技術2026.10.08·9 min read·Nortiq Labs

AIカメラの映像データ保存先、確認の手順

最初に確かめるのは「誰がそのデータを触れるか」です

保存先が国内か国外かを先に調べるのではなく、そのサービスを提供する事業者が映像データを取り扱う立場にあるのかどうかを確かめます。判断の分かれ目はサーバの場所ではありません。個人情報保護委員会のQ&Aでは、クラウドサービス提供事業者が当該個人データを取り扱わないこととなっている場合には、利用する側は個人データを提供したことにならないため本人の同意を得る必要はないとされています (個人情報保護委員会 Q&A)。

触れる人を3つに分けて書き出す

導入を検討している製品について、映像データに触れる人を次の3つに分けて書き出します。

区分 具体
自社の中 画面を見る人、録画を取り出す人、設定を変える人
サービスの提供側 保守や障害対応で中を見る可能性のある担当者
それ以外 分析を委託している別の事業者、機器のメーカ

この表を埋めようとすると、ほとんどの場合2行目が空欄になります。製品の説明には「クラウドに保存されます」とだけ書かれていて、誰が触れるのかは書かれていないためです。空欄のまま進めないことが、この記事の出発点です。

サーバの場所だけでは決まらない

よくある誤解は、国内のデータセンタであれば確認は終わるという理解です。委員会のQ&Aでは、外国の事業者が実際にデータを取り扱っている場合は、サーバが国内にあっても外国にある第三者への提供に該当するとされています (同上)。場所と、取り扱う主体は別の質問として分けて確かめます。

確認の結果を1枚にまとめる

確認は、製品ごとに1枚の表にまとめます。項目は、保存先、保存期間、取り扱う主体、アクセス経路、削除の方法の5つです。この5項目は後の章で外注先への要件としてそのまま使うため、最初からその形で書きます。

つまずきやすい点は、営業担当者の口頭の回答だけで埋めてしまうことです。公開文書に書かれているのか、質問して回答を得たのか、まだ確認できていないのかを区別して記録します。所要時間の目安は、1製品あたりの文書確認と表の作成で半日です。

なお、防犯や安全確保の目的で顔を識別する機能を使う場合は、個人情報保護委員会が2023年3月29日に公表した「犯罪予防や安全確保のための顔識別機能付きカメラシステムの利用について」が参照先になります。内容は3つの区分に分かれており、後の章で触れます。

製品の公開情報から保存先を調べる手順

製品サイトの機能説明ではなく、利用規約、プライバシーポリシー、セキュリティに関する技術文書の3点を順に読むと、保存先の記述に行き当たります。機能の紹介ページには保存先が書かれていないことが多く、探す場所を間違えると「書かれていない」という結論になりがちです。

  1. 公開文書を3点そろえる (所要半日) 利用規約、プライバシーポリシー、セキュリティやアーキテクチャに関する技術文書を集めます。日本語のページに無い場合でも、提供元の本国のサイトには置かれていることがあります。つまずきやすい点は、日本語の紹介ページだけで判断してしまうことです。
  2. 保存先と保存期間の記述を抜き書きする 見つけた記述は、要約せずにそのまま抜き書きします。「地域を選択できる」と書かれている場合は、既定値がどこなのかまで確認します。保存期間についても、既定の保持日数と、変更できる範囲を分けて記録します。
  3. 記述が無い項目を質問票にする 抜き書きで埋まらなかった項目を、そのまま質問票にします。質問は、保守の作業で映像にアクセスする経路があるか、分析を別の事業者に委託しているか、削除を依頼したときに何日で消えるか、のように動作を尋ねる形にします。方針を尋ねると方針の文章が返ってくるだけで、確認になりません。
  4. 回答を確度つきで記録する 当社がAIカメラ製品のデータ所在を調べたときは、確度を3段階 (公式確認、複数一致、未検証) のラベルで記録しました (当社の調査手法)。公式文書に明記されているものだけを公式確認とし、複数の公開情報が一致しているものは複数一致、回答が得られていないものは未検証として分けています。

この分け方の利点は、社内で判断するときに「分かっていないこと」が消えないことです。すべてを1つの表に平らに書くと、営業担当者の口頭の回答と公式文書の記述が同じ重さに見えてしまいます。

実装の側から見ると、見落としやすいのは映像そのものではなく特徴量データの行き先です。映像は拠点内の機器に残し、特徴量だけをクラウドへ送る製品があり、その場合は保存先の質問を映像と特徴量で2回する必要があります。次の章では、保存先が外国になる場合に増える確認を扱います。

