 工程で探せません |
| ファイル名が端末の連番のまま | 中身を開くまで分かりません |
| 担当者ごとに命名の仕方が違う | 担当者が替わると探せません |
| 写真と書類が別の場所にある | 同じ案件でも2か所を見ます |
いずれも、置き場所の問題ではありません。探すときに使う情報が、ファイルに紐づいていない状態です。
御社が「クラウドに上げたのに探しにくい」と感じている場合、この形になっている可能性があります。
ツールを入れてもExcelが残る
専用ツールを入れても、Excelが残ることが少なくありません。現場TECHの「施工管理DX実態調査」では、施工管理アプリを導入した後もExcel中心の運用を続けている割合は62.5%でした。
出典: 現場TECH「施工管理DX実態調査」(建設業従事者426名、2026年3月実施)
同じ調査では、実務の中心がExcelであると回答した割合が68.5%です。一方、施工管理のデジタル化の必要性を認識している割合は92.5%でした。
必要性は理解されているが、実務は動いていない状態が見えます。
導入そのものも、まだ広がりきっていません。現場TECHの別の調査では、施工管理アプリの導入率は31.9%でした。
出典: 現場TECH「施工管理アプリの導入実態調査2026」
効果が出ていないわけではありません。株式会社フォトラクションの調査では、デジタルツールの導入により業務時間の削減を実感した割合は約70%でした。
出典: 株式会社フォトラクション「建設現場のDXの実態は?取組みと課題を調査」
効果は出る一方で、Excelが残る。この2つが同時に起きているのが現状です。何を仕組みに載せ、何をExcelに残すかを決めないまま導入すると、この状態になります。
次のセクションから、決める順番を整理します。
何から決めればよいですか?
探すときの条件を先に決めます。仕組みの形はその後です。順番を逆にすると、機能は揃っているのに使われない状態になります。
決めるのは技術の話ではありません。現場での探し方を言葉にする作業です。
探し方から逆算する
まず、実際に探す場面を集めます。次のような形で書き出してください。
- 「去年の◯◯現場の、基礎配筋の検査写真を出したい」
- 「この現場の、最新版の施工図が見たい」
- 「先週の安全書類で、元請に提出済みのものを確認したい」
- 「クレームのあった箇所の、施工中の写真を時系列で見たい」
この書き出しから、必要な条件が見えます。1番であれば、現場名、工程、写真の種類の3つです。2番なら、現場名、図面の種類、版の情報になります。
所要時間の目安は、現場責任者2人から3人で集めて1時間ほどです。10件から15件集まれば十分です。
つまずきやすい点は、この作業を情報システムの担当者だけで行うことです。実際に探す人が挙げないと、現場で使われない条件が並びます。
現場で使われている呼び名を集める
条件が決まったら、その言葉を現場の呼び方に合わせます。
同じものを違う呼び方で言っている場合があります。「施工図」と「施工図面」、「安全書類」と「グリーンファイル」のような差です。検索する側が使う言葉で登録されていないと、見つかりません。
対処としては、次のどちらかを選びます。
| 方法 | 向く場面 |
|---|---|
| 呼び名を1つに統一する | 社内の書式が揃っている場合 |
| 別名も検索に当たるようにする | 現場や元請ごとに呼び方が違う場合 |
建設業では後者になることが多い印象です。元請の書式に合わせる場面があるためです。外注先には、別名の登録ができるかを確認してください。
ここまでで、何を条件にして、どの言葉で探すかが決まりました。次に、写真と書類それぞれで決めることを見ていきます。
写真と書類で、決めることは違いますか?
