技術2026.09.24·9 min read·Nortiq Labs

建設現場の写真・書類共有|外注前に決める要件

現場の資料が探せない原因は、どこにありますか?

保存の場所ではなく、探すための情報が一緒に残っていないことが原因です。写真がどの現場のどの工程のものかが記録されていなければ、どこに置いても探せません。

共有フォルダをクラウドに移しただけで解決しない理由が、ここにあります。

置き場所を変えても解決しない

よくある状態を整理します。次のような形になっていないでしょうか。

よくある状態 起きること
現場名のフォルダに日付のフォルダを作る 工程で探せません
ファイル名が端末の連番のまま 中身を開くまで分かりません
担当者ごとに命名の仕方が違う 担当者が替わると探せません
写真と書類が別の場所にある 同じ案件でも2か所を見ます

いずれも、置き場所の問題ではありません。探すときに使う情報が、ファイルに紐づいていない状態です。

御社が「クラウドに上げたのに探しにくい」と感じている場合、この形になっている可能性があります。

ツールを入れてもExcelが残る

専用ツールを入れても、Excelが残ることが少なくありません。現場TECHの「施工管理DX実態調査」では、施工管理アプリを導入した後もExcel中心の運用を続けている割合は62.5%でした。

出典: 現場TECH「施工管理DX実態調査」(建設業従事者426名、2026年3月実施)

同じ調査では、実務の中心がExcelであると回答した割合が68.5%です。一方、施工管理のデジタル化の必要性を認識している割合は92.5%でした。

必要性は理解されているが、実務は動いていない状態が見えます。

導入そのものも、まだ広がりきっていません。現場TECHの別の調査では、施工管理アプリの導入率は31.9%でした。

出典: 現場TECH「施工管理アプリの導入実態調査2026」

効果が出ていないわけではありません。株式会社フォトラクションの調査では、デジタルツールの導入により業務時間の削減を実感した割合は約70%でした。

出典: 株式会社フォトラクション「建設現場のDXの実態は?取組みと課題を調査」

効果は出る一方で、Excelが残る。この2つが同時に起きているのが現状です。何を仕組みに載せ、何をExcelに残すかを決めないまま導入すると、この状態になります。

次のセクションから、決める順番を整理します。

何から決めればよいですか?

探すときの条件を先に決めます。仕組みの形はその後です。順番を逆にすると、機能は揃っているのに使われない状態になります。

決めるのは技術の話ではありません。現場での探し方を言葉にする作業です。

探し方から逆算する

まず、実際に探す場面を集めます。次のような形で書き出してください。

  1. 「去年の◯◯現場の、基礎配筋の検査写真を出したい」
  2. 「この現場の、最新版の施工図が見たい」
  3. 「先週の安全書類で、元請に提出済みのものを確認したい」
  4. 「クレームのあった箇所の、施工中の写真を時系列で見たい」

この書き出しから、必要な条件が見えます。1番であれば、現場名、工程、写真の種類の3つです。2番なら、現場名、図面の種類、版の情報になります。

所要時間の目安は、現場責任者2人から3人で集めて1時間ほどです。10件から15件集まれば十分です。

つまずきやすい点は、この作業を情報システムの担当者だけで行うことです。実際に探す人が挙げないと、現場で使われない条件が並びます。

現場で使われている呼び名を集める

条件が決まったら、その言葉を現場の呼び方に合わせます。

同じものを違う呼び方で言っている場合があります。「施工図」と「施工図面」、「安全書類」と「グリーンファイル」のような差です。検索する側が使う言葉で登録されていないと、見つかりません。

対処としては、次のどちらかを選びます。

方法 向く場面
呼び名を1つに統一する 社内の書式が揃っている場合
別名も検索に当たるようにする 現場や元請ごとに呼び方が違う場合

建設業では後者になることが多い印象です。元請の書式に合わせる場面があるためです。外注先には、別名の登録ができるかを確認してください。

ここまでで、何を条件にして、どの言葉で探すかが決まりました。次に、写真と書類それぞれで決めることを見ていきます。

写真と書類で、決めることは違いますか?