保存先が外国になる場合に増える確認

外国の事業者がデータを取り扱う場合は、サーバが国内にあっても外国にある第三者への提供に該当するとされているため、確認する範囲が広がります。逆に、外国にあるサーバへ保存していても、その事業者がデータを取り扱わないのであれば提供には当たらないとされています (個人情報保護委員会 Q&A)。

サーバの場所と取扱いの有無を分けて見る

この2つの質問を分けて並べると、組み合わせは次のようになります。

サーバの場所 事業者が取り扱うか 外国にある第三者への提供か
国内 取り扱わない 該当しない
国内 外国の事業者が取り扱う 該当する
外国 取り扱わない 該当しない
外国 取り扱う 該当する

製品の資料には1列目しか書かれていないことが多く、2列目は質問して確かめる項目になります。前の章の質問票に、保守の作業で映像にアクセスする経路があるかという質問を入れておく理由はここにあります。

外国の制度を把握する作業が残る

提供に当たらない場合でも、利用する側の義務は残ります。個人情報保護委員会のQ&Aでは、外国にある第三者が提供するクラウドサービスを利用してサーバに保存する場合、自ら果たすべき安全管理措置の一環として、当該外国の個人情報の保護に関する制度等を把握したうえで措置を講じる必要があるとされています (特定個人情報に関するQ&A)。この作業は、国名が分かっていなければ始められません。

所在国が特定できない場合の扱い

同じQ&Aでは、サーバの所在国が特定できない場合は、その旨と理由を示す必要があるとされています (同上)。つまり、分からないことを分からないままにして進める選択は用意されていません。

実務上の判断としては、次の順序になります。

  1. 所在国を公開文書で確認する
  2. 書かれていなければ、提供元に照会して回答を文書で得る
  3. 回答が得られない場合は、その旨と理由を記録し、社内の判断に残す

つまずきやすい点は、2番目で「複数のリージョンから選べます」という回答を得て終わりにしてしまうことです。選べることと、自社の契約で実際にどこを使っているかは別です。契約後に設定画面で選択されている地域を確認し、記録に残します。所要時間の目安は、照会と回答の受領で1週間から2週間を見ておきます。

契約書の文言だけでは足りません

個人情報保護委員会は2024年3月25日に注意喚起を公表しており、規約でデータを利用できる余地があり保守用のIDでアクセスでき、アクセス制御も十分でなかった事例では、当該事業者が個人情報取扱事業者に当たると判断されています (個人情報保護委員会「クラウドサービス提供事業者が個人情報保護法上の個人情報取扱事業者に該当する場合の留意点について (注意喚起)」)。契約書に「個人データを取り扱わない」と書いてあることと、実際に触れない状態であることは別だという指摘です。

保守の経路を質問する

確認すべきは、保守や障害対応のときにどの経路で映像にアクセスするのかです。質問は次の形にします。

  • 保守の作業で、お客様の映像データを参照する場面はありますか
  • 参照する場合、どのような権限で、誰の承認を得て行いますか
  • 参照した記録は残りますか。利用者側から確認できますか

「参照しません」という回答が返ってきた場合は、技術的にできないのか、運用上しないのかを分けて確かめます。運用上の約束だけであれば、担当者が変わったときに守られる保証はありません。

アクセス制御の実装を確かめる

上の注意喚起が挙げた事例では、利用規約にデータを利用できる余地があったこと、保守用のIDで個人データにアクセスできたこと、技術的なアクセス制御も十分でなかったことが重なっていました (同上)。発注側として確かめるのは、この3点に対応する次の項目です。

確かめる対象 具体的な質問
規約の文言 二次利用や学習への利用を認める条項があるか
保守の権限 保守用のIDが利用者のデータに到達できるか
技術的な制御 権限の分離と操作ログの保存がどう実装されているか

つまずきやすい点は、1行目です。映像を機械学習の改善に使う旨が規約に書かれている製品があり、その場合は「取り扱わない」前提が崩れます。規約の該当箇所を抜き書きして保存しておきます。

確認した内容を記録に残す

回答は、口頭ではなくメールや書面で受け取ります。担当者の交代や契約の更新のときに、同じ内容を確かめ直す手間を省けます。委託先の監督をどう契約条項に書くかは別の記事で扱います。所要時間の目安は、質問の送付から書面の回答の受領までで2週間です。