違います。写真は撮影時の情報、書類は版と承認の状態が要点になります。同じ仕組みに載せる場合も、決める項目を分けてください。
混ぜて考えると、どちらにも中途半端な仕様になります。
写真で決めること
写真は、撮影の瞬間に情報が付いていないと後から復元できません。決める項目は次のとおりです。
- 現場と工区。どの単位で分けるかを決めます。つまずきやすい点は、工区の分け方が現場ごとに違うことです。
- 工程または部位。基礎、躯体、内装といった区分か、検査の名称で分けます。前のセクションで集めた探し方に合わせます。
- 撮影の目的。施工中、完成、是正、クレーム対応など、後から探す理由になる区分です。
- 撮影者と撮影日時。端末の情報から自動で取れる範囲を確認します。
- 黒板の情報を文字として持つか。工事写真の黒板に書かれた内容を、検索の対象にするかどうかです。
5番は判断が分かれる項目です。黒板の文字を人が入力すると手間が増えます。画像から自動で読み取る方法もありますが、手書きの精度には限界があります。現実的なのは、読み取り結果を候補として出し、人が確認する形です。
所要時間の目安は、1枚あたり数秒の確認作業です。全件を人が入力する形より現実的です。
書類で決めること
書類は、どれが最新かと、承認が済んでいるかが要点になります。
| 決める項目 | 内容 |
|---|---|
| 版の管理 | 第1版、第2版という履歴を残すか、最新のみ置くか |
| 承認の状態 | 社内承認済み、元請提出済み、承認済みの区分 |
| 書類の種類 | 施工図、安全書類、検査記録、打合せ記録など |
| 保存期間 | 工事完了後に何年残すか |
| 提出先 | 元請、施主、行政のいずれに出したものか |
版の管理は、ファイル名に日付を付ける運用と比べて効果が大きい箇所です。「最新」と書かれたファイルが複数ある状態を避けられます。
書類の様式そのものについては、国土交通省が書類の合理化に関する施策を進めています。直轄工事では、対象になり得る工事のうち約8割でICT施工が実施されています。
公共工事に関わる場合は、発注者の様式と電子納品の要領を確認してください。仕組みの側で出力の形を合わせられるかが、要件のひとつになります。
既存の施工管理ツールとは、どう役割を分けますか?
工程と原価は既存ツールに任せ、資料の保管と検索だけを切り出す形が現実的です。全部を1つにまとめようとすると、移行が止まります。
すでに使っているツールがある場合、入れ替えを前提にしないほうが進みます。
全部を1つにまとめない
1つにまとめたくなる理由は分かります。入力の場所が増えるためです。ただし実態を見ると、まとめきれていない現場が多数あります。
前のセクションで触れたとおり、施工管理アプリを導入した後もExcel中心の運用を続けている割合は62.5%です。
出典: 現場TECH「施工管理DX実態調査」(建設業従事者426名、2026年3月実施)
まとめられない背景には、現場ごとの事情があります。元請が指定するツールを使う場面もあります。自社の仕組みに全部を集めることは、そもそも選べない場合があります。
そこで、役割を次のように分けます。
| 領域 | 担う場所 |
|---|---|
| 工程の管理 | 既存の施工管理ツール |
| 原価と実行予算 | 既存の会計または施工管理ツール |
| 日報と労務 | 既存ツール、または別途 |
| 写真と書類の保管と検索 | 今回作る仕組み |
今回作る範囲を、右下の1行に絞ります。範囲が狭いほど、早く動き始められます。
連携の範囲を決める
分けた以上、どこをつなぐかを決めます。つなぎ方は3段階あります。
- つながない。現場名を人が合わせて入力します。所要時間は1現場あたり数分です。現場数が少なければ、これで足ります。
- 現場のマスタだけ合わせる。既存ツールの現場一覧を取り込み、選択肢として使います。入力の揺れが無くなります。
- 双方向で連携する。既存ツール側の更新も反映します。費用は上がります。
つまずきやすい点は、最初から3番を目指すことです。既存ツールが外部との連携に対応していない場合、実現できません。発注の前に、既存ツールの提供元へ連携の可否を確認してください。所要時間は、問い合わせてから数日です。
当社が関わる場合も、まず1番か2番で始めることをおすすめしています。使われる状態を先に作り、連携は後から足すほうが失敗しにくいためです。
工程管理の側でExcelが残る問題については、当社の別記事で原因と要件の直し方を整理しています。あわせてご覧ください。