違います。写真は撮影時の情報、書類は版と承認の状態が要点になります。同じ仕組みに載せる場合も、決める項目を分けてください。

混ぜて考えると、どちらにも中途半端な仕様になります。

写真で決めること

写真は、撮影の瞬間に情報が付いていないと後から復元できません。決める項目は次のとおりです。

  1. 現場と工区。どの単位で分けるかを決めます。つまずきやすい点は、工区の分け方が現場ごとに違うことです。
  2. 工程または部位。基礎、躯体、内装といった区分か、検査の名称で分けます。前のセクションで集めた探し方に合わせます。
  3. 撮影の目的。施工中、完成、是正、クレーム対応など、後から探す理由になる区分です。
  4. 撮影者と撮影日時。端末の情報から自動で取れる範囲を確認します。
  5. 黒板の情報を文字として持つか。工事写真の黒板に書かれた内容を、検索の対象にするかどうかです。

5番は判断が分かれる項目です。黒板の文字を人が入力すると手間が増えます。画像から自動で読み取る方法もありますが、手書きの精度には限界があります。現実的なのは、読み取り結果を候補として出し、人が確認する形です。

所要時間の目安は、1枚あたり数秒の確認作業です。全件を人が入力する形より現実的です。

書類で決めること

書類は、どれが最新かと、承認が済んでいるかが要点になります。

決める項目 内容
版の管理 第1版、第2版という履歴を残すか、最新のみ置くか
承認の状態 社内承認済み、元請提出済み、承認済みの区分
書類の種類 施工図、安全書類、検査記録、打合せ記録など
保存期間 工事完了後に何年残すか
提出先 元請、施主、行政のいずれに出したものか

版の管理は、ファイル名に日付を付ける運用と比べて効果が大きい箇所です。「最新」と書かれたファイルが複数ある状態を避けられます。

書類の様式そのものについては、国土交通省が書類の合理化に関する施策を進めています。直轄工事では、対象になり得る工事のうち約8割でICT施工が実施されています。

出典: 国土交通省「ICT施工の普及が拡大しています」

公共工事に関わる場合は、発注者の様式と電子納品の要領を確認してください。仕組みの側で出力の形を合わせられるかが、要件のひとつになります。

既存の施工管理ツールとは、どう役割を分けますか?

工程と原価は既存ツールに任せ、資料の保管と検索だけを切り出す形が現実的です。全部を1つにまとめようとすると、移行が止まります。

すでに使っているツールがある場合、入れ替えを前提にしないほうが進みます。

全部を1つにまとめない

1つにまとめたくなる理由は分かります。入力の場所が増えるためです。ただし実態を見ると、まとめきれていない現場が多数あります。

前のセクションで触れたとおり、施工管理アプリを導入した後もExcel中心の運用を続けている割合は62.5%です。

出典: 現場TECH「施工管理DX実態調査」(建設業従事者426名、2026年3月実施)

まとめられない背景には、現場ごとの事情があります。元請が指定するツールを使う場面もあります。自社の仕組みに全部を集めることは、そもそも選べない場合があります。

そこで、役割を次のように分けます。

領域 担う場所
工程の管理 既存の施工管理ツール
原価と実行予算 既存の会計または施工管理ツール
日報と労務 既存ツール、または別途
写真と書類の保管と検索 今回作る仕組み

今回作る範囲を、右下の1行に絞ります。範囲が狭いほど、早く動き始められます。

連携の範囲を決める

分けた以上、どこをつなぐかを決めます。つなぎ方は3段階あります。

  1. つながない。現場名を人が合わせて入力します。所要時間は1現場あたり数分です。現場数が少なければ、これで足ります。
  2. 現場のマスタだけ合わせる。既存ツールの現場一覧を取り込み、選択肢として使います。入力の揺れが無くなります。
  3. 双方向で連携する。既存ツール側の更新も反映します。費用は上がります。

つまずきやすい点は、最初から3番を目指すことです。既存ツールが外部との連携に対応していない場合、実現できません。発注の前に、既存ツールの提供元へ連携の可否を確認してください。所要時間は、問い合わせてから数日です。

当社が関わる場合も、まず1番か2番で始めることをおすすめしています。使われる状態を先に作り、連携は後から足すほうが失敗しにくいためです。

工程管理の側でExcelが残る問題については、当社の別記事で原因と要件の直し方を整理しています。あわせてご覧ください。

外注先に伝える要件は、どの粒度で書きますか?