保存しない設計でも手続は必要です

商用目的で特定の個人を識別可能な状態でカメラ画像を取得する場合、分析後に画像や特徴量データを速やかに破棄しても個人情報の取得に当たると整理されています (JIPDECが紹介する「カメラ画像利活用ガイドブック」)。保存しない作りにすれば確認が省けるという理解は、出発点から違っています。

取得の時点で手続が発生する

このガイドブックの整理に従うと、判断の基準は保存したかどうかではなく、識別可能な状態で取得したかどうかになります。来店者の人数を数えるだけの用途であっても、顔が識別できる映像を一度取り込んでいるなら、取得の時点で個人情報を扱っていることになります。

したがって、確認の順序は次のようになります。

  1. 何を識別可能な状態で取得するのかを書き出す (映像、静止画、特徴量)
  2. 取得の目的を社内で文章にする
  3. 破棄の仕組みがある場合も、取得の手続は別に用意する

つまずきやすい点は3番目です。製品の説明に「画像は保存されません」と書かれていると、そこで確認を終えてしまいがちです。保存の有無と取得の手続は別の論点として分けて扱います。

防犯目的の場合に参照する文書

目的が防犯や安全確保で、顔を識別する機能を使う場合は、別の文書が参照先になります。個人情報保護委員会は2023年3月29日に「犯罪予防や安全確保のための顔識別機能付きカメラシステムの利用について」を公表しており、内容は3つの区分に分かれています (個人情報保護委員会 カメラ画像の取扱いに関するFAQ)。

区分 扱う内容
1つ目 肖像権とプライバシーに関する留意点
2つ目 個人情報保護法上の留意点
3つ目 事業者の自主的な取組として考えられる事項

商用の利活用と防犯の利用は参照する文書が分かれるため、自社の用途がどちらなのかを先に決めます。両方の用途で1台のカメラを使う計画であれば、両方の文書を見る必要が出てきます。

掲示や通知の扱い

取得の手続のうち、現場で用意するのは掲示や案内です。何のために撮影しているのかを、来店者や従業員が読める形で示します。文面の作成と設置場所の決定は、工事の日程とは別に進める作業になるため、導入の計画に入れておきます。所要時間の目安は、目的の文章化と掲示の文面の作成で2日です。

外注先に伝える要件の書き方

保存先、保存期間、取り扱う主体、アクセス経路、削除の方法の5点を要件として書き、提案書に同じ粒度で回答してもらいます。ここまでの章で確かめた内容を、相手が答えられる形に並べ替える作業です。

要件に書く5点

要件 書く内容
保存先 映像と特徴量のそれぞれについて、保存される国と事業者
保存期間 既定の保持日数と、自社で変更できる範囲
取り扱う主体 データに触れる事業者と、その役割
アクセス経路 保守や障害対応で参照する経路と、記録の残り方
削除の方法 削除の依頼から消えるまでの日数と、確認の方法

書き方の要点は、映像と特徴量を1行にまとめないことです。別の場所に置かれる製品があるため、1行で書くと回答も1つになり、どちらの話か分からなくなります。

つまずきやすい点 (特徴量データの扱いが抜ける)

実務で最も抜けるのは特徴量データです。映像は拠点内の機器に残し、顔や人の特徴を数値にしたデータだけをクラウドへ送る製品では、確認の対象は後者になります。要件には、映像を送らない構成であっても特徴量の保存先を明示するよう書き添えます。

もう1つ抜けやすいのは、解約したときの扱いです。契約が終わった後にデータがいつ消えるのか、消えたことをどう確認できるのかを、削除の方法の行に含めておきます。

見積もりを比較できる形にする

複数社から提案を受ける場合は、上の5項目の表をそのまま渡し、同じ表の形で回答してもらいます。自由記述で回答を求めると、社ごとに書く粒度が変わり、比較できなくなります。

回答が空欄のままになった項目は、対応できないのか、まだ確認していないのかを尋ねます。第2章で使った確度の3段階 (公式確認、複数一致、未検証) を、提案の評価にもそのまま使えます。未検証の項目が多い提案は、導入後に自社が確認し直す作業を抱えることになるため、その手間も比較の材料に入れます。

所要時間の目安は、要件の表の作成と各社への送付で1日、回答の受領と整理で1週間です。

導入前に確認する項目の一覧

公開文書で確認できた項目、質問して回答を得た項目、確認できていない項目の3つに分けて一覧にしておけば、社内の判断とその後の見直しができます。確認が終わっていることと、確認できないと分かったことは、どちらも結論として扱えます。