機能の名前ではなく、探す場面と条件を文章で書きます。「検索機能」とだけ書くと、想定と違うものが出てきます。

セクション1で集めた探し方が、そのまま要件の素材になります。

要件の書き方の例

同じ内容でも、書き方で伝わり方が変わります。

伝わりにくい書き方 伝わる書き方
検索機能が欲しい 現場名と工程と撮影目的の3つを指定して、写真を絞り込めること
スマホ対応 現場でスマホから撮影し、その場で現場名と工程を選んで保存できること
権限管理 協力会社には自社が関わる現場の資料だけを見せ、原価に関する書類は見せないこと
書類管理 施工図は版を残し、常に最新版が先頭に出ること

右の列は、動作として確認できる書き方になっています。検収のときに、そのまま確認項目として使えます。

書き出す件数の目安は、探す場面10件から15件に対して、要件20件から30件ほどです。所要時間は、集めた場面があれば2時間ほどでまとまります。

つまずきやすい点は、要件を書きながら画面の形まで決めてしまうことです。画面の形は外注先の提案に任せたほうが、良い案が出ます。御社が決めるのは、何ができればよいかまでです。

非機能要件で決めること

動作以外の条件も伝えます。IPAが公開する非機能要求グレードの6大項目を使うと、漏れが減ります。

大項目は、可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、セキュリティ、システム環境・エコロジーの6つです。

出典: IPA「システム構築の上流工程強化(非機能要求グレード)紹介ページ」

この下に中項目が35、小項目が118あります。メトリクスは238個です。すべてを埋める必要はありません。

建設現場向けでは、次の観点を先に決めます。

  1. 通信環境。電波が弱い現場での動作を決めます。撮影だけ先に済ませ、後から送る形にするかどうかです。
  2. 写真の容量。1現場あたりの枚数と、保存する期間から必要な容量を見積もります。
  3. 端末。会社支給か個人の端末か、機種の範囲を決めます。
  4. 権限。協力会社や元請に見せる範囲を決めます。
  5. 移行。過去の写真と書類をどこまで移すかを決めます。

1番は建設業で特に重要です。トンネル、地下、山間部など、通信が届かない現場があるためです。要件に書かないと、事務所でしか使えない仕組みが出来上がります。

非機能要件の決め方そのものについては、当社の別記事で詳しく整理しています。

運用を定着させるには、何が必要ですか?

入力の手間を、現場が受け入れられる範囲に抑えることが必要です。1枚の写真に5項目の入力を求めると、使われなくなります。

定着するかどうかは、機能の多さではなく手間の少なさで決まります。

入力を増やさない工夫

手間を減らす方法は、主に3つです。

  1. 選ぶだけにする。文字を打たせず、現場名と工程を一覧から選ぶ形にします。所要時間は1枚あたり数秒です。
  2. 前回の入力を引き継ぐ。同じ現場で連続して撮る場面が多いため、直前の選択を初期値にします。
  3. 自動で取れる情報は取る。撮影日時と撮影者は端末の情報から取得します。位置情報を使えるかは、現場の方針に合わせて判断します。

つまずきやすい点は、管理する側が欲しい項目をすべて必須にしてしまうことです。必須は2つか3つに絞り、残りは後から追加できる形にしてください。

手間を抑える理由は、働き方の面にもあります。建設業には2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。原則は月45時間、年360時間です。特別条項付きの36協定を結んだ場合でも、年間の上限は720時間です。