確度を3段階で記録する

当社がAIカメラ製品のデータ所在を調べたときは、確度を3段階 (公式確認、複数一致、未検証) のラベルで記録しました (当社の調査手法)。この分け方を導入前の一覧にもそのまま使います。

項目 確度 根拠
映像の保存先 公式確認 技術文書の該当箇所
特徴量の保存先 複数一致 製品資料と担当者の回答
保守時のアクセス経路 未検証 照会中
削除までの日数 公式確認 利用規約の該当条項
解約後の扱い 未検証 回答待ち

根拠の列に文書名と該当箇所を書いておくと、契約の更新や担当者の交代のときに同じ作業を繰り返さずに済みます。

確認できない場合の判断

未検証の項目が残ったまま導入するかどうかは、用途によって分かれます。判断の材料は、何を識別可能な状態で取得するのか、その映像が誰の手に渡る可能性があるのかの2点です。来店者の顔が写る用途で、保守時のアクセス経路が未検証のまま進めるのであれば、その状態を社内で記録に残したうえで決めます。

つまずきやすい点は、未検証の項目を一覧から消してしまうことです。空欄のまま残しておくと「まだ分かっていない」と読めますが、行ごと削ると確認が終わったように見えてしまいます。

運用開始後に見直す項目

導入した後も、見直しが必要な項目があります。

  • 利用規約の改定 (二次利用や学習への利用に関する条項の変更)
  • 保存される地域の変更 (提供側の構成変更によるもの)
  • 保守を担う事業者の変更

これらは提供側の都合で変わるため、契約の更新のタイミングで一覧を開き、根拠の列に書いた文書をもう一度確認します。年に1回、更新の前に見る運用にしておけば、気づかないまま前提が変わることを避けられます。

よくあるご質問

この記事に関して多い質問と回答をまとめます。

サーバが国内にあれば外国への提供にはなりませんか

場所だけでは決まりません。個人情報保護委員会のQ&Aでは、外国の事業者が実際にデータを取り扱っている場合は、サーバが国内にあっても外国にある第三者への提供に該当するとされています。サーバの場所と、データを取り扱う主体が誰かという2つの質問に分けて確かめます。

顔を記録しない設定にすれば個人情報の扱いにはなりませんか

記録しない設定であっても、識別可能な状態で取得している場合は扱いが発生します。JIPDECが紹介するカメラ画像利活用ガイドブックでは、商用目的で顔などにより特定の個人を識別可能な状態でカメラ画像を取得する場合、分析後に撮影画像や特徴量データを速やかに破棄しても個人情報の取得に当たると整理されています。

製品サイトに保存先が書かれていない場合はどうすればよいですか

機能の紹介ページではなく、利用規約、プライバシーポリシー、セキュリティに関する技術文書の3点を確認します。それでも書かれていない場合は、提供元に照会して書面で回答を得ます。回答が得られない場合は、その旨と理由を記録に残したうえで導入の判断をします。個人情報保護委員会のQ&Aでも、サーバの所在国が特定できない場合はその旨と理由を示す必要があるとされています。

防犯目的のカメラでも同じ確認が必要ですか

参照する文書が変わります。防犯や安全確保の目的で顔を識別する機能を使う場合は、個人情報保護委員会が2023年3月29日に公表した「犯罪予防や安全確保のための顔識別機能付きカメラシステムの利用について」が参照先になります。この文書は3つの区分に分かれており、肖像権とプライバシー、個人情報保護法上の留意点、自主的な取組として考えられる事項を扱っています。

特徴量データだけを残す場合はどう扱われますか

確認の対象になります。映像を拠点内に残し、特徴量だけをクラウドへ送る構成では、保存先の質問は特徴量について行う必要があります。要件には、映像と特徴量を別の行に分けて書き、それぞれの保存先と保存期間を明示するよう依頼します。

自社で確認を進める人手がない場合はどうすればよいですか

公開文書の確認と質問票の作成までは、法令の知識がなくても進められます。当社では、この確認の進め方の整理と、提案を比較できる形に整えるところから伴走する形でご相談をお受けしています。

関連リンク

監修: 株式会社ノーティックラボ 代表(AIエンジニア)
本記事はAIを活用して制作しています

こうした観点をベースに、
貴社の DX を一緒に考えませんか。

ホームページ無料診断

営業日 24時間以内に担当者よりご返信します。

初回相談無料 · 営業日24h以内にご返信