出典: 国土交通省「建設業の時間外労働の上限規制は2024年4月から」

事務作業を増やす仕組みは、この状況と噛み合いません。探す時間を減らすために入れるものが、入力の時間を増やしては本末転倒になります。

定着しているかの確認方法

導入して終わりにせず、使われているかを確認します。次の3つを月次で見てください。

見る数字 定着しているときの状態
登録された写真と書類の件数 現場の稼働に応じて増えています
登録した人の数 特定の1人に偏っていません
検索された回数 登録だけでなく、探す側でも使われています

3番目が最も分かりやすい指標です。検索されていない場合、保存先が変わっただけの状態になっています。

数字が伸びない場合は、機能を足す前に手間を確認してください。必須項目が多すぎないか、選択肢が現場の呼び方と合っているかを見直します。

なお、デジタル化は段階で進みます。中小企業庁の2026年版中小企業白書を見ます。デジタル化の取組段階のうち、段階4はビジネスモデルの変革や競争力強化を指します。段階4と回答した事業者の割合は2.8%でした。2023年は6.9%、2024年は3.2%です。

出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」

いきなり上の段階を目指す必要はありません。資料を探す時間が減るところまでで、十分に効果が出ます。

建設現場の資料共有は、現場ごとの呼び方や元請の様式が絡むため、汎用のサービスがそのまま合うとは限りません。当社では、探す場面の洗い出しから要件の整理、実装まで対応しています。まずは現状の探し方を伺うところから始めますので、無料診断からご相談ください。

よくあるご質問

この記事に関して多い質問と回答をまとめます。

クラウドストレージだけでは足りませんか

現場数が少なく、探す条件が現場名と日付だけで済むなら足ります。ファイル共有のサービスでも、フォルダの構造と命名のルールを決めれば運用できます。

足りなくなるのは、工程や撮影目的といった条件で横断して探したいときです。フォルダの階層は1つの分け方しか表せません。同じ写真を「現場別」と「工程別」の両方から探したい時点で、別の仕組みが要ります。

既存の施工管理ツールを入れ替える必要がありますか

必要ありません。工程と原価は既存ツールに任せ、写真と書類の保管と検索だけを切り出す形をおすすめします。

入れ替えを前提にすると、移行の負担で計画が止まります。連携は、まず現場名のマスタを合わせるところから始めれば十分です。

現場の通信環境が悪い場合でも使えますか

使えるようにできますが、要件に明記が必要です。撮影と入力は端末内で完結させ、電波がある場所で送る形にします。

この動作は後から追加すると作り直しになりやすい箇所です。発注の段階で、通信が届かない現場があることを伝えてください。トンネル、地下、山間部の現場がある場合は特に重要です。

過去の写真や書類も移行できますか

移行できますが、費用と効果を照らして範囲を決めてください。過去の資料は、探すための情報が付いていないことが多いためです。

現実的な進め方は、次の順です。

  1. 運用中の現場から始める。新しく撮るものには最初から情報を付けます。
  2. 完了した現場は、検索の対象になる可能性が高いものだけ移す。
  3. それ以外は、既存の保存先を参照できる状態にとどめる。

全件に情報を付け直す作業は、手作業になるため費用がかさみます。

外注せずに市販のサービスで済ませられますか

済ませられる場合があります。現場の呼び方が標準的で、元請ごとの様式の違いが少なければ、市販の建設業向けサービスで足ります。

外注を検討する目安は、現場や元請ごとに呼び方や様式が分かれていて、市販のサービスの項目に当てはめられない場合です。まず市販のサービスを試し、合わない点を洗い出してから判断する進め方もあります。

協力会社にも見せる場合、何に注意しますか

見せる範囲を現場単位で区切ってください。協力会社には、自社が関わる現場の資料だけが見える状態にします。

原価や実行予算に関する書類は、別の区分にして見せない設定が必要です。権限の設計は後から直しにくいため、発注時の要件に含めてください。

関連リンク

監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